先月採ってきたマメガキが、ようやく食べごろになってきたようだ。
染物やせっけんの原料となる「柿渋」を採るために中国から移入されたこのカキは、果実が小さすぎることとそのあまりにも強い渋みのため、一般的には食用にされないらしい。
しかし、木になったまま放置されていると、やがて果実が紫色になってしぼんで行くのだが、この状態になると美味しく食べることができるという。
この食べごろの状態をして「ぶどう柿」と呼ばれることがある、とは奥多摩の老婦人から聞いたエピソードだ。
先日、試しにしぼんでいないものを食べてみたのだが、過熟してぶよぶよになっていたにもかかわらず強烈な渋みがあり、口の中がしびれて舌がマヒしてしまった。
この渋みが抜けきるなんてとても想像しがたいものがあったが、物は試しと萎れるのを待っていたのだ。
ちゃんと甘くなった!
この通り、外見はまさにブドウそのもので、何も知らないとあまり食う気になれないような見た目だ。
しかし、割ってみると中身はしっかりとオレンジ色で、あんぽ柿のような状態になっている。
どうやらブドウ色なのは外皮だけのようだ。
食べてみると、味も全くあんぽ柿そのものであった。
皮もこんな色ではあるが渋みは無く、ブドウの皮のようにかんたんに吐き出すことができる。
種が大きいのが難点だが、干し柿好きなら全く不満のない味わいだと思う。
味:★★★☆☆
価格:★★☆☆☆
個人的にはあんぽ柿よりぱきぱきの固い干し柿が好きなので、残りは引き続き干し続けてレーズン状になるまで待ってみようと思う。
貴腐ブドウ柿?
さて、マメガキの中でひとつだけ、カビがついてしまったものがあった。
灰色かび病菌「ボトリティス・シネレア」かと思ったが、いまいち確信が持てない。
仕方がないので捨ててしまおうと思ったのだが、ふと思い立って捨てるのをやめた。
「もしかして貴腐化してんじゃね?」と思ったのだ。
ボトリティス・シネレアは多種多量の農作物に普遍的につく代表的な植物病害の1つで、世界中で防除対象になっているのだが、こと一部のワイン用ブドウの果実に発生したときだけは非常に喜ばれる。
果皮の薄い白ブドウにこのカビがつくと、果皮の表面の層を分解し、果肉の水分を蒸発させてレーズン状に乾燥させてしまう。
そして同時に、独特の華やかな香りをもたらす。
この状態になったぶどうを用いて作られた白ワインは、素晴らしい香りと濃縮された甘みのある「貴腐ワイン」となり、高価で取引される。
最も有名な貴腐ワイン、フランス・ボルドーの「シャトー・ディケム」は、通常のヴィンテージのものでも1本5万円近くする。
マメガキの果皮は薄く、そしてなにより「ブドウ」の名を冠しているのだから、ひょっとしたらひょっとするかも…と思い、食べてみることにした。
まず香りを嗅いでみると、干し柿の強い匂いとともに、ごくわずかだがカビの匂いと、それ以外に少しばかりの形容しがたい、しかし不快ではない香りがあった。
皮を剥いでみると、カビの生えているところだけは皮と果肉が締まっており、水分が抜けているらしいことが分かる。
味は…
…(`・~・´;)
…あんまりわかんないw
カビ臭さや不快感はやはりないのだが、発生量が僅かすぎるのか、特筆すべき違いは感じられない。
もっと貴腐ブドウのように、カビが果実全体を覆い尽くすくらいにならないと違いを感じるレベルにはならないのかもしれない。
干し柿を作っていると、ときに全体が灰色かびでおおわれてしまうことがある。
これまでは捨ててしまっていたのだが、もしかするとあの状態の柿は貴腐化が進行してものすごい味わいになっているかもしれない。
またそうでなくても、鰹節のようにカビの作用で水分が抜けて、よりカッチカチに固い干し柿になってくれるかもしれない。
今年もこれから干し柿を仕込む予定なのだが、ちょっと楽しみになってきた。
とはいえいくつかのカビはカビ毒を生産し、発癌性を持つものも少なくない。
そもそもボトリティス・シネレアという確信は全くない。
いくつかのカビが混ざって発生してしまうこともあるだろう。
これを読んでも、あまり果物のカビを食べようとは思わないことをお勧めします。
キノコと同様、カビの毒も本当にヤバいものもあるので…
僕も確信が持てたときだけ試してみることにします。
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コメント
このへんはワインがわかる人ならではだよねー
私ならスルーしちゃってますわw
昨日ワイン飲んでてふと思いついたんですよー。
期待したほどの変化はありませんでしたけど…
まあ、今後も果物に灰色カビが生えたら懲りずに試してみます!!