先日、イグニさん(@amaze3551)から「ヒシの実採りに行きますが、いかがですか」とお誘いをいただきました。
ヒシは淡水の止水域(池とか沼とか)に群落を作る水生植物で、果実が食用になります。
イグニさんがお住まいになっている茨城県は、霞ケ浦を中心に池沼が多く、ヒシの群落がたくさんあるのだそう。
スケジュールが上手く合わず、その時は採りに行くことができなかったのですが、後日大量に送られてきました。
名前の通り菱形をしていて、強い棘が左右に生えています。この棘は容易に皮膚に突き刺さり、ときに皮膚の中で折れて大惨事になります。
忍者が使った「まきびし」はもともとこのヒシの実を乾燥させて作ったという説がありますがさもありなんです。足袋くらいなら容易に貫通するし、返しまでついてるんだもん。こんなもの踏んだらしばらく歩けないわ。
ヒシの実を採ってみた
更に後日、取材で利根川方面に行く機会があり、たまたま立ち寄った水辺で大群落を発見。
バカ長を履いて立ちこみ、思うさま採取しました。
水面に広げた葉の裏に花柄を伸ばし、果実をつけているので、上空から実を探すのは結構骨が折れます。ヒシの実を食べる水鳥はヒシの葉の裏を嘴でくいくいとやって器用に実を採取しており、それをまねて手のひらを群落の中に差し込んで同じようにくいくいやると簡単に採れました。ただ指先が傷だらけになるのでごついグローブとかつけるのがおすすめです。
そういえば昔、近所の室見川に友人の樋口くんと遊びに行ったとき、いっぱい生えているのを見かけて採取していたら川に転落し、びしょびしょのまま帰宅したことがあります。テンパって逃げ帰った樋口くん、元気にしてるかな。
まあそれはともかくとして、北部九州は地域によっては非常にたくさん棲息しており、さらに食用に栽培もおこなわれてもいます。ヒシの実を採っているとノスタルジックな気分になるのはきっとそのせいでしょう。
ヒシと呼ばれる植物にもいろいろあり、ノーマルのヒシのほかに棘が4本生えてて大きいオニビシ、4本だけど小さいヒメビシ、棘がない栽培品種のトウビシなどがあります。
今回はヒシとオニビシが採れたのですが、どうやらこの2つは水深によって棲み分けしているっぽいです。脛くらいの水深のところに生えているものはほとんどがヒシでしたが、ひざよりも深いところにあるのはおおむねオニビシでした。オニビシのほうが大きくて食べ出がありそうですが、あまりツッコむと水落オープンばりのダイブを見せることになります。
もちろんぼくは落ちました。利根川水系に転落した回数の世界記録が作れそうです(各位、その節はすみませんでした)。
ヒシの実を食べてみた
持ち帰ってきたヒシの実。
果皮は非常に薄く、洗うとすぐに脱落し、殻に包まれた種子が現れます。
この殻が非常に強固で、中身を取り出すのはたいへん困難でした。
包丁やキッチンバサミなどいろいろ使いましたが、最終的に剪定鋏で二辺を切ってこじ開けるのが最も綺麗に可食部を取り出せました。
イグニさんから「生が美味しかった」と伺ったので、さっそく食べてみます。
……(`・〰・´)なるほどー
表現が難しいですが、レンコンと梨の中間みたいな感じですね。シャリシャリしてでんぷん質だけど、ほわっと甘い。食感は種子の生育度合いによって変わり、若い実はシャリ感が強く、熟してくるとでんぷん質が増えるようです。
鮮度が落ちるとエグみが増すので、採った日だけの楽しみといえるかもしれません。
とはいえ淡水の止水域に生息する生物、生で食べまくると各種寄生虫が心配です。というわけで基本的には茹でて食べました。
……(≧〰≦)すき
茹でると栗のような香りがして、ほくほく感と甘みが増します。これはかなり美味い!
ヒシとオニビシで味の違いはほとんどないように感じました。多少オニビシのほうがでんぷん質が強いような気もしますが、100個ずつくらい食べないと分かりませんね。
味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆
ヒシの実を入れて「本当の菱餅」を作ってみた
さて、イグニさんからはもうひとつ面白いことをお伺いしました。曰く「菱餅にはヒシを入れるのが本式だった」と。
調べてみると、ひな祭りで食べるあの菱餅のうち、白いものはもともとヒシの実が練り込まれていた(もしくはヒシの実で作った)のだそうです。ヒシの実の栄養価の高さは古くから知られており、健康長寿を祈ってヒシの実を練り込んだといいます。
実際にやってみました。
殻を剥いて干したヒシの実を
粉に挽き
上新粉を少量まぜて
お湯で練り、
菱形に成型して蒸します。
できた。
きなこをつけて食べましょう。
……(`・〰・´)ソバみたい
蕎麦掻と栃餅を足して2で割ったみたいな味です。適度な野性味と香り、わずかなエグみがかなり好みです。
毎日これ食べてたらかなり健康になりそう、そんな味。
味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆
イグニさんありがとうございました!
コメント
私の地元の佐賀県には菱を使った菱娘という焼酎があります
良くも悪くもクセのない飲みやすい焼酎なので是非一度召し上がってみて下さい
やはりありますか、焼酎……!
今度佐賀方面行くときに探してみたいと思います。