コウタケはマツタケ、マイタケに次ぐ高価値なキノコとされ、全国の野生キノコの業者が目の色を変えて探す貴重な種だ。
昨年は特に発生量が多く、ずた袋いっぱいもの量をからっからに干し上げて、年中ちまちまと消費し続けてきたのだが、丸一年経ったのにまだ残っている。
コウタケが高価値な要因はその保存性の高さにもある、とむかし出会ったキノコ名人に言われたことがある。
曰わく、他のキノコと比べて堅くてアクの強いコウタケは、虫やカビなどに強く、乾燥保存すると2~3年は保つのだという。
しかも保存すればするほど香りが強く、美味しくなるとも言った。
確かにコウタケはアクが強く、生の状態で調理したものを食べ過ぎると痔になったり口内炎になったりする。(会社の健診で要再検査になった経験アリ)
アクと言うか、毒成分に近いようだ。
しかし虫や小動物たちにもそのアクが効果があるかというと、あまりそのようには感じない。
かつて野外で干していると、翌日ダンゴムシとゴキブリがみっちりとくっついていたことがあり、防虫効果はほとんどないと言っていい気がする。
(ダンゴムシとゴキブリを叩き落としたあと、スタッフが美味しくいただきました)
むしろあの香りのせいで、周囲の虫を呼び寄せてしまうのではないだろうか。
また、ちょっとでも湿気た状態で置いておくとすぐに白いカビが生えてしまう。
高価で貴重なキノコなだけに、カビが生えたときのショックは他のキノコの比ではない。
キノコ名人の言い伝えは、いわゆる「毒キノコの見分け方」と同様、眉唾的に理解しておいた方が良いのかもしれない。
長期保存する場合は干しシイタケなどと同様、カラカラに干しあげてから電子レンジにかけることで殺虫・殺菌を行うのが安全であろう。
1年物のコウタケを食べてみた
今年の秋は昨年同様、8月の下旬辺りから雨が降り続け、気温が下がった。
こういう気候は9月に発生するキノコにとっては最高の条件のようで、今年もそれなりの量がとれるのではないかと期待している。
とはいえ相手はコウタケ、発生状況や場所、時期も気まぐれのうえライバルたちも多く、一筋縄ではいかない相手だ。
退路を断って気合を入れるべく、願掛けも兼ねて去年のものを(プレゼント分を除き)処分してしまうことにした。
一度干してしまえばどんな料理でも楽しめるのがコウタケの良いところだが、その香りと出汁を最も楽しもうとするならやはり混ぜご飯か、汁物がベストかなと思う。
その中で今回は「おでん」に入れてみようと思い立った。
その理由は
1.おつゆや他の具材の色が黒くなっても気にならない
2.醤油ベースなのでマッチする
3.コウタケそのものも丸ごと楽しめる
といったあたりか。
コウタケはトンビマイタケと違って、出汁が出ても本体にしっかり味が残っているうえ、ポリポリとした独特の歯応えの良さがあり、そのあたりを活かしたいなと思ったのである。
調理は簡単。
水でもどしておいたコウタケと、入れたい具材(今回は牛すじ、玉子、さつま揚げ、竹輪、ダイコン、トマト、干しシイタケ)を圧力鍋に入れて、キノコの戻し汁と白だし、みりん、醤油を少し加えて、圧をかけて1時間ほど煮る。
以上。
コウタケラーメンの時と同様、コウタケから出た出汁でおつゆが黒くなった。
いただきマース
(゜~゜*)
ほら来た美味い!
出汁の濃厚さでいえば、コウタケのそれはあらゆるキノコを凌ぐんじゃないかしら…と思うくらいに味が濃い。
香りも豊潤な醤油香や、醤油の醸造所のような心地よい発酵香が出ていかにも「コウタケ入り」というカンジがする。
コウタケそのものは流石に少しばかり味が抜けているが、それでも香り、味ともに上質。
干したことでポリポリからジャキジャキに変化した食感が尚一層心地よい。
ちなみに、干しキノコとトマトは一緒に入れると旨味の相乗効果が起こって素晴らしい和風出汁が出るので、騙されたと思って一度やってみてほしい。
酸味はほとんど気にならず、むしろ「トマトって和食材なんでは?」と錯覚するほど醤油ベースの出汁と良く合う。
味:★★★★☆
価格:★★★★☆
1年経っても香り・味ともに問題なし
正直なところ、1年経ったことで香りや味がよりよくなったという確信は無い。
しかしもともと非常に美味しいキノコが、乾燥させるだけで1年後もそのままの味を楽しめるというだけで十分に素晴らしいことではないだろうか。
ぶっちゃけた話、ある程度は味が落ちてしまっているだろうと思っていて、未練がましく残しておくのもアレだから思い切って食べちゃおう、くらいに思っておでんにぶち込んだのだが…
予想以上に美味を保っていて、大量に使ってしまったことを後悔しているところだ。
今年もしまた大漁だったら、片っ端からカリカリに干して2年後、3年後も味を試してみたいものである。
どうかいっぱい採れますように…!
コメント