先日、小宮さんのお招きで、サイエンスカフェ@柳川で講演させていただき、ついでに打ち上げという名の野食会(的なもの)に出席してまいりました。
本日は柳川で茸本先生(@tetsuto_w)をお呼びしてのサイエンスカフェでした!
身近な自然を食べるというアプローチ、野食という目線からの環境問題等、素晴らしいお話をしてくださいました! pic.twitter.com/YuhB3Jjxip— 小宮 春゚水(有明海) (@ariake538) 2019年1月20日
旅の最中はレンタカーを塀に擦ってピー万円失ったり(柳川の路地なめてた)翌日呼子に行ったら目当てのイカ屋が閉まってたりと災難続きではあったのですが、メインイベントそのものはとてもいい会になったと思っています。ご参加いただきました皆様ありがとうございます。
当初講演の話をいただいたときは「交通費貰えて福岡行けるとか最高かよ、講演はサクッと済ませて有明海で30㎝オーバーのハゼクチ釣っちゃるぞ」くらいの心境だったのですが……
前日になり「明日何話そうかなー」なんて考えつつ資料を作っていると、ここ最近ぼくがもやもやしていたことや、うまく言葉にできなかったことが偶然にも形を成していき、結果としてぼくの活動におけるターニングポイント的なものになってくれました。
そこに至るきっかけとなったのは、会に前後して小宮さんがされていた、高良川における特定外来種・ブラジルチドメグサの駆除活動。
トン単位にも及ぶブラチを引っこ抜きながら、同時に会もコーディネートしてくれている小宮さんに対して「何かご協力できんものだろうか」と思っていたのですが、「講演の中で『ブラチの利用法』をみんなで考えてみてはどうか?」とふと思いついたのです。
そこから派生していった結果、講演のテーマが「野食で考える環境保全」となりました。サイエンスカフェは決して堅苦しい会ではなく、テーマについても「自由に、好き勝手にしゃべっていい」と言われてはいたのですが、結果としてこのようになったのも野食の神様の思し召しというべきでしょう。
ブラチは一般的に食用にされるものではないですが、近縁のアマゾンチドメグサは東南アジア方面で食用にされていることからも、食材としての可能性はあると思います。
まえにせつなさんもレビューしてましたが、彼が採った場所と比べると、我らが高良川の方が水質ははるかに上であり、より純粋にブラチそのものの食味を論じることが可能でしょう。
時々ダダ滑りしながらも講演は和やかに進み、いよいよブラチ試食タイムに突入。
まずはとくに味付けなく、各パーツを食べてみました。
ブラジルチドメグサの地下茎に食の可能性を考える茸本先生(@tetsuto_w) pic.twitter.com/4NAlR1ysZ7
— 小宮 春゚水(有明海) (@ariake538) 2019年1月20日
……(・〰・)
ふーむ、葉っぱはちょっと苦いですね。ツンとした青臭さもある。ペニーワートジュースを思い出します。
ただなんか葉っぱじゃない部分もありますね、これはランナー的な?
小宮さん「地中に走っている茎ですね、これを引き抜くのが本当に厄介なんです」
なるほど、もやしみたいな見た目をしてるのは、地中にある部分だからなのね。
いただきマース
……(`・〰・´)ムムッ
これは……もやし!
いや、もやしというには若干野性味が強いですが、味は悪くない。
太くて歯ごたえもいいし、ここだけ集めてナムルとかにしたら美味いんじゃないでしょうかね。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
その後、打ち上げ野食会で、実際にブラチのナムルを作ってみました。
この時はもう葉の部分しかなく、ナムル程度の軽い調理で食べるにはちと難儀な味でしたが、悪くないという声も散見されました。
各地で爆発的に増殖中という特定外来植物、ブラジルチドメグサを、食材としての活用を探る試み。茹でて塩とごま油で和えたナムルは個人的には十分いけました。クセが気になる方は韓国唐辛子粉かおろしニンニクとすりゴマを加えるのもいいかもです。江津湖で採ってみようかな? #福岡野食会2019 pic.twitter.com/aVNHZkBER6
— Kiyotaka Ogiu (@kiyotakaogiu) 2019年1月20日
いずれにしても「食材としての可能性はある」という結論に対して異議を唱える方はいないと思います。
打ち上げではこのほかの外来種(ブラチの下で冬眠していたウシガエル)や未利用種(有害獣としてのシカ、イノシシ)が振舞われ、みんなでメニューを考えつつ調理、試食しました。
ヤブツルアズキ、シオフキもありましたね。素晴らしいラインナップです。
お芋+ヤブツルアズキの優しいお味のぜんざい、南瓜とのいとこ煮ほっこり。
ウシガエル上等なセセリのさらにツヤツヤうま!
シカのハンバーグは一番すき!筋トレしたなるザ☆肉!ホウボウとシオフキガイのアクアパッツァ パスタぶちこみたい!ナマズほろほろうま!おご馳走様です❤️ pic.twitter.com/GjZVgMjTDO— saE (@hatramhoney10) 2019年1月20日
ちなみに小豆とヤブツルアズキの中間でしたねとの感想が当日ありましたが、渋切りし過ぎて豆の風味を殺したのかも。豆の渋切りをどこで止めるかは毎回の課題です。#福岡野食会2019 pic.twitter.com/LFznx7jjr9
— Kiyotaka Ogiu (@kiyotakaogiu) 2019年1月20日
#ヤブツルアズキ を使った二品!
上の南瓜との“いとこ煮”は甘くないヤブツルアズキを味わえます。
下はヤブツルアズキのぜんざい~お餅の代わりに蒸し芋を使った一品♡
小豆とは一味違うヤブツルアズキ!
どちらも美味しくて、乾物から作るという技術が光りました😍#福岡野食会2019 睦月 pic.twitter.com/Lyv1GZ6A54— ミユキ❁ガーガーマム (@cocotah_gagamam) 2019年1月20日
このようにして「みんなで新たな食材の価値を考えることができた」のはとてもよかったと思っています。
というのが、講演にあたってぼくは「野食ができる環境への貢献」というタイトルを設定したのですが、
ぼくなりの解として以下の3つを提示させていただいており、そことシンクロさせることができたからです。
①外来種を食べる
②未利用種を食べる
③昆虫を食べる
いずれも「現在利用されている野生動植物に対するヒトの採取圧を平準化し、いま現在『一般的である』食材に対しての負のインパクトを減らす」というのが主目的になります。
ホンビノスが流通に乗ることについて昨年末に賛否ありましたが、ぼくは大賛成ですし、ウナギを食べる代わりに今廃棄されている何種類もの深海アナゴを食べるのはいいと思うし、昆虫なんてフロンティアしかなく食材開発においては宝の山なわけです。
そしてぼくは、これらのことが「今後、野食が生きる道」だと思っています。
野食は「野のものを採って食べる活動」という定義上、どうしても自然に対して負のインパクトを与えてしまいがちです。
ここ最近の「野食」の認知度の向上に伴い、採取圧による場荒れ、生育環境の悪化による棲息密度の明らかな低下などを耳にすることが増えました。
ヌタウナギとか、かつてはあんなに釣れてたのに、みんなで寄ってたかってポイント入るもんだからいなくなっちゃった。。
「リテラシーあるはずの皆さんが各自リテラシーのある行動をとっていたはずなのに、結果としていなくなってしまった」というのは個人的にはかなりのショックでした。もちろん自責の念も強くあります。
そしてとくに、トリュフやポルチーニなどの高級食材といえるものは、野食に興味がない人々の耳目を集められる存在である一方、自然保護に対するリテラシーのない層も取り込んでしまうリスクはどうしてもあります。
そもそもわれわれ日本人は、自然のものを採取する時、なぜか性善説が働かなくなってしまうようで、2018年は大変多くの「よからぬ話」を耳にしました。
結果として、いまや野食の界隈からも「野食ブームなんて来ない方がいい」という厳しい声が出るようになりました。
野食を勧めてきた者として、責任を感じています。
ぼくが当ブログやその他のメディアを通じて「野食しようぜ」と呼びかけてきたのは、自分が野食生活に助けられてきたということを伝えたい、そのうえで「楽しさのおすそ分け」をしたい、そういった動機からです。
コウタケやトリュフのような高級食材も、頭を使えば元手をかけず手に入れられる。そういった「狩猟本能を刺激する喜び」を共有したい、そういう思いは間違いではないと今でも思います。
その一方で、昨年より「茸本朗」として正式にフリーランサーとなり、ブログの広告収入と各種執筆活動の原稿料・印税で生活していくなかで、野食に興味がある層を増やしていくことが、ぼくの「お客様」を増やしていくことになるのは否定しません。応援してくださるみなさまのおかげで茸本朗は存在しています。
だからこそ、ぼく自身がよりリテラシーを持たねばならない、サステイナブルでより「自然にやさしい」活動を心がけねばならないという決意を強くしています。
そのためには、上記の解が大事になると思うのです。
ぼく自身は今後もトリュフを採り、アコウダイを釣り、その出会い方をブログ記事にしていきます。
でも「それがいかに高級なものか」を煽るのではなく、それを採るのがなぜ楽しいか、どう調理しどう活用していくか、そちらに興味を持ってもらえるような文章を書いてきたいと思っています。
年明け以降、多くのメディアから「高級野食材○○の採り方・ポイントを教えてくれ」という依頼を受けておりますが、そういうわけで(信頼できる筋を除き)すべてお断りさせていただいています。ごめんなさい。
あと、市場とか直売所とかで「買える」マイナー食材の紹介も引き続きやっていきます。
これまでは「野食じゃない話はおまけ」みたいな線引きを内心持っていましたが、最近はむしろ野に行くより市場に行く方が楽しく思うことすらあったりして、ぼくの中でメインコンテンツのひとつになってきています。
市場にはまだまだ知られていないものがいっぱいあるはず、なんせ魚で言えば総漁獲量の2/3は未利用魚で廃棄されるわけだから。
「自分で採っていない」ことを恥ずかしく感じる必要はない!←自分への呼びかけ
強い気持ちでやっていきましょう。
ちょっとシリアスモードになってしまいましたが、2019年も楽しく野食をやっていくというところに変わりはないです。
ここらで一度、今の自分の見解をあからさまにしておくことで、界隈の人々にかかる迷惑が減らせればいいなという思いがありましてこういう記事を書かせていただきました。
みんなで幸せになろうよ。。( ̄ー ̄)
フェモ野食会のお知らせ
そういうわけで、さっそくみんなで幸せになるべく、虫をみんなで採って食べる会をやろうと思っています。
ターゲットは……杏仁虫ことフェモラータオオモモブトハムシ!
外来種かつマメの害虫という、いろいろな意味でセンシティブな存在であるこやつですが、安全な利用法や今後のしかるべき扱い方(あるいは根絶の是非についてなど)についてみんなで考察していけたらいいなと考えています。
会の詳細と募集については明日公開の記事でお知らせしますが、日時と場所だけ先にお伝えします。
日時:
フェモ採取会 2/22(金)12:00~16:00頃 途中参加・離脱OK(採取前に諸注意だけさせていただきます)
野食会 2/23(土)12:00~17:00頃 途中参加・離脱OK 野食会だけの参加も可 虫以外の食材もいっぱい出ます、というかこちらはただの野食会です。
場所:リバーサイド茶倉
三重県松阪市飯南町粥見1084-1
昨年10月の櫛田川野食会でお借りした会場です。今回も宿泊可能です(先着順、上限あり)
その他、詳細については明日までお待ちいただければと思います。
2019年は「野食をみんなで考える」年にしていければいいなーと思っています。
楽しくやっていきましょう! よろしくお願いします(`・ω・´)
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