「野食のススメ」第9回の記事が公開されました。
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星海社Webサイト「ジセダイ」で
「野食のススメ 東京自給自足生活」
を連載しています!!
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先日、とあるご縁で釣りのガイドの依頼を拝命し、マネージメントさせていただくことになった。
釣りは全く初めてとのことだが、「それでも楽しめる釣りはありますか?」との質問にアドレナリンが噴出する。
春先の低水温期、特に東京湾岸での釣りは苦戦することが多く、獲物を簡単に釣るためには遠くに行くなり、船に乗って沖に出るなりする必要が出てくる。
もちろん陸釣りでもウツボやゴンズイ、タコなどは比較的容易に釣れるが、釣りが初めてという方にいきなりこんなキワモノを釣らせるのは人としてどうなの? とゴーストがささやいた。
今回は幸いにしてかなり潤沢なご予算を頂けたので、ボートをチャーターして沖に出て釣りをすることにした。
利用した船は、かつて平坂さんと一緒に東京湾海底谷を攻めた時に何度か利用させていただいた、東京湾で“一番釣らせてくれるチャーターボート”、Knot enoughさん(旧てきと丸)。
Aki船長の気さくさにひかれて全国からリピーターが集まる、ルアー専門のボートだ。
予約の電話を入れ、無沙汰をわびつつ詳細を説明し、イシモチを釣らせてほしいんですがとお願いする。
「イシモチ!?」
東京湾の「船イシモチ」はなんびとにもオススメ
さすがのAki船長もちょっと驚いた様子だったが、こちらのボートは深海魚をはじめサメ、タイラバ(マダイの疑似餌釣り)などお願いすれば何でもトライさせてくれるとてもフリーダムな船なのだ。
今回も「イシモチのために出船したことはないですが、ポイントは知っているのでやってみましょう」と二つ返事でOKしてくれた。
イシモチという魚、スーパーマーケットなどで売られることもしばしばあり、知名度としてはどうなんだろう、偏差値でいうと48くらい?(高級すり身の材料なので正月用の蒲鉾にはだいたい入っているけど)
関東ではマイナー寄りの魚だとは思うのだが、西日本では惣菜魚としてごく普通の存在でもあると聞く。
でも、関東でも釣りをする人、特に船釣りをする人にとっては極めてなじみ深い存在であるのは間違いない。
イシモチと呼ばれる魚には何種類かいるが、どれも和名にイシモチと入ってはいない。(入っているものは「テンジクダイ科」という全く別のグループ)
このうち、関東の船釣りで狙われるのはほぼ100%がシログチという種だ。
シログチは水深20mよりも深いところに棲息しているとされ、船からの釣りでないとあまり顔を見ない。
しかし基本的には安い魚で、大きさも30㎝を超す程度、さらには味もそれなりと思われているため、わざわざ船に乗ってまでイシモチを狙おうという人は、東京湾以外ではほとんどいない。
ではなぜ東京湾では人気なのか。
理由はよくわからないが、いくつか思いあたるものを挙げてみる。
・近場で非常によく釣れること
シログチは砂泥質の海底に生息し、動物性のものなら何でも食べる。
釣るためには仕掛けを海底に留めておけばいいので複雑な知識を必要としないし、ゴカイを触れない人でも釣りができる。
大消費地のため釣り初心者も多い関東地方の前海で、簡単に釣れることがニーズに合致しているのではないか。
・冬に良く釣れること
東京湾の冬の水温は低く、釣りものは少ない。
そんな中でも元気に釣れてくるシログチは、何かと縁起を担ぐ釣り人の「釣り納め」「釣り初め」の対象魚にもってこいだ。
そのため、初心者のみならずベテラン釣り人にも人気がある。
・釣り味がよいこと
魚らしい形をしており、遊泳力が高くて引きが強いため、釣り自体が非常に楽しい。
潮止まりを除けば適度にアタリがあるし、アタリがあっても針にかけるまでに腕の差が出るのでゲーム性も十分だ。
・刺身が関東人好みの味であること
非常に鮮度が落ちやすく、新鮮なものでないと刺身にできないが、さっぱりとしながら脂がよくのり、ゼラチン質が豊富でうまみが非常に強い。
まさに理想的な白身魚であるといえる。
こんなところだろうか。
僕も全くの釣り初心者のころからシログチ釣りを始めて船釣りの魅力を知り、ある程度の釣りがこなせるようになった今でも、年に1~2回は「イシモチ釣り」の船に乗らないとなんだかすっきりしなくなってしまった。
超深海釣りとは何もかもが真逆の釣りだが、どちらかをするようになってももう片方を捨てられないというのが船釣りの業の深いところでもある。
まあつまり、今回の釣りは「ガイドという体で」自分が楽しみたかった、という側面がぶっちゃけた話、ある。
それでも且つ、どんな人でも絶対に楽しんでもらえるという自信があってセレクトしたのも偽りはない。
簡単だけどコツがあるのが面白い
さて、当日。
横浜沖にクジラがでた!
シャチよりでかい。なんて種類だろ……?
根岸湾から出港されたかたは、良かったら帰りに探してみてください— 茸本 朗(たけもとあきら) 「野食ハンターの七転八倒日記」好評発売中! (@tetsuto_w) March 10, 2017
東京湾にいてはいけないレベルの巨大不明生物(クジラ)の歓待を受けて始まった釣りは、
出船前の一抹の不安を拭い去るほどの釣れっぷりを見せてくれた。
東京湾では3.11の直後、なぜか20㎝クラスの小物がエンドレスで釣り続いてげんなりしたことがあったのだが、
今回は2匹目に32㎝という大物が掛かったことでその心配も杞憂に。
ただ漫然と連れ続くのではなく「下げ潮の時は入れ食いに近いが、潮が緩むとアタリが遠のく」というメリハリのある釣れ方で、「アタリをちゃんととり、タイミングよく合わせて針に掛ける」という釣りの醍醐味を味わえるシチュエーションになった。
シログチは竿先に大きな魚信を送ってくるくせに餌を飲むのが遅く、また意外に神経質で、餌を咥えていても違和感を感じると離してしまう。
そのためアタリがあってもあわてず急がず、合わせるのではなくむしろ竿を下げて糸のテンションを抜き、シログチ先生に気持ちよく餌を飲み込んでもらえるよう、よしなに取り計らわなくてはならない。
ここで釣果の差が出る。
今回のゲストはとある高名な漫画家の方だったのだが、さすがの観察眼に強い探究心が合わさってすぐにコツをつかんでくださり、よいペースで釣果を重ねていった。
僕は中乗り的な仕事をこなしつつ、アタリが落ち着いたタイミングでちょろっと竿を出してお土産増に努める。
外道も混ざり、最終的に十分な量が釣れた。
僕もサクッと良型を釣り、面目を保ちつつも竿頭&最大はゲストというこれ以上ない結果に終わった。
やっぱり「イシモチ釣り」はいいね!
この後は調理&食の楽しみが待つのだが、長くなったので次回へ。。
もし「釣りに興味があるけど釣れないのは嫌だし、難しいこともしたくない」という方がいれば、ぜひ「イシモチ釣り船」に乗ることをお勧めしたい。
僕自身そういう形で釣りが初めての人を連れて行ったことは何度もあるし、必ず満足してもらえた(と思う)。
「そんなこと言うならお前コーディネートしろよ」という声は心から歓迎します。
つーかワイが釣りたいだけという話。
イシモチはいいぞ!
コメント
イシモチ・・いいですね
なんかこう、イシモチ釣りより面白い事が起こりませんかね
それはないですね
イシモチ釣りはいつも夢と隣り合わせです(`・ω・´)外道のアジを背掛けにして投入すれば、ほら……
サメが……
新堂さん「イシモチはいいぞ」
僕と一緒に行く釣り初心者の友達はゴンズイとウツボを釣らされるハメになります
そして僕はイシモチを釣ったことがありま…せん…・゚・(つД`)・゚・ブワッ
こう考えるとピーキーな釣りしてるんだなあ…