鍋にしようと思って丸のスケトウダラを購入した。
ぱんぱんに膨れたおなかから出てきたのはタラコ、肝臓、そして大量の
アニーちゃん
もっとも有名な寄生虫のひとつアニサキスは、カイチュウの一種でイルカなどの海獣類を終宿主とする。
宿主ではない人間の体内にはいると、だいたいは死んでしまうが、ときどき胃壁などに潜り込もうとして激痛を引き起こす。
サバのアニサキス症が有名だが、タラやサワラの肝臓にもまず間違いなく寄生している。
きれいな渦巻き状にとぐろを巻いて内臓の表面に貼り付いているが、引き剥がすとミミズのごとくのたうち回る。
大きさは伸びた状態で3cmほどと、寄生虫としてはなかなかの大きさだ。
●驚愕のアニサキス対策
アニサキス症は今やかなりの知名度があり、特にサバの生食の広がりに合わせて被害を広げているようだ。人によっては別の臓器にまで移行して重傷化するほか、アニサキスそのものがアレルゲンと化し、加熱したとしても青魚が食べられなくなることもある。
この恐ろしいアニサキス症にならないために気をつけるべきこととして、一番効果があるのはもちろん魚の生食をしないことだが、それはあまりにも寂しい。
一度冷凍することで殺すことができるが、-20℃以下で24時間以上の冷凍が必要とのこと。家庭用の冷凍庫の性能ではやや心許ない。
ここで参考になるのが我らが美味しんぼの「鮭対決」の話。
究極のメニュー側が提供したサケの刺身に対して、雄山がアニサキスの危険を説いたのだが、その際に料理人の示した駆虫メソッドがある。
1つ目は、刺身を作るときに薄造りにし、筋肉内にいるアニサキスを目視で発見するというもの。
先述の通りアニサキスはかなりの大きさがあり、分厚く切らない限りはまず露出するとは思われる。
見つけ次第つまんで引き抜いてしまえば、食べてしまう可能性は低い。
作中では顕微鏡を用いていたが、卵が体内で孵化するわけではないしそこまでの必要はないかも。
アイヌの伝統料理「鮭のルイベ」などはこのメソッドを利用したものだ。(凍らせた身を薄く切ることに意義があるので、居酒屋で時々出てくる分厚く切ったルイベは駆虫的な観点では意味がない)
そして2つ目(これは美味しんぼには書いてなかったかも)はなんと「よく噛んで食べる」というもの。
アニサキスは物理攻撃に弱く、体表に傷がつくとすぐに死んでしまうため、よく噛むことで口中で死滅させられるというのだ。
なんだその原始的なメソッドは。
ぜひ試してみなくてはならない。
●歯VS輪ゴム
捌いてしばらくすると、アニサキスは内臓から移動を始める。
タラコの上でのた打ち回るアニーを1匹捕獲してみた。
手の熱で苦しがり、より激しくのた打ち回る。(と言ってもナメクジ程度の速度だが)
生きたまま体内に入られてしまうと最悪なので、伸びた状態のアニサキスの片方をピンセットでつまみ、もう片方を口に入れて歯を立ててみると…
しわい!(岡山の方でよく使う言葉・固くて噛み切れない様子のこと)
春雨程度のものを想像していたが、実際は輪ゴム、いや軟質プラスチックほどの固さがある。
口から取り出してみても相変わらずのた打ち回る。
とてもじゃないが、刺身中にいるアニサキスを噛んで殺すなんてことはできそうにない。
こりゃあ無理だわね…
仕方がないので包丁でスパンと切って置いておくと、じきに動かなくなった。
●そもそも味はどうなのよ
さて、殺虫作戦は失敗したが、仮に加熱したとして、アニサキスそのものを食べてしまっても大丈夫なのか、という疑問は残る。(味とか、違和感とかの意味で)
というわけで、今度は加熱殺虫した状態のアニサキスだけを食べてみることにした。
沸騰したお湯で1分ほど茹でた後、念のため半分に切ったものを実食。
…
噛み切れねぇや。
加熱後のアニサキスは輪ゴム度がますます増していた。食感的にはちょっとカタい小骨くらいだが、冷静に味わっていると気付いてしまうかもしれない。
まあキノコムシなんかと一緒で、タダのタンパク質だと心頭滅却できれば何の問題もないのだが。
(もちろん、過去に一度でもアニサキス症になった人は試さないで下さい!)
●後記
上記のような対策を提示した究極のメニュー側に対して、雄山はこう叱咤する。
「物を食べることの本質は、体を養い気を養うことだ。美味のために食べ物で冒険することは、ものを食べることの本義に反する。」 (美味しんぼ30巻「鮭勝負!!」より引用)
危険な目にあってまでサケやタラの刺身を食べる必要はないし、ましてや他人に食べさせるというのはもってのほかだということだ。全く耳が痛いぜ…
「よく噛んで喰え!」なんて適当なことをいう調理人、もし美食倶楽部なら洗い以上の速さで速効クビになっただろう。
今後も節度を守ってへんなものを食べていきたいと思います。
告知
pixivFANBOXというのをやっております。
要は有料ファンクラブみたいなやつです。各種プランにご登録いただくと、限定公開の記事が読めたりします。
こちらでの収益をもとにブログやYouTube動画のネタの取材を行っております。もし、茸本朗の活動にご賛同いただけるなら、こちらご登録いただけると非常に非常に助かります。
コロナ禍が明けた暁には野食会・その他イベントの優先参加権なども特典として追加しようと思っております。
コメント
アニサキス実食…凄いですね。
アニサキスのアレルギー持ちがいて、
そんな人は当然やらないでしょうけど
アニサキス抗体での反応もあるらしく
アニサキスの処置をしても、居た魚を食べるだけで駄目とか。
ピーナッツといい、アレルギーは怖いですね。
コメントありがとうございます!
寄生虫は菌と違って目に見えるので、死んだことを確認できればそれほど怖くはないです。
でもアレルギーを試すようなことはホントはよくないんですが…この記事は「美味しんぼメソッド」が正しいかどうかの実験記事で、正しくなかったんでみんなマネしないで下さいね!というのが僕の伝えたかったことです!w
ほんの4時間程前に、イカの白子を煮た物を食べた時、いつもと違う食感が…そう!輪ゴム硬くしたような噛み切れない物が…口からちょっと出してみたら透明とは言い切れないけど、限りなく透明に近い虫様な物が…
アニーだとは思ったけど騒ぎを大きくしたくなかったので口の中の物は嚥下しましたが、内心…えっ?大丈夫なの?死んでるからいんじゃね?イヤイヤ…動いてなかったけどマジで死んでる?と頭の中をグルグル…検索してここに辿り着きました。
まさしく写真と同じ物、食感の感想も同じ…一応他の白子も確認して、いない事が分かったので一安心…アレルギーが出ないといいなぁ…と思いつつ旦那さんにバレないように処理してしまわなければ…
…これだけ時間が経ってればとりあえず大丈夫ですよね?(^_^;)
コメントありがとうございます!
もう大丈夫でしょうね。。アニサキスアレルギーは一度アニサキス症を発生した人がなることが多いようです。
サワラ、サバ、タラ、イカを食べる人なら何度かは摂取したことがあると思います。基本的には加熱されていれば何の問題もないものですよ。
でも、実際食べ物からにゅっと出てくるとぎょっとするんだよなぁ…
はじめまして。
昔父がアニサキスアレルギーになってしまい、それ以来気になり調べていたらこの記事にたどり着きました。
実食…凄いですね
でもゴムみたいな食感とは知らなかったので驚きました!
アナフィラキシーショックになってしまったら怖いので鯖などはこれから気をつけて食べていきたいです。
アレルギーは何でも怖いですよね
コメントありがとうございます。
アニサキスは火を通せば基本的には大丈夫なんで、あまり怖がらなくてもいいと思いますよ!
大きい声では言えないですけど、アジやイカにもかなりの確率で棲んでますし、旅館の刺身定食でコンニチハしたこともありますし…
気にしすぎて青魚食べられなくなる方が、大きな損失だと個人的には思っています。
コメントありがとうございます!
他の寄生虫たちと比べてやはり硬い気がするので、ひょっとするとそうなのかもしれませんね。
タラたちもこんなのに内臓を這われるのは嫌だろうなぁ…
面白いですね。イカの刺身もアニサキス対策はイカそうめんにしたり、身に切れ込みを入れることで対策してますし、実際よくかんで食べれば違和感で気付けそうかな?
>>美味のために食べ物で冒険することは、ものを食べることの本義に反する
いくらなんでも負け惜しみが過ぎる美食家の風上にも置けないような言い訳ですね。
アニサキス対策としてはイカの例でもやるものだし、死んでも食べてみたいと思うのが美食家でないんかいと、フグやフグの卵巣すら食べられるのはそういう努力のたまものだろうと言いたいところですね。
噛みながら違和感に気づくかというと…ちょっと自信はないですね。。
生きたまま口に入ってしまったら最後だと考えたほうがいいかもしれません。糸切り歯に自信があるなら別ですけど…
いいセリフですけど、雄山が言うなという気持ちにはなりますw
まあ彼の発言はいろいろと矛盾をはらむものもありますので、あまり深いツッコミは禁止ということで…(笑)
アニサキスはアレルギーになるより胃に噛み付いた時の方が最悪だろな!
俺は過去に4回もアニサキスを胃カメラで除去してるよ!
アニサキスを積極的に食べる人がいるとは衝撃でした!
いやー、面白かったです。実際にチャレンジするなんて!
聞いた話などで記事にしてる報道なんかよりずっとリアリティがあって役に立つ記事だと思います。
自分もアニサキスは怖いと思っていますがまず親しんで食べることからですね…仲良くなれるかも…
噛めば死ぬは嘘だったのか…
面白かったです
生きたまま胃に入っちゃってもほとんどは死んじゃうらしいので、運が悪くなければ大丈夫という話
これが本当なのか教えて
ほしいんですけど(フリ)
すごいブログですねw
正気とは思えません。でも尊敬しますw
アニサキスを検索して、ここに来ました。
よろしくお願いします。
古い記事に質問するのもなんですが、
もし機会があれば、確認して頂きたいことがあります。
アニサキスは傷に弱いという情報がありますが、どの程度弱いのでしょうか?
いろいろ検索したのですが、情報が見つからないのです。
真ん中で半分にすれば死にますかね?
頭側を切れば死ぬような気がしますが、
お尻側をちょこっと切っただけだとどうですかね?
そもそもどっちが頭か分かりますか?
この記事で検証しているように、噛んだ程度では無理そうじゃないですか。
イカなどの松笠切り程度で切れるもんでしょうか?
アニサキスがどの程度の物理攻撃に弱いのか知りたいです。
不躾なコメントで申し訳ありません。
おもしろく拝見させていただきました。
実食は説得力が違いますね。
輪ゴムのように硬いと言うのはこのブログで初めて知りました。
有益な情報ありがとうございました。
え うぇあ偉い 秋刀魚刺身で痛かった 死んだほうがマシと思う一夜であった 医者なんか行くもんか馬鹿野郎
釣って現地で食べるのが大好きだったので、アニサキスの話を聞いてからどうしようかと思ったのですが……
この記事のおかげで、また楽しむことが出来そうですね!ありがとうございます(*´ω`)
他にも気をつけることがあったら、教えてください。
池の水を全部ぬくって番組で、
ミシシッピアカミミガメを実食するというページを見て
こちらのブログにたどり着きました。
チャレンジャーすぎて恐れ入ってます笑
クレイジージャーニーとか出れるのでは!笑
と思ってます。