全日本人待望の「栽培できるマツタケ」バカマツタケの可能性について考える

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先日、今季ラストとなるコウタケハントに行ってきたのですが、その最中に友人のマーシーくんが興奮MAXの声でぼくを呼んだので向かったところ、素晴らしいきのこが生えていたのでこちらも興奮してしまいました。

これは……マツタケ!

でも、ご覧の通り松葉が落ちていない(=松林ではない)です。
そう、これはマツタケはマツタケでも、近縁種のバカマツタケ。マツタケのくせに松林ではなく広葉樹林に出るため「馬鹿松茸」と呼ばれてしまっているかわいそうなやつです。早松茸(さまつたけ)とも呼ばれ本家より少し早い時期に出ますが、こんな時期にも見られるのかとちょっとびっくりしました。

ただそれにしても

こんなでけぇやつは初めてみました……何度か本家マツタケじゃないかと思ってマーシーくんに聞きましたが「これはバカマツ」と言われてしまいました。まあ発生地が発生地だし、あとご覧の通り柄が短いのでそうなんでしょう。

バカマツタケは本家よりも松茸香が強く、これだけあると周囲の空気がむせるほどに匂い立ちます。特にかさの縁の匂いがやばかった。足の先端は蒸れた靴下みたいな匂いでした(海外ではマツタケは「軍人の靴下臭がするキノコ」と言われて嫌われています)

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バカマツタケはマツタケの代わりに市場を満足させられるか

このバカマツタケ、実はいまかなり注目を浴びているキノコの一つです。

皆様は、なぜマツタケがこれほどにまで高価なのかご存知でしょうか。実は彼らはシイタケやマイタケなどの庶民的なキノコと違い、栽培をすることができないのです。
マツ類の木と共生関係にあることはわかっているのですが、どのように共生しているのかその仕組みがわからないので、イチから栽培することができず、松林の環境を整えて発生してくれるのを待つことしかできないんですね。

さらにマツタケは「松葉があまり積もっていない松林にしか生えることができない」という特徴があります。エネルギー革命が起きる前は、各家庭が日々の燃料として松の枯れ葉を利用しており、松林は常に落ち葉の少ない状況にありましたが、やがて各家庭で電気を利用できるようになると松葉は利用されなくなり、松林には落ち葉が堆積するばかりになりました。
そしてマツタケはあっという間に数を減らし、しまいには絶滅危惧種に指定されるまでに。今後も国産マツタケは高くなりこそすれ、安価になるということは考えにくいでしょう。

ここで、バカマツタケの出番がやってきます。

上記のバカマツタケが生えているところの画像を見ていただいても分かる通り、彼らは落ち葉が堆積するところによく生えます。どうもマツタケが松の木と共生する「菌根菌」であるのに対し、バカマツタケには落ち葉や有機物を養分とする「腐生菌」の特徴を持つ株があるようなのです。

シイタケ然りマイタケ然り、腐生菌は栽培が可能なものが多いです。そのため見た目がマツタケそっくりでマツタケよりも強い香りを放つバカマツタケを「栽培マツタケ」として開発しようという動きがあるわけです。

順調に行けば来年には市販し始められるそうなので、その前にいい感じにレビューしておけばきっとバズらせることができるでしょう。しっかり褒めておけば案件にも繋がってガッポガッポかもしれません。ウヘヘヘヘ

というわけで調理していきましょう。まずはやっぱりご飯だよね!
ということで、大きいものを手できれいに裂き

炊飯器にドーン!! 味付けは醤油と日本酒のみです。マツタケは結構しっかりとした甘みがあるので、みりんを入れなくても美味しく仕上がるはず。

炊きあがりました! では早速いただきまーす!!

……(*^^*)やっぱり旨い
旨い……けど、正直に言うと「あれ??」という感じです。というか食べる前から、調理しているときから気づいていましたが、バカマツタケの香り、ものすごい揮発する。。

本家のマツタケはまるごとではバカマツタケほどは香りませんが、割いて、炊いて、釜の蓋を開けて……といった作業の都度都度に重厚な香りをどかっと漂わせます。香りが強すぎて、炊飯器の蒸気孔から拡散させてようやくちょうどいい香りに落ち着くような感じ。
一方でバカマツタケは、まるごとの時が一番強く、作業が進むほどに香りが弱くなっていき、ご飯の釜を開けたときには大変マイルドになっていました。国産の本家マツタケを炊き込んだときのあのどこまでも続くような香りを知っているとちょっとがっかりしてしまいます。
まあそれでも市販の松茸ご飯なんかと比べると倍以上強いと思うけどね。炊き込むよりも混ぜごはんスタイルにしたほうが香りが逃げなくていいかもしれない。

また、マツタケの魅力はシャキシャキとした繊維感の強い歯ごたえですが、バカマツタケはそれもちょっと弱いというか、ぷりぷりとしている感じ。マツタケほど肉質がしまっておらず、ずっしりとしていません。これもちょっと残念。

土瓶蒸しにもしてみましたが、こちらも汁の方に溶け出す香りが本家と比べイマイチ。出汁の風味に負けてしまっています。
バカマツタケそのものは香りを保っており、具を食べるときにゴージャス感を味わうのはできるんですが、土瓶蒸しはやっぱり香りが溶け込んだ汁を楽しむものなのでちょっとマイナスです。

なるほどなー、、バカマツタケ、ともかく香りが飛びやすいんですね。個人的にはマツタケを調理する際はちょっとくらい水洗いしても問題ないと思うんですが、バカマツタケは水につけるのはご法度っぽいです。また加熱の際も注意が必要で、水分を用いるときはできるだけ少量で行きたいですね。本家のように周りに香りを移す役目は期待できず、キノコそのものの香りを楽しむような調理法が一番楽しめそうな気がします。網焼きとか

ちょっとガッカリしていたら、連れから「いっそバターソテーとかしてみたら?」と言われたので、そんなバチあたりな……と思いながらもやってみました。

驚くことにこれは正解。やっぱり香りは失われてしまうんですが、その代わりに本体の甘さが際立ちました。マツタケは甘いとよく言われますが、バカマツタケのそれはもっと強いというか、わかりやすいです。バターとの相性は抜群ですね。

 

というわけで結論は「バカマツタケはバカマツタケ」というところです。香りも味も本家と比べると一瞬強いけど長続きしない、でもわかりやすいっちゃわかりやすい。

栽培が成功し市販品が流通するようになった暁には大変喜ばれるでしょうが、通人は「やっぱ本家にはかなわんよ」と言いながら山に入り続けるでしょう。ただ価格はそれなりに下がるだろうね。

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野食ハンマープライス

コメント

  1. 漆川 より:

    大変読み応えもあって、大満足な記事でした。

    長く拝読し続けており、YouTubeも毎回アップを待ち遠しく思っています。

    しかし、やはり文章の魅力は格別です。
    美味しんぼでおやつタイムを過ごし、HUNTER×HUNTERで聡く辛抱強くなった同世代です。
    掲げておられる価値観にも賛同できるものばかり。
    また、ご無理の無い範囲でブログもお待ちしております。

    応援しております!がんばってください!

  2. 草喰ひ猫 より:

    サマツタケの栽培商品化は期待大!
    でも、美味しくても
    エノキタケのように野生モノと似ても似つかぬ姿になったら
    失敗なのかな・・・

    「松きのこ」みたいに怪しい存在になるか
    「マッシュルーム」のように普及するか
    その扱いや評価も早く見てみたいですね。

  3. しょう より:

    香りが揮発するのが残念、で終わらずに松茸のバターソテーという、また新たな境地を試されてるのが非常に茸本さんらしく好きです。
    上の方の書き込みにもありますが、私もYouTubeも大変楽しませていただいていますが、ブログの軽快な語り口調も好きなので、無理なさらない程度に頑張ってください。
    YouTube、ブログ、fanbox全てを更新されるのは大変だとは思いますが。

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