スズメバチ幼虫の塩辛なら高貴な方をもてなせる

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野食友達からスズメバチ(コガタスズメバチ?)の巣を頂いた。
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彼の職場の方が、駆除ついでに生け捕りにしてきてくれたのだという。
食用を想定しているために薬剤や煙幕を用いず、防護服のみで確保されたとのことで尊敬の念がありあまる。
スズメバチに刺された経験のある僕にとっては一生不可能なことだろう。

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土とパルプでできた見事なハニカム構造の中には、パンパンに膨れ上がった幼虫や蛹が詰まっている。
幼虫を潰してしまわないように気をつけながら、ピンセットで丁寧に取りだしていった。

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昆虫食とハチの子

このブログではこれまであまり昆虫食について取り扱うことが無かった。
理由はいろいろあるが、一番は自分自身に昆虫食へのなじみがないということがある。


この国の環境は素晴らしく、ちょっとした知識と道具さえあれば、ビタミン源からタンパク源に至るまで容易に手に入れることができる。

参考↓
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そのため、はっきり言えば昆虫を食べなくても野食をやっていけるのだ。

もちろん各所で言われている通り、これからの人口爆発時代に「昆虫食」は極めて有効なツールであるというのは間違いない。
でも正直、まだそこまでやる気が起きない。

現在の昆虫食が「姿を活かす」方向で行われることが多いのも、なじめていない理由かもしれない。
これはもう好みの問題なので自分ではどうしようもないが、一方で「昆虫食に対するハードルを実践者自身が高いままに設定してしまっている」ようにも思える。

このあたりは今後の社会的ニーズの変化や、環境の変化によっても変わってくるだろう。
僕だって2004年の西サハラに放置されたらサバクトビバッタをむさぼって暮らしたはずだ。

今はただ、その必要に駆られていないだけなのだ。


閑話休題。

ハチの幼虫は日本では数少ない、食用としてもなじみがある昆虫だ。
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その理由の1つに「見た目の無難さ」があるのではないかと思うのだが、ウジムシタイプの生き物が嫌いな人間も多いので何とも言えない。
味はもちろんいいが、イナゴやセミをはじめ多くの虫は同様に味が良いので、やはり「まず口に入れてもらう」という部分でハチの幼虫は有利なのではないかと思われる。
どうだろうか。

捕獲難易度:最高 食難易度:極易

取りだした幼虫。
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大きいものは3cm以上もあり、地蜂(クロスズメバチ)のそれとは比べ物にならないほど大きい。
オオスズメバチだとどれくらいになるのだろうか……

既に前蛹になりきれいなクリーム色をしているものと、その前のステージで、消化管の中に未消化物が詰まっているのが黒く透けて見えるものがある。
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後者は頭を爪で掴んでちぎり、後部から押し出すようにつまむと
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消化管がずるりと抜ける。
処理は極めて容易だ。

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蛹も多く入っており、また蛹だと思ったら羽化済みの成虫だったりして、繭を開ける瞬間は非常にドキドキする。

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今回は成虫が3匹入っていたが、念のため冷蔵庫で低温状態にしておいたので安全に捕獲することができた。


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大きくない巣の破片からこれだけの可食部が採れるのだから、ハチの巣は歩留まりが良い。
誰かが採ってきてくれるのならいつだって利用したい食材だ。(超他力本願)

ハチの子をできるだけ手を加えずに食べてみた

さて、僕は一度スズメバチに刺されたことがあり、ハチの毒に対してアレルギーを持っている可能性がある。
これが経口摂取により反応を起こすことがあるのかについては、そのような記述を読んだことがないのでわからないのだが、今回は大事を取って成虫ならびに羽化が近そうな蛹は食べないことにした。
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彼らはスピリタスにでも漬けておいて、次回の野食会でぶちまけることにしよう。

一応針も生えてるしね

一応針も生えてるしね




幼虫と若い蛹を調理するにあたり、はじめはオーソドックスな佃煮にしようと思ったのだが、味の予測がついてしまうためにやめた。
調べてみるととにかくシンプルな調理法が良いらしいが、一方でわずかに昆虫特有の匂いも持ち合わせるようなので、まずは前蛹と蛹をバターでソテーしてみた。
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いただきマース

……(`・~・´)
うむうむ、なかなか乙な味。

比喩ではないミルクの味わいと、クルミのような濃厚な脂っぽさが舌の上に広がる。
香りはシンプルであまり強くないので、バターで補ってあげると全体のバランスがとてもよくなる。
蛹の殻はほとんど舌に障らず、味もほぼ変わらず美味しい。

そのまま食べるにはやや重いので、トーストかクラッカーが欲しくなる。

味:★★★☆☆
価格:★★★★☆



消化管を取り除いた幼虫は中のエキスが出てしまっており、炒めたり煮たりするのにはあまり向いていなさそうに見える。
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試しにひとつ生で食べてみると、匂いのことは差し置いても味がぼんやりしており、このまま食べ続けるのはちょっともったいない。

ここで思い出したのは、先日友人達が僕にプレゼントしてくれた昆虫食の本。

この中に「イナゴで発酵調味料を作る」というくだりがあり、実に興味深かった。

またWikipediaの「昆虫食」の項には「蚳醢」というシロアリの卵の塩辛が紹介されており、客をもてなすのにもつかわれたのだという。
これをそのまま食べたり、あるいは魚介類にソースのように添えて提供されたとのこと。

なるほど、塩辛、いいんじゃないかな……!

ということで、処理をした幼虫を15%程度の食塩で漬けこみ、おまじない代わりの塩麹を入れて冷暗所で数日寝かす。
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できたー
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いただきマース

……∑(≧~≦)
うおおなんだこれ、めっちゃ美味い!!!!

塩辛さは強いのだが、その中にハチの甘さがきりっと際立ち、味の輪郭がはっきりした。
塩麹は入れなくても良かったかなというぐらい身の甘味が強く、ホントに塩だけで発酵させてあげられれば、調味料としてもきわめて有用なものになりそうだ。
水分が出ることで歯ごたえも出て、一方で頭を取っているので舌に障る部分もない。

これだけで吟醸酒4合瓶は間違いなく空っぽに出来る。
今年作った珍味系料理の中でもトップクラスの味わい。

味:★★★★★
価格:★★★★☆



うーん、やっぱりハチの幼虫はメチャうまだな……
でも自分じゃ採れないから、こればかりは天の恵みがもたらされるのを待つしかないな……




すっごいワクワクして待つしかない。
ワイは待ってるんやでマーシー。。

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野食ハンマープライス

コメント

  1. 鏡の破片 より:

    確かハチとかのタンパク毒は経口摂取なら「口とかに傷がない限りは」大丈夫だったはずです。
    あとふと思ったのですが、日本で昆虫食が余り根付いてない理由って「カルシウムが摂れない」からなのかもしれません。
    日本は土壌のミネラル分が少ないために野菜に含まれるカルシウムがヨーロッパとかと比較するとめっちゃ低いらしく、より積極的に摂取する必要に迫られて、「虫なんか食ってる場合じゃねえ。小魚食え小魚」って感じになったのかも。

    • wacky より:

      毒そのものは大丈夫なんです、たぶん。でもアレルゲンとしては…… どうなんでしょう。何かあってからでは遅いですから。。

      なるほどカルシウム!! そうでなくても小魚の多い環境ですからね、そちらが最優先に成るのは理が通っていますね。。

  2. 温室 より:

    旧ざざむしでアナフラキシーショックを呈してしまう体質の人の中には
    「ハチ成虫料理の経口摂取でも同様の症状を起こしてしまう人が存在する」
    と記述がありんす
    http://web.archive.org/web/20081209011846/http://www1.odn.ne.jp/setsuna/za_insect.html
    成虫は避けたほうが無難かと思いマス
    改めて読み直すと
    「幼虫にはまだ毒成分が無いのでショック症状は確認されていないようです。
    幼虫は断れませんネ(うふ 」
    ですって(さすが

    • wacky より:

      ふふふふ、私に「旧ざざむし」の内容を教授なさるのは「釈迦に説法」というやつですよ温室さん……

      まあ実際この記述に基づいて成虫は食べなかったんですけどねw
      ちょっと色づいた蛹くらいまでは食べましたけど、今のところは無問題です。

      • 温室 より:

        をををを!
        そいつは申し訳ない!
        >経口摂取により反応を起こすことがあるのかについては、そのような記述を読んだことがない
        とあったんで、スマねっす

        • wacky より:

          いえいえ、そこは「そういったエビデンス(もしくは1次資料)を確認したことは無い」みたいな文章にしたら良かったですね(~_~;)

  3. 採ニオ より:

    そんなに美味いんですか…。
    以前、セミを食べる会でクロスズメバチ(確か)をいただいたのですが、
    独特の匂いがあり、その割に味は弱くて、余り美味いとは思いませんでした。
    試したいけど…ハチ怖い…(笑)

    • wacky より:

      地蜂の幼虫は確かに、ちょっと虫の匂いが強いかもしれません。僕も幼少時はダメでした。
      でもあれが佃煮などの強い味付けだと美味しく感じられるんですよねぇ。。

  4. アッキー より:

    ボクの職場は戦中派世代の人が多かったのと、ハチの研究している人もいたから、かなり種類も回数も食べた経験があります。

    一番抵抗なく無難なのはミツバチの幼虫のバターソテーで、バターは香り付け程度です。旨かったのは足長バチで、山形出身のオバチャンから、ストーブの上でいびって食べたけど、味つけは忘れちゃた(^_^;)

    クロマルハナバチ、スズメバチは旨かったけど、デカイんで、さすがにビビリましたね。

    • wacky より:

      おお、アッキーさん! ご無沙汰しています! その節はお世話になりました。。

      ミツバチいいなぁ…… 絶対美味しいに決まってるじゃないですか(笑)食べてみたいものです。アシナガバチも美味しいと聞きますね。マルハナバチやクマバチなちょっと想像ができないなぁ……

  5. KOH より:

    ハチの巣の駆除を頼まれることがあるのですが、なるべく殺虫剤なしで駆除してハチの子を食べてます。

    私は様々なアレルギーを抱えているので、時々、ハチ毒の抗体値を検査しています。
    特にミツバチとスズメバチは分けて検査しています。
    ハチに刺されると抗体値が上がり、年々値が下がり続ける感じです。
    抗体値によって刺された時の腫れ具合が違うので、検査結果は参考になります。

    で、その私がハチの前蛹なんかを食べると、ちょっと喉がかゆくなったり、食後数時間してから、胸やけがすることがあります。これはハチ以外、たとえばイナゴやエビとかイカでも似た症状が出ます。
    ちなみに上記の抗体検査によると、私はエビとイカがアウト、カニはセーフだそうです。

    幼虫の糞はゆでてから抜くと簡単ですね。塩辛は作れないけど。

  6. 木津健介 より:

    「昆虫食に対するハードルを実践者自身が高いままに設定してしまっている」のは
    多分、「俺スゲー」って言いたいだけだと思います(そして滑りまくってる)。

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