正月は網代の実家に里帰りし、疲れた心身を養った。
その時に、西伊豆は戸田の名産・タカアシガニを食べに連れていってもらった。
水族館でも人気のタカアシガニは、言わずとしれた世界最大のカニで、両のはさみを広げた大きさは最大4m近くにもなる。
見た目は恐ろしいが動きは鈍重で、わしゃわしゃと絡み合っている様子を見るとキモさの中に愛らしさを感じる。
タカアシガニを食べてみる
タカアシガニ料理の第一人者「の一食堂」では、床下に作ったプールと戸田湾をトンネルで繋ぎ、その中でタカアシガニを飼育している。
深海に棲息する彼らが水深3mのプールで養殖され、繁殖まで成功しているということには驚かざるを得ない。
甲殻類は魚類と比べれば水圧の変化には強いと思うのだが、それでも缶詰すら潰すような高水圧から揚げられてピンピンしているというのは俄には理解しがたいことだ。
今回注文したのは、殻長25cmはありそうな巨大サイズ。
これはさぞかし生育に時間がかかっただろうと思いきや、なんとまだまだ子供であった。
なんでもタカアシガニはまず胴体が成長し、そのあとにハサミが大きくなっていくのだという。
確かに店内に飾ってあった、脚の開長が3mを優に越える化け物ガニも、胴の大きさは今回食べたものとそれほど変わらなかった。
タカアシガニはおいしい
さて、時に水っぽい、大味であるなどの誹りを受けるタカアシガニであるが、専門店で正しく調理された物を食べるとそのようには感じない。
確かに、加熱すると大量の水分が抜けて身が縮んでしまうが、もともとのサイズがハンパないので十二分にボリュームがある。(味を抜くときに残念なエビフライを食べている気分になるが)
余計な水気が抜けた身はとても濃厚でタラバやズワイにも劣らない。
面白いのは小皿に取って添えられるカニミソ。
加熱しても凝固せずドロドロの液状で、割と生臭みが強いのだが、これをカニの身につけて食べると風味が増強されて「タカアシガニ食べてるッ…!」という気分になれる。
臭みが苦手な人にはカニ酢もあるので心配はいらない。
巨大な胴体だが、残念なことに身はそれほど入っていない。
しかし、口の横の通称「ほほ肉」の部分には意外と可食部が隠されており、客が気づかないでいると女将さんが親切にもほじくり出して盛ってくれる。
ぷりぷりとしたエビみたいな食感で美味しい。
大変おいしいカニでボリュームもたっぷりだが、一匹当たりの値段も中々するので、可能なら数人で行って割り勘するのが良いかもしれない。
戸田は深海料理のメッカ
ここ戸田では他にも、タカアシガニ漁の副産物である各種深海生物を食べることができる。
今回はごそ(ハシキンメ)の塩焼き、メヒカリ(アオメエソ)のフライを食べ、冷凍のクモエビ(オオコシオリエビ)をおみやげに購入した。
このほか「深海魚の刺身定食」なんて物を食べられるお店もある。
交通の不便な西伊豆の中でもトップクラスに不便な戸田だか、もし来られた折にはぜひ、変な生き物たちにまみれてみてほしい。
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