名前に「むつ」がつく魚のグループがある。
むつとは「むつっこい」という言葉に由来するのだが、これは現代語では脂っこいという意味だという。
今では、ちょっと深いところに住んでいて、身に脂分が多い魚のことを○○ムツと呼ぶことが多い。
その中で近年、本家ムツをしのぐ知名度と人気を誇るのがアカムツ。
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 アカムツのページより借用
アカムツはムツやクロムツが含まれるスズキ目ムツ科ではなく、同ホタルジャコ科に含まれる魚であるが、脂ののりは本家に勝るほどによく、時にキロ10,000円もの値をつける超高級魚だ。
しかし、そのアカムツと同じホタルジャコ科に「シロムツ」と呼ばれる魚がいることは余り知られていない。
第4のムツ
シロムツは、名前の通りきれいな銀白色に輝く20~25cmほどの魚で、正式和名はワキヤハタという。
ムツでもなければハタ(カサゴ目ハタ科)でもない、命名者を呼び出して理由を聞きたくなるような名前のせいか、知名度はとても低い。
アカムツ釣りの外道として針に掛かるが、余り大きくならないので雑魚として扱われ、漁の網に入ってもこれまではほとんど値はつかなかったようだ。
しかし今ではシロムツ狙いの釣り船も出船しており、釣りの対象として認識されるようになってきている。
やはりそれだけ美味しいということなのだろうか…
いつか試してみたいと思っていたら、先日ついに焼津のサスエ前田魚店で出会うことができた。
ここでも、チョウセンバカマと同じくメバルという名で売られていたが、やはりまだ漁師や仲買の間では評価が低いのだろうか…
全長25cmほど、当種では最大クラスと思われるが、600円ちょっとで売られている。
これがもしアカムツだったら2,500円は下らないだろう。
シロムツを捌く
アカムツと同様、鱗が大きくて硬く、皮と身は柔らかいので力を入れすぎないようにていねいに鱗をとっていく。
頭を落とし、内臓を抜く。
頭が大きく、歩留まりが悪いと言われるアカムツよりも更に可食部が少なそう…
ちょっとでも無駄な身が出ないよう、中骨に沿ってゆっくり、ていねいに3枚下ろしにする。
触った感じ、血合い骨は小さく細く、それほど気にならない。
半身は皮を引いてふつうの刺身に、もう半身は皮をつけたまま焼き霜造りにしてみることに。
皮は柔らかくも意外に丈夫で、きれいに引くことができた。
身は柔らかいが、鮮度が抜群のためかしっかりと張りがある。
そして何より
皮目の脂がすごい!
これは「ムツ」の名に恥じない。
いただきまーす
(゜~゜*)…
うひょー美味い!
脂ノリっノリのとろっとろ!
柔らかい身が舌の上でほどけて、脂の層が熱で溶けると同時に甘味がぱぁっと広がる。
純粋な身の味が楽しめる刺身も、皮目の香ばしさが抜群の焼き霜造りも非常に美味しい。
味:★★★★★
価格:★★★★☆
ブラインドテイスティングしたらアカムツと間違うだろうなこれは…
新たな「ムツ」を探せ!
上記の通り、やや深海で採れる脂っこい魚はすべて「ムツ」と呼ばれる可能性がある。
ということは、ワキヤハタのような「隠れムツ」が、まだどこかの漁村でこっそりと楽しまれているのではないだろうか。
マスメディアにばれて知名度が出てしまう前に探し当てて、こちらもこっそりと楽しみたいものである。
有力な情報をお待ちしております。
コメント
カワムツはパサパサなのに、なぜムツが付くのか疑問に感じること早6年目の大学生活。
Σ(゜Д゜)なんてこった!
でも深海魚じゃないからセーフ…?