フランス・カンヌに留学をしていたころ、学校近くのシーフードレストランに生カキを食べに行く機会が何度かあった。
当地で知り合った、やはり日本から語学留学をしに来ていた会社経営者の「たかさん」が、自慢げに教えてくれたことには
「日本のカキは、生食用は出荷前に滅菌水でよーく洗うのさ、だから味が落ちちゃってる。ここのカキはそんなことはしない、剥いたらすぐに出す。だから味が濃くておいしいんだ。」
厨房を見てみると、確かにカキ剥き担当のお兄さんが、注文を受けるたびに一つずつ殻を剥いて、そのまま皿に並べてサーブしていた。
ギャルソンに確認すると、やはり「せっかくのエキスを流しちゃうなんてもったいないじゃない?」とのことだった。
流石、コトの前にシャワーを浴びないお国の人は言うことが違う。
でもそうすると…
「たかさん、じゃあここのカキ食ったら腹壊しちゃいませんか?」
「オレはまだ大丈夫、でも一緒に来てたKさんは去年壊してたね。」
うーむ、恐るべきロシアンルーレットカキである。
調べてみると、剥いたカキを洗わないのはプロヴァンス地方では基本的なことのようで、後日行ったマルセイユのシーフード屋さんでも、洗っているようすはうかがえなかった。
フランスで生の二枚貝(未洗浄)を食べた
そしてさらに驚いたことに、そこでシーフード盛り合わせPlateaux de fruit de merを頼むと、カキ以外に大きな二枚貝も生で出てきたのだ。
大きさはハマグリよりも大きく、ちょうどホンビノスガイほどの大きさで、片殻だけになった状態でサーブされてきた。
他のメンバーは全員日和ってしまったので、日本から抗生物質を持参していた僕が勇気を出して食べてみた。(それだってウイルスには効かないんだけど)
…(・~・;´)
うーん、貝の甘みはあって、独特の風味もあって美味しいけど、ちょーっと生臭いんでないかい…?
カキは体内に含む海水ですらグリコーゲンを含んで美味くなる気がするけど、普通の二枚貝は体内の海水はただの海水のような気がするので、そこはリスクを冒さずに洗ってあげてもいいんじゃないかなぁ…
幸いにしてその時は当たらずに済んだのだが、日ごろからこれを食べてるフランス人はなかなか強靭なお腹をしているなぁと思ったのだった。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
二枚貝を敢えて生で食べることについて
マルセイユで食べたそれは、メニュー表を見ると「パルルド グランド(大アサリ)」ということになっていたが、あの殻の形、そして厚さ(貝細工ができそうなほどに分厚かった)を見る限り、ホンビノスにかなり近いものではないかと思われる。
ホンビノスは原産地のアメリカ東海岸ではしばしば生で食べられており、「ボストンに言ったら食べておきたい料理」に名前が挙げられることもあるようだ。
しかし、普通の魚の刺身は生臭いと騒ぐ欧米人が、生臭みの極みの一つである貝の刺身を美味しいと感じるのはちょっと不思議な気がする。
そんでもってイカはダメだっていうんだから、よそ様の好みというのはわからんものである。
日本では、剥いた貝をそのまま食べるということはカキ以外ではほとんどないと思う。
軽く洗って内臓をとり、足か水管だけにして刺身に切るor寿司だねにするのが普通だ。
内臓ごと生で食べるのは抵抗感があるし、多少味が落ちるとしても、水洗いをしないと中ってしまいそうな気がするのだ。
先進国の中でも下水普及率が著しく低いという日本独特の事情も、心理的抵抗感を煽る。
しかし、生の貝の独特の香りや甘さは、個人的には大好きなものだ。
バカガイ(青柳・小柱)、鳥貝、赤貝、北寄貝、ミル貝…どれも寿司屋では必ず注文する。
日本においてはこれらを含め、数種類の二枚貝しか刺身にしない。
しかし、他のものも、刺身にしてみると意外とイケるものがあるかもしれない。
生で美味しい二枚貝を探して
貝刺し食べたし、中毒恐し。
勇気とリスクのバランスを取って、以下のスタンスでいくつか挑戦してみることにした。
①生きているものだけを刺身にする
②生で食べるのは足と貝柱だけにし、内臓は他の料理に使う
③できるだけ沖合で採れたものを使う
④1日1種類までにする
⑤1種類2個までにする
⑥よーく水道水で洗う
貝の中毒は本当に怖いので、ごく少量ずつ味見する体でやっていこうと思う。
コメント
滅菌水でよく洗うから美味くないっていうのは正確には違うよね。
出荷形状が剥き牡蠣なら洗えば洗うほどエキスは出るから、それを指すなら意味はわかる。
かなり昔は加熱用牡蠣だって鮮度よければ洗浄すれば生食できるなんて料理番組でやってるのすら見たことある。今なら論外だけど。
その人はそのへんで知識が止まってるように聞こえるのは気のせいか。
牡蠣については各種貝毒とノロウィルスの2つが問題となって、食性の関係上、同じ場所で採れる二枚貝なら同じ問題を孕む可能性が高い。
養殖牡蠣なんて、表面なんか洗ったって気休めでしかなくて、前者なら中腸腺に問題となるものが残留しているかどうかが問題。
だから生きてる状態で滅菌海水やら濾過海水やらで数日生かされ中腸腺をクリーンにしてから出荷される。
この間、貝は栄養補給を若干カットされるので、僅かにエネルギーを消費してしまってる可能性はあるけど、砂抜きと似たようなもんだと思えばたいしたことはないと思う。
で、後者のノロはウィルスだけに除去しきれない。
ので、発生しない海域のものしかノーリスクでは食べられない。
流入河川が近い場合は養殖ですらアウトの可能性が高いと思うしかないんですよね。
だから、避けるか、できるだけ取り込む量や再取り込みを少なく抑える努力をして「自分の周囲は発症しない」ようにするのが今の限界なんじゃないでしょうか。
野食の場合は完全に自己責任で。
だから今の日本で売ってる鮮度の良い生食用牡蠣を、洗わず食べたってだけで短時間で腹壊す人は、よほど食べる前の管理が悪かったか、殆どプラセボだと思うw
この場合のプラセボは早く体外へ排出してしまおうという反応なので、一時的な腹痛ならば防衛本能としてはアリな反応でしょうけどね。
逆に「洗わないから旨いんだ」もかなりプラセボだと思うので、運悪く腹を壊さなかっただけに潜伏期間を過ぎてノロ発症の原因となるだけで、的確に処理していれば味なんて僅かにしか変わらないと思います。
たかさんはオジサンなので(笑)ちょっと知識が古かったんだと思います。
それか、ワインでいうところの「テロワール」みたいな、物を美味しく食べるための「眉唾話」だったのかもしれません。
実際は内臓から毒素が出てくまで、きれいな海水内で蓄養する、ってことなんですね。
洗ったところであまり意味ないのでは、フランス人の考え方はある意味正しいかもしれない…でも二枚貝の中腸腺の生は流石に怖かったですw 1個だから無事だったのかなと思ってます。
30数年生きてきて、幼少期より数千の地元の生牡蠣を食してきた上で…
え?生牡蠣って普通洗うの??と驚いております…
牡蠣で下した事は無いので、やはり貝類の毒性等はほんの僅かな環境の差による物なのだなぁと感じております。
市街地が近くにない海域のものなら、貝毒が出ていない限り生で洗わず食べても問題ないはずです。よい環境にお住いのようでうらやましいですね!
和歌山ではヒオウギ貝を刺し身でヒモも貝柱も食べちゃいますね
磯臭いですが甘くてジャキジャキして美味しい。
「もとや」さんでたまに買って食べます
ヒオウギガイは見た目がちっちゃなカラフルホタテだから、生で食べたいなって気にさせられますよね。ハマグリ型のものはなかなかその気になれませんが。。