夏のキノコといえば、まずはやはりイグチ(ヤマドリタケ)類。
それからテングタケ類。
まずはこの2種類だ。
しかし、僕の住む関東地方でこの時期、これらのキノコを併せても全く敵わないくらい、たくさん発生しているキノコのグループがある。
それがベニタケ類だ。
キノコ界の格差社会「ベニタケ」
短く太い足に、地面すれすれに広く開いた傘。
黄、緑、赤、青、紫、やたらに派手な色味が森の中でとても目立つ。
山はおろか街路樹の下、植え込みの中、都心の公園、オフィスの裏庭、校庭の隅などどこに行ってもたくさん見かけられる。
早いものは春ごろから顔を出し、12月になっても元気な種類もあるベニタケ科のキノコは、菌類の中でも特に繁栄しているグループのひとつだ。
このグループにはいくつかの超人気・有名食用銘柄が含まれているが、その一方で不食のものや毒菌も多い。
そして種類が多すぎて同定しようという気にすらなれないことが多い。
さらに、可食のものも多くが食感が悪く、まるで脆い発泡スチロールを齧っているようなポロポロボソボソした歯ざわりでアンチもたいへん多い。
栃木県民が偏愛していることで有名なチチタケや、昔から食用キノコとしてなじまれてきたハツタケも、この歯ごたえのせいで食べる気になれない、というキノコ狩りストも少なくない。
ただ一方で「良い出汁が出る」というのもこのグループの食用キノコに共通する評判である。
組織がもろい代わりに、味が出やすかったりするのだろうか。
個人的に言えばハツタケ、アカハツは最も好きなキノコの1つで、これらとアカモミタケについては毎年欠かさず採取して食べているが、それ以外のものについては同定が難しいこともあり、食べたことは無かった。
初心者向けのアイタケと玄人泣かせのカワリハツ
先日、野食仲間と夏山に出かけたときも、山肌は一面ベニタケ畑だった。
最も多かったのはドクベニタケやニオイコベニタケ、ヤブレベニタケなどの赤いベニタケ。
ベニタケとは「紅茸」であり、赤いものが一番種類が多いようだ。
それに混じり、ポツリポツリと可食とされる種類が生えていた。
藍茸、ではあるがむしろエメラルドグリーンに近い色合いの傘で、成長すると色素のある表皮がばらけてこのような特徴的な見た目になる。
これは同定が容易だ。
あらゆるキノコ図鑑で「可食」となっており、持ち帰って試してみることにした。
一方でこちら。
これは紫色だが、このそばに薄緑のもの、汚赤色のもの、薄ピンクのものが出ていた。
傘の色がまるで違うが、これはカワリハツという同一種のキノコである。
変わり果つ……ではなく、変わり初。
色の変化が大きいハツタケ、という意味である。(ハツタケは「キノコシーズンの初めに出る」という意味の「初茸」)
一般的に傘の色というのはキノコの同定にとても重要な情報であり、それがバラバラであるというのは実に厄介である。
純白な柄とひだ、中実で持ち重りすることなど共通点はあるが、ただでさえ同定困難なベニタケ科にあって食指が動かなかった。
今回は
・落葉ブナ科樹の下に出ていること
・上記の特徴を満たす様々な色の個体が狭い範囲に発生していたこと
さらに
・かじって辛み・苦味・悪臭が無いこと
から、カワリハツであると判断し、食べてみることにした。
アイタケもカワリハツも美味じゃん
水洗いし、柄を切って確認してみる。
アイタケはやや虫が入っていたが、カワリハツは状態よく、期待できる。
右の4つがカワリハツだが、同じ個体とは思えない。
一般的にはこれらウグイス色、紫色に加えて赤色、桃色となるものが多いそうだが、赤系のものは他のベニタケ科との混同が怖いので採取を避けた。
これのうち、身が締まって状態がいいものを薄くスライスし、
水から煮て出汁を取ってみた。
おお! なんと濃い色。。
塩のみで味を見てみよう。
……(`・~・´)
……美味い。
味は温和で香りも穏やかだが、旨味成分はとても濃い。
このままお吸い物にしても、旨味は初茸に匹敵するかもしれない。
歯応えもわずかなコリコリ感にシャリっとした歯ざわりもあり、懸念される口当たりも全く悪くない。
ただ、ハツタケの最大の魅力は爽快で特徴的な香り。
アイタケもカワリハツも香りにそこまでのものは無いので、和風料理ではそこそこのものしかできないかもしれない。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
味が分かったところで、作ってみたかった料理にトライしてみた。
「ヤマケイ 日本のきのこ」ではカワリハツは★2つ(3段階評価)となっておりかなり高く評価されている。
そこでオススメされているレシピだ。
フライパンにたっぷりのバターを溶かし、刻んだニンニクを炒める。
そこに大き目に刻んだアイタケ・カワリハツを入れてじっくり炒める。
……図鑑では「色合いが生きる」と書いてあったけど、色消えちゃったな……
まあいいや、いただきマース
∑(≧~≦*)
なにこれ、かなり美味いじゃん!
旨味が濃くてバターの風味に負けていないし、香りの弱さはバターが補ってくれている。
大き目に刻んだニンニクのホクホクした歯応えと、キノコのコリっとした歯触りの相性が抜群だ。
これ、このままオムレツに入れたらどうしようもないくらい美味いのができそう。
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
これまでこのキノコを採ってこなかったのはかなりの損失だった。
今後は見つけ次第採取するようにしよう。
ライバルも少ないし、ドングリの樹さえあれば身近にどこにでも生えてるので、その気になればあっという間に山盛り採れるだろうな。
傘の縁が内側に巻いている若い菌のほうが歯応えが良いのだが、アイタケでもカワリハツでもその状態だとちょっと区別が付きにくいのが難点。
特にカワリハツは「特徴のないのが特徴」っていったカンジで難しいけど、ウグイス色・紫色のものは似た別菌がさほどないのでよかったらトライしてみてください。
でも自信が無かったら食べないこと! いいね?
コメント
アイタケの汁は大好きです。食感がボソボソしないのもGoodですよね。大事に持って帰らないとボロボロになってゴミみたいになりますが・・・。
アイタケを見つけると「アイタケったーYES!君に~♪」と歌ってしまいます。古いですね。
カワリハツは自信が無くて味見程度しか食べた事ありませんが、
炒めてそんなに美味しいなら量を集めてみようと思いました。
キノコ狩りの時って替え歌とかダジャレとか捗りますよね……なんでしょうね、山で孤独だからだろうか。
アイタケとカワリハツはあまり変わらない印象でしたが、もしかするとカワリハツの方が少しばかり味が濃いかもしれません。発生量もカワリハツの方が多いですしね。
たぶん天ぷらも美味しいと思いますよ。
アイハツの色は藍染の液に白い布を漬けて取り出した直後の色に似てますね。(染液が空気中もしくは水中の酸素と反応して青くなる。)