マナガツオ、という魚は西日本で知らない人はいないと思うが、東日本だと知名度はがたんと落ちてしまう。
時々切り身で売られることはあるが、普通のスーパーなどに出ることはほとんどない。
美味い魚なのだが鱗がはがれやすいこと、鮮度の落ちが著しいことなど、流通上の障壁が数多くあるのだ。
またその価格の高さも、地域的な流通にとどまる大きな要因かもしれない。
キロ3000円から高いときは5000円ほど、一匹単価が4000円近くなるような魚で味もよく分からんとなればそうそう手が出ない。
それだけマイナス要因が重なっていて、それでもなお西日本で食べられ続けている理由はただひとつ、めちゃめちゃ美味しいからに他ならない。
負け惜しみ?のカツオ
マナガツオを漢字で書くと「真名鰹(真魚鰹)」、真のカツオということになる。(命名由来説のひとつ)
瀬戸内海沿岸では、外洋を回遊するカツオは漁獲されない。
そのため、この地域の人々は「マナガツオこそが真の鰹だ!」と言い張って珍重したのだ、と言うことらしい。
なんともまあ、可愛らしい負け惜しみではないか。
実際のところ、カツオとマナガツオは種的にも見た目的にも縁遠く、意地を張って比べるのにはやや無理があると言わざるを得ない。
味わい的にも全く別物で、それでいてどちらも美味しいのだからお互いを意識する必要などないのだ。
刺身もうまいけどやっぱり焼き物
今回送られてきたマナガツオは全長30cmほどだが、体高があり正方形に近い形をしているので意外なほど目方がある。
ヒラメ、カレイと同じように5枚おろしにするのが良いと翔さんに教わったので、側線に沿って切れ目を入れてから丁寧に切り進めていく。
皮がちぎれやすいので手で引いて、刺身に造った。
いただきマース
(≧~≦)…
マナガツオ独特の香りがあって、甘味と旨味がしっかりしていて美味い。
身の味もすばらしいが、やはりこの香りが身上なのだろう。
何とも例えがたい香りなのだが、これこそがマナガツオだ!という感じで心地よい。
ただ、人によってはちょっと気になるようで、連れは一切れ食べて箸を置いてしまった。
もう半身は翔さんおすすめの照り焼きに。
ウナギの蒲焼きのタレを使うのが翔さん流。
(≧~≦*)
美味ーい!
タレの風味が強いのに、それすら従わせるほどの力強い香り。
単体で食べるのはもったいなさすぎる。
お酒よりもご飯に合うが、マナガツオ半身で定食を作ろうものなら2000円では済まないかもしれない。
「個性」が魚の価値を決める
マナガツオの香りは煮ても焼いても消えず、それが彼らをオンリーワンの存在にしているのだと思う。
食用にされる魚の中には、非常に淡泊でどんな料理にしてもその調味料の味になるようなものも多い。
いつもポワレやムニエルで食べるのであれば別だが、素材の風味を生かす和食ではそれらの魚はうまく立てることができない。
やはり大事なのは「個性」。
ちょっとくらいのクセがあっても、それを楽しむくらいの姿勢でいるのが魚喰いにふさわしい姿勢だと思うのだが、どうだろう?
コメント
マナガツオは入手の機会があれば蒸し物で食べるのが最良ですよ。
中華料理に清蒸というのがありますが、これ以上美味しい魚の蒸し物もそうそうないと思います。
秦は予熱で火を通す程度で、ほっくりした魚体に少しネギ油をかけて、魚醤か醤油をかけて白髪ネギをたっぷり乗せて思う存分食べてみてください。
マナガツオは子供の頃から甘辛く煮たのでよく食べてましたね。
普通の庶民のわが家でしょっちゅう出ていたので、大阪では安い魚だったのでしょう。
子供にとっては「ちっ!魚かよ」と言う感じでありがたみのないおかずでした(笑)
ま、30-40年前の話ですが。
昔は安かったと聞きます。価格が上がったのは刺身で食べられるようになってから、というのもあるでしょうね。