ハオコゼに刺されたことがないと、釣り人として一人前とは言えないらしい。
であれば、油断してぷすりとやられた小学生時代の自分に感謝しなくてはならない。
いや、言い訳をさせてもらえばけして油断などはしていなかった。
鯉のぼりのごとく、サビキ仕掛けにずらりと掛かったハオコゼを外していたとき、そのうちの一匹がぴょんと跳ね上がり、華麗なムーンサルトを決めて、一番尖った背鰭第2条を中指の関節に突き刺したのだ。
一瞬の出来事に感心しているうちに、指は曲がらないほど腫れ上がった。全くもって恐ろしい魚だと思ったものだ。
それでもゴンズイやオニオコゼのような本格的にヤバい毒魚とくらべると、ハオコゼくらいの痛みは登竜門にはぴったりなのかもしれない。(個人的には大変な激痛だと思うのだが)
根性で釣りを継続できるくらいの苦痛ではあるので、どうしても一人前になりたければ優しく握り締めてみるというのも良いかもしれない。
●ハオコゼを造る
さて、そんな苦い思い出から20年近くたった先日、鎌倉の某漁港で彼の魚と再会した。
折しもゴンズイ釣りの外道として釣れてくるという空気の読めっぷりについついうれしくなってしまい、鰭の毒針が折れてしまわないように丁寧にキープした。
昔釣ったときは、毒針を落としたうえで唐揚げや味噌汁などいろいろ試してみたが、どれも美味しかった。
今回は当時試すことのなかった刺身で、そのままのハオコゼを堪能してみることにした。
鰭を切られた魚で姿造りというわけにはいかないので、毒針に注意を払いながら丁寧に包丁を入れる。
よく研いだ小出刃を見事な背鰭に沿って入れていくと、さほど困難もなく2枚の身が取れた。
ハオコゼとしては十分大きいが、それでも半身で刺身一切れがやっとのサイズである。中骨に身を残さないのが何よりも大切になる。
鱗はなく、皮も大きさの割に丈夫で引きやすい。
完成!
大きさの比較のためにハーゲンダッツのスプーンを置いてみた。これまでさばいた魚の中でも最小かもしれない。
●ハオコゼの刺身は絶品
醤油ではなく、天日塩をほんの少しつけて食べてみると…
めちゃくちゃ旨い!
味は脂ののった大型のカサゴにも全く引けを取らない。
オニオコゼのような柔らかさはなく、しっかりがっちりと締まった筋肉の歯ごたえは素晴らしい。
個人的にはクロメバルよりも上、ハタにも匹敵する味わいだと思う。
それだけにつくづく大きさが残念である。ぜいたくは言わない、せめて20cmもあれば十分主役を張れる魚なのだが…
残った頭と中骨はじっくり揚げていただいた。毒針もパリパリとしてとてもおいしい。
余りに小さくて、今後自分で造りにすることはまずないとは思うが、誰かがやってくれるなら是非また食べたい。
味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆
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