先月の終わり、とある依頼を受けていつもの干潟へアナジャコを採りに行った。
前週あたりから急に涼しくなり、水温が下がっていたので多少の不安はあったのだが…
果たして大変シブチンな釣果に終わってしまった。
そぼふる小雨の中、せつなさんと2人で5時間頑張って13匹。
真夏のハイシーズンと比べると巣穴の入り口が深く、また数自体も非常に少なかった。
さらに困ったことには、殆どの巣穴でアタリがなく、持ち筆をすべて差し込んでもピクリともしない時間が続いた。
最初は寒すぎて活性が低いのだと思ったが、単純に家主がいない可能性の方が大きいようだ。
干潟は泥が深く堆積しているため、表層以外は嫌気的になり還元性に保たれている。
そこにアナジャコが穴を掘ると酸素が通り、穴の壁面が酸化されて固まる。
さらに巣穴の最上部はごく小さい穴で干潟表面に続いているので、なにかのきっかけでその穴がふさがると土中にカプセルのように空間が残ってしまう。
そうなった穴は大変強固に保たれ、家主がいなくなってしまってもしばらくの間形状を保ち続けるのだ。
家主がいる穴かそうでないかは、外からはまず見分けられない。
型が非常に大きいので見栄え的には何とかなったが、シーズン最終戦は大変不本意な結果になった。
また来シーズンに期待したいところだ。
透き通るような美…しさ…?
さて、干潟を掘り返していると、アナジャコの巣穴の10分の1程度のサイズの穴が大量に出てくる。
それを追いかけてさらに深く掘り起こすと、突然びろーんと伸びた水管が現れた。
掘り起こしてみると、中くらいのサイズの二枚貝が出てきた。
やたらと薄い殻から、ミルガイのように不釣り合いに大きい水管をはみ出させたその貝を初めて見たときは「ウミタケか!?」と思ったが、彼らは東京湾には生息していないようだ。
大きさも殻幅5㎝ほどでやや小さすぎる。
この貝の名はソトオリガイ。
ウミタケやミルガイとは違った「ウミタケガイモドキ目」に属しており、近縁種ともいえない。
(ウミタケはオオノガイ目なので非常に紛らわしい)
ソトオリガイとは「衣通貝」と書き、記紀などで「その美しさが衣服を通してあふれるほど」と書かれた「衣通姫(そとおりひめ)」に由来していると考えられている。
指でつまむだけで割れてしまうほど薄く、光が透けるようなこの貝の殻をしてこう名付けたのだろう。
…姫…?
ソトオリガイの刺身は甘くて美味しい
今回はスコップでの採集だったため、ほとんどの個体の殻が割れてしまい、砂出しをすることができなかった。
仕方がないので水管だけを採取し、手で砂を洗い落とすことにした。
再度水洗いして、せつなさんオススメの刺身に。
醤油をつけて…
(・~・)…
うん、水管だわね。
白ミル貝(ナミガイ)とほぼ同じような味わいで、臭みもなく、歯応えがあって甘い。
河口干潟の貝なので本来は刺身で食べるべきではないのだが、ネタでやってみた割には満足の味。
小さいのが残念だけど、たくさん採れるからその気になればそれなりに楽しめそう。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
残りは表皮を剥き、よく水洗いしてオリーブオイルとニンニク、塩コショウでソテーに。
…なんかヒワイ。
まあいいや、いただきマース
(・~・`)…
美味いけどジャリジャリする…
やっぱりおっくうがらずに一つ一つ開いて洗うか、あるいは採取時に注意して活かしたまま持ち帰り、砂抜きを施してあげないといけないかな。
見た目はアレだけど食用価値あり
ソトオリガイは干潟の中でも、泥の粒子が細かく、足が埋もれやすいような辺りに大量に生息している。
見た目がちょっとグロいことや、春先は小さく、夏から秋にかけて大きくなることもあってか、潮干狩りなどで顧みられることはあまりない。
それでもその気になればたくさん採集できるし、手間こそかかるが味もなかなか。
さいきん一部マニアの間で、秋の夜中に行う潮干狩りが流行っているようだが、おそらくこのソトオリガイはまさにベストシーズンになるのではないかと思われる。
興味がある人は近所の河口干潟にGO!
コメント
こんばんはー。
干潟はいいですねぇ。生き物の宝庫ですね。
干潟は近くに無いので羨ましい限りです。。
本当に、恵まれてるなぁと思っています。
都心で一番楽しい遊び場かもしれません。
こうやって河口に降りて土をいじって、生きものつかまえて食べてると、川を汚そうとかごみを捨てようとか、一切そんな気にならないです。
もっと学校教育に取り入れてもいいと思うのになぁ…
いつも楽しく読ませていただいております。
私はスーパーに並ぶような魚介類すらうまく調理できない超不器用なので、ブログ主様の職人技にはいつも感心しております。
魚や貝などの捌き方は、全て自己流なのでしょうか?羨ましいです。
コメントありがとうございます!
いえいえ、僕なんかちっとも上手くないです。
いまだによく手を切っていますし…
ただ、小学生のころから捌いているので場数だけは踏んでるかなぁと思います。
誰にも教わったりはしてないですね。自分が食べたい形に切れれば、あんまり気にしすぎることないと思いますよ(笑)
おっk…って、やだぁ///
最近美味しそうなモノを食べておられるようで、うらやましくも楽しんで読んでいます。
往年の奇食サイト「ざざむし」ファンとしてはちょっと寂しいところもありますがw
私も有明海を身近に育ったので、干潟の回は特に楽しみにしてます。
そういえば長年気になっていることがあるんですが、そちらの干潟にもあるのかな?
透明でぶよぶよした謎の物体。調べたらタマシキゴカイの卵塊だそうですが、
アレって食べても大丈夫なモノなんでしょうか…
ネットで調べても味や食感はおろか、食べても問題ないのかすら情報は得られず;
熱を加えたら溶けて無くなりそうではありますが、食べても問題ないものだとしたら何か良い調理法は無いものですかね?(チラッ
奇食は…恒常的にネタ不足のところがありまして…w
それに同じもの食べてもせつなさんの方が面白く表現できますからね!
はやくざざむし復活しないかな…どうすかね師匠?(チラッ)
まあそれはそれとして、奇食と言えるかはわからないですけど、ゴカイなどの多毛類やヒトデなどの棘皮動物は今後もチャンスがあればどんどん食べていきたいと思っています。
このあたりははずれも少ないですし、わりに旨味があって食べてて楽しいんですよね。
アオイソメはもう勘弁だけど…
タマシキゴカイの卵巣は、春はもうそこらじゅうに転がってます。
でもどう見ても99.9%海水じゃないですかアレ…それこそからっからに干しあげたらイケるかもしれませんけど、あんまり体に良さそうではないですよねぇ…
タマシキゴカイ本体は捕まえるたびに「食えるかな…」と思って見てますけど、水っぽくてあんまり美味しそうではないです。
ゴカイの魅力の半分は歯応えだと思ってますので。。