フグより強い毒を持つ!?「アオブダイ」を食べてみた

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先日、最近お気に入りの釣り場である西伊豆某所の港で動画ネタハントをしていたときのこと。
ブッコミハンターで界隈でもトップクラスの釣りキチであるU1さんが、見慣れぬ魚を掛けました。

青い縁取りがきれいですね!
見た感じブダイの仲間っぽいけど、赤みが割と強いから……ヒブダイかな?

U1さん「いえ、これはアオブダイの幼魚ですね。」

え、これアオブダイなんだ!? アオブダイって成魚になると地中海もびっくりの真っ青な色味になるので、幼魚がここまでカラフルなものとはつゆ知りませんでした。

青く無くね?

しかし、そうか、アオブダイか……
ネタとしては最高だけど、でも持って帰って良いものか……どうするか……

……かなり迷いましたが、まだ食べたことのない魚の魅力はすさまじく、ええいままよ! と持ち帰ってきたのでした。

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アオブダイって食べてもいいの?

アオブダイはブダイ科アオブダイ属に含まれる魚。ブダイと似ていますが、体色と歯の形が大きく異なります。ブダイの歯は細かい歯がギュッと集まったような形状なのに対し、アオブダイはまるで嘴のように一体化しています。

ブダイの歯

アオブダイの歯

実はブダイ科全体ではアオブダイ属のほうが大派閥で、沖縄などで賞味されるブダイたちはだいたい歯が融合しています。
体色が青いものも多く、それらがしばしばアオブダイと混合されていることも多いのですが、実はそれはかなり危険な間違い。

というのも、アオブダイそのものはいま「販売すべきではない魚」として厚労省にマークされているからです。
その理由は毒性。アオブダイは時に食中毒の原因となっており、南紀や南九州では死亡例もあるほどなのです。

毒成分については不明な部分も多く、イソギンチャクの一種が生成するテトロドトキシンの数十倍の毒性を持つ「パリトキシン」と似た中毒症状が見られたこともあることから、アオブダイを「パリトキシン様毒魚」という形で規定することもあります。

そんな魚をなんで食べるんだ!? とお思いの方もいるでしょうが、実はアオブダイは昔から各所で食べられてきた魚。今でも当たり前に食用にする地域もあるといいます。
パリトキシン、シガトキシン、テトロドトキシンなどの海洋毒は地域性が強いものが多く、また生物濃縮によって蓄積されていくタイプの毒です。今回釣り上げた静岡県伊豆周辺では過去にアオブダイでの中毒の報告例はなく、また今回の個体も小型であることから、中毒するレベルの毒性を含むリスクは低いと見て、食べられるという判断になったわけです。
自信のないみなさんはマネするのは止めておいたほうがいいとは思います。

アオブダイを食べてみた

というわけで持ち帰ってきたアオブダイを調理していきます。まずは鱗を取って内臓を除去。

カワハギそっくりの大きな肝がどぅるんと出てきました。とても美味しそうですが、パリトキシンは肝臓や消化管に蓄積されやすいそうなので迷わず生ゴミ入れにダンク。

3枚に下ろします。鱗を取ると綺麗な青色は失われてしまいましたが、身はきれいな白身でなかなか美味しそうです。
しかし、匂いを嗅いでみると……

……うーん、臭いな……
どこからか漂う腐敗した海藻臭。磯臭さの中でもしんどみの強いやつです。
この手の香りは加熱すると強くなってしまうことが多く、必然的に生で食べるのが正解となります。醬油とみりん、青唐辛子を混ぜて作った甘辛い醤油に漬け込み

島寿司にしました。
島寿司とは伊豆諸島でよく作られる寿司で、唐辛子醤油でヅケにした切り身を握ります。磯臭い白身魚も、これで美味しく食べられることが多いのですが……いただきまーす

…(`・~・´)うむ、まあ、食えますな
臭みはごまかせて普通に食えるレベルまで持っていけました。
ただ、ブダイで作った島寿司と比べると歯ごたえが弱く、個性を感じません。かといってヅケにせず湯霜にして握ったもの(上の二つ)はやっぱり臭い……うーん中途半端……

ブダイのほうが身質が良い、でもこれは成魚と幼魚の差かも

加熱したらどうなるかも知りたかったので焼いてみました。

こちらは身がほくっとして悪くないのですが、中骨のあたりから何とも言えない磯臭さがぷわぁーんと……
正直、美味しくないです。

もちろん今回のアオブダイは幼魚だったので、成魚となるとまた食味も変わるかもしれませんが、普通に考えたら磯臭さはもっと強くなるはずなので食べるのはしんどそうです。
パリトキシンリスクも上がるし食べたくはないね。

現在も元気でピンピンしているので、読み通りパリトキシン様毒を蓄積してはいない(もしくは発症レベルでは含んでいない)個体だったと思いますが、だからと言って今後機会があったら食べるかというと多分食べないと思います。

海洋生物の毒はまだわかっていないことが多く、年が進むごとに新たな毒が発見されたり、過去に中毒事故が発生していない地域でも中毒例が報告されるようになるのは一般的です。またパリトキシンやシガトキシンは、海洋温暖化によって毒を生成する生物が北上することに伴い、我が国でも一般的な毒になっていく可能性が高いです。

「アオブダイみたいな毒魚を食べるなんて」という言葉は今後、別の魚の名前を伴ってそっくりそのまま我々に返ってくることになるかもしれません。

なおアオブダイは人懐っこく、また口から出した粘液でカプセルを作ってその中で寝るなどいろいろと面白い性質を持つ魚です。食用ではなく観察対象として愛でるほうがよいでしょうね。

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魚介その1(魚系)
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コメント

  1. 通りすがり より:

    こんにちは。
    いつも楽しみに見させてもらっています。
    食品衛生の検査研究に携わっている者ですが、アオブダイやハコフグに含まれる毒成分は未だに明らかになっていません。
    これらの魚を食べた人が稀にパリトキシンに似た症状を示すことから、「パリトキシン様毒」と現在は言われていますが、実際の食中毒の実際にパリトキシンが検出された事例はありません。
    なので生物濃縮等や温暖化等の影響についても、まだ全く分かっていないのが現状です。
    誤解されている場合も多いですが、致死性の食中毒に関わることなので、正確な情報発信が望ましいと思い、コメントさせていただきました。

    • 茸本 朗 より:

      ありがとうございます! 厚労省のページを読んで理解したつもりでしたが不十分なところがあったようです。そもそもパリトキシン自体が検出されたことがなかったというのは全く知りませんでした。ご指摘感謝いたします。内容を大幅に修正させていただきました。

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