絶滅危惧種の美味な二枚貝「ムラサキガイ」が突然大発生したので食べてみた

スポンサーリンク

先日、DMにて気になるタレコミをいただきました。
メールのタイトルは「ムラサキガイ(ムラサキイガイではありません)の件」というもの。なんでも「人工海浜で潮干狩りしてたらムラサキガイがめちゃくちゃ採れて、目当てのハマグリが採れないから困っている」というのです。

ムラサキイガイは知っていますがムラサキガイとは……? と思って調べてみるも、やや大型の二枚貝で近縁種に食用貝がないということしか分からず、他のデータが全然出てきません。

更に調べてみると、福岡県や愛媛県など各県で絶滅危惧種となっており、残された産地でもほとんど見かけなくなっているというスーパーレア貝だということが判明。
本当にそんな貝が人工海浜で採れるのか、何かの間違いではないか? と思いつつ、現地に向かってみたのですが

普通にいた。なんならはみ出てた。

なるほど、これがムラサキガイ……
殻幅10cmほどあってなかなか大きな貝ですね。バカガイを茶色くして横に伸ばしたような感じです。足が大きくて食べ出がありそう
殻は薄く、隙間を開けているようすはマテガイっぽくもあります。その隙間から長い水管をニョロリと伸ばしています。

水管はかなり伸ばせるみたいで、砂上に20cmほど水管を出しているこの個体は、15cmくらいの深さにまで潜っていました。
干潟中にこの水管がビロンビロンはみ出てる状態で、めちゃめちゃ大量に発生しているということがひと目でわかります。

4、5分でこれくらい集まりました。彼らは確かにレッドリストに掲載された絶滅危惧種なのですが、都会にある人工海浜でこれだけいるととてもそんなふうには思えません。

二枚貝はときにこういう大量発生が起こるようで、来年以降またパタっと居なくなってしまうこともしばしばあるそうです。
ただ現在に関してはこれだけいるわけで、数個貰っても良いだろう……ということでいくつか持ち帰ってきました。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
 

ムラサキガイを食べてみた

採取後、近くの魚屋の女将さんにこの貝について知っているかと訪ねてみたところ「昔は『大貝』と呼んで食べていたよ」とのことでした。期待が高まります。

持ち帰るに当たり海水に漬けて持ち帰るか出して持ち帰るか迷い、どちらも試してみましたが、比較的生命力の強い貝のようでいずれも元気に生きていました。ただその一方で砂を吐く様子は見られず、殻の中に大量の砂が溜まっているのが見えます。
これは剥き身にして洗わないとどうにもならんだろうということで、とりあえず酒蒸しにしてみました。

加熱してもほとんど縮むことはなく、とても食べ出がありそうです。

茹で汁に醤油と味醂、酒、砂糖を加えて薄味で煮付け、

寿司にしてみました。やはりでかい二枚貝といえば煮て握りたいものですからね。

いただきまーす

……(`・〜・´)うん、なかなか良いですね。
最大の魅力は柔らかさで、この巨大な足の食感はまるでかまぼこです。ムチっとしているのにサクッと噛み切れ、大変心地よいです。
また味として特筆すべきは甘み。ともすると人工甘味料のような強い甘みがあり、煮付けるときに砂糖を入れる必要はなかったかもなと思わせます。
少し気になる点として、やや特徴的な匂いがありますね。若干ケミカルな、やっぱり人工甘味料のそれのような謎の清涼感。薄味の料理だと気になるかもしれないけど、煮付けたらむしろ好ましい個性になりました。

ムラサキガイ、美味しいです。とくに味もさることながら、この柔らか食感は大変癖になります。
資源量があれば今でもきっと漁業種となっていたんじゃないかと思うのですが、採れないから食文化も消えてしまったんじゃないかなと思います。

我が国は江戸時代以降の新田開発で、二枚貝の生育に向く浅い干潟をどんどん埋め立ててしまいました。そのため多くの二枚貝で資源がピンチになっており、ハマグリやアサリといった馴染み深い種類すら食べられなくなりつつあります。
今後これらの貝がムラサキガイと同じ道を辿らないよう、無闇無意味な埋め立てをやめて環境を保全する方向に意識を変えていく必要があるのではないかと感じます。

今回、かつて滅んでしまったはずの食文化に出会えたのは本当にラッキーでした。野食の神様がくれたご褒美だったのかもしれません。

教えて下さったKさん、本当にありがとうございましたm(_ _)m

スポンサーリンク
 
スポンサーリンク
魚介その2(魚以外)
スポンサーリンク
茸本 朗をフォローする
野食ハンマープライス

コメント

タイトルとURLをコピーしました