北海道にお住まいのKさんという方から「馬の『なんこ鍋』って食べたことありますか?」と連絡いただきました。
なんこ鍋……どっかで聞いたこと……あ、ゴールデンカムイで見たやつ!
馬の腸を使った鍋で、大体のものを美味しいね~ヒンナヒンナ~と食べる登場人物一行が「大丈夫かこの肉……?」みたいなリアクションをとっていたのが印象深く残っています。
食べたことないですねと返信すると「住んでる地域で馬の腸が手に入るので、よかったら送りましょうか?」とのオファーをいただきました。
もちろん即お願いしたのは言うまでもありません。野食ハンマープライスの3/4は読者の皆様のやさしさでできております。
馬の腸、見た目が強い
そして、到着したものがこちら
……パンチの効いた見た目じゃ……
さすが馬、腸もデカいですな。これは大腸ということになるのでしょうか。
分厚く、硬く、そして……臭い。これは相当な獣臭です。上野動物園のオカピ舎の臭いを半分くらいにした感じ。
臭いと聞いてはいましたが、予想通り、いや予想をちょい上回る匂いです。これが本当に美味しくなるのか、見ものです。
なんこ鍋は北海道は空知地域の郷土料理。重労働により栄養失調に陥りがちだった炭鉱の工夫が、栄養を摂取するために馬の腸を食べるようになったことで広まったといわれています。貴重な労働力であった馬を食べるのはご法度という時代、馬=午=南(の方角)、ということで「南向鍋」と名付けられたとのこと。
今でも歌志内市を中心に、食べる文化が残っているそうです。
調べてもあまり詳しいレシピは出てきませんが、とりあえず作ってみることにしましょう。
なんこ鍋を食べてみた
使うのは馬の腸と、ゴボウ、コンニャク、タケノコ。Wikipediaに準拠しています。
具材は各所で違うようですが、まあゴボウは入れたほうがいいでしょう。臭い消しになりますからね。
各素材を刻み、水と酒、味噌でことこと煮込んでいきます。馬腸はかなり強靭そうなのでじっくり煮込みましょう。煮れば煮るほど匂いが穏やかになっていくのを感じます。よかった……
昆布だし、みりんで味を調えます。あんまり煮詰めすぎると「味噌煮」になってしまうので、あくまで鍋のレベルにとどめます。
完成。まずはこのまま食べてみましょう。
いただきまーす
……(`・〰・´)ふーむふむなるほど。これは……悪くない。
食感は豚モツに似ていますが、厚みが段違いなので食べ応えが強いです。ガツとシロを貼り合わせたような質感は非常に好ましいです。
ただ、匂いはまだちょっと人を選ぶかもしれない。
ということで山椒を振ってみました。
……(≧〰≦)うまい
やはり山椒は強し。やや甘めに仕上げた味噌味と最高にマッチしますね。
現地ではカレー粉をかけることもあったそうなので、やってみました。
おおおお! これいい! いいよ!!
甘めのみそ味とカレー粉がめっちゃ合うじゃんね。
馬の腸の臭みも完全にシャットアウトできています。なるほどね、カレー粉、正解!
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
Kさんありがとうございました!
もうひとつ美味しいものをいただいているのでそちらも別ネタとなる予定です。
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コメント
歌志内に行った時になんこご馳走になったのを思い出しました。
鍋以外にもなんこ単体で煮付けたものもあるようです。
クセはあったけど美味しかった気がします。
なんこ出してるお店はもうないみたいですが、ふるさと納税でもらえるようなのでお気に召したらぜひ!
臭いはあるけど、食感はモツの中でもよいものだと思いました。単体で煮ても間違いなく良いおつまみになりますよね。
いつも面白い記事を楽しく拝読しております。
ありがとうございます。
なんこ鍋に対して白石が「この肉……大丈夫なやつだろうな?」との反応を示したのは、家永が人肉を調理していないかを疑ったためではありませんか?
上記の解釈の方が、その後の家永の返答(「馬のものを使ってます」)に合っている気が致します。
これからも茸本様の記事を楽しみにしております。
あ、なるほど確かに……そっちですね。ありがとうございます!
長野県南部、飯田市辺りでは
味噌味で煮た馬モツが普通にスーパーで売られているので
全国的に食べるものと思っていました
おたぐり、というみたいですね!
なんこ鍋の記事を見るたびに毎度思っているのですが、なんこ鍋に入れるタケノコって「筍」ではなく「馬の頸動脈」のことだと思います。
Wikipediaにタケノコを使うと書いてあるために、筍が入っているなんこ鍋なんて食べたことのない人の紹介記事でさえ「家庭によっては筍を入れる場合もある」なんて書き方になっていますし。