東京湾某所に、化け物ダイナンアナゴ(一般的にクロアナゴと呼ばれている)が釣れるところがあるとHさんから聞いたのは今年の4月だった。
それ以来何度かそこを訪れ、化け物とはいかないまでも、1mほどのそこそこの型物を何匹か釣ることができた。
そのポイントは一見なんの変哲もない岸壁で、普段はアジやイワシ狙いのひとで賑わっているのだが、夜になると極々一部のスペースに奴らが現れる。
これまでの経験に基づいて、化け物に出会うためのコツをまとめると以下の通りになった。
●オカッパリ・ダイナンアナゴ完全釣り方マニュアル
●時合いは20時~22時くらい、潮回りはあまり関係なくこの時間に口を使う。
●2時間ほどの時合いでアタリは3~10回ほど。だいたい20分くらいに一度、バタバタとアタリが続く。群れで回遊してくるのか?
●餌は身餌ならなんでもOK。喰わないときは餌をこまめに変えるより、じっと待つ方が良い。ただ海底にイボニシがめちゃくちゃ多いので、餌に群がられないように少しだけ浮かせる。
●必ずアタリを取って合わせる。遅れると基礎石に潜られてお終い。また針を飲まれてもジ・エンド。軸が5cm以上の長い針を使うか、マグロ用の針でも良い。
●水中ライトは効果的なときとそうでないときがある。効いているときはライトをかじり取っていくことがある。
ガラス製の深海用ライトなんだが…
●ごつい竿、太い仕掛けでバトルさせずにゴリ巻き。
多くはないアタリをしっかり取って、タックルにものを言わせてぶっこ抜いてしまうのが最大のポイントだ。
長物特有の首振りは強烈で、また顎の力が強く切れ味があるので、どれだけ太いラインを使っても針を飲まれてしまったらどうしようもない。
針のチモトに中通しおもりを付けてブラクリみたいにするのも、糸切れ対策にはオススメ。
湾内でもっともロマンのある釣りだとひそかに思っている。
●ダイナンアナゴの捌き方と御味
さて、そんな化け物ダイナンアナゴ、気になるところは美味しいかまずいか。
人によって評価が大きく分かれる魚であるのは間違いない。
まず、外洋性のクロアナゴと異なる点として、ダイナンアナゴはヌメリの量がはるかに多いうえ、身もより水っぽい。
クロアナゴは身がしっかりしていて開きやすいが、ダイナンアナゴは柔らかいので丁寧に捌かないと中骨に身が残ってしまう。
このあたりを念頭に置いたうえで、調理を進めていきたい。
これは僕の予想だが、クロアナゴおよびダイナンアナゴをまずいといっているひとは、調理の前にヌメリ取りを怠ったのではないだろうか。
魚のヌメリは生臭く、料理に悪影響を及ぼすが、ダイナンアナゴのそれはめちゃくちゃ強烈で量も多い。
「クロアナゴしか釣れず、持って帰ってきたものの、家についてクーラーをあけた瞬間に立ち上る臭いにげんなりして捨ててしまった」なんて話もしばしば聞く。
まずはたわしでしっかりヌメリを洗い流したい。新鮮なダイナンアナゴなら、身自体が生臭いということはほとんどない。
その後は大きさにもよるが、目打ちを打って普通のアナゴのように開いても良いし、ぶつ切りにして三枚おろしでも良い。
ただ2点注意したいのは、捌き方と腹骨の形状だ。
まず捌き方について、ダイナンアナゴの内臓は驚異的な臭さと大きさがあるため、背開きよりは腹開きにして腹腔をよく洗ってから捌いた方がいいかもしれない。(先述の通り身が水っぽいので、開いてから水洗いをするのはあまりオススメできない)
また腹骨がないかわりに、ウツボ同様中骨の下がY字状に開いているので、それを切り離さないように気を付けたい。
上手く開いたら、とにもかくにも大きさがあるので様々な料理が楽しめる。
水っぽいため、焼き物にするなら一度軽く干すか、脱水シートで水分を飛ばすとより美味しくなる。こうすることで癖のある皮も個性に変わる。
小骨(皮下埋没骨)については、ウツボよりは柔らかいので80cmくらいまでは骨切りをして調理するとおいしく食べられる。
それ以上なら加熱後に骨を抜くか、ウツボと同じ様に骨抜きをしてからの調理が無難だ。
横須賀以南の三浦海岸では昔からクロアナゴを大アナゴと称して売っているが、そこの女将曰く、蒸せば身が縮んで小骨が出てくるから抜けばいいとのこと。
自分でもやってみたが、その気になればほぼ全部取り除くことができそうだ。
なお、内臓を包む部分の筋肉は小骨が無く、適度に脂も乗り刺身でも美味しいが、ちょっとでも鮮度が落ちて内臓の臭みが移るととても食べられなくなる。
皮を引くとき、ヌメリが身に移らないようにするのも大事なポイント。
●クロアナゴもダイナンアナゴも美味しいんだよ
戸田湾でタチウオ釣りをしていてメーターオーバーのクロアナゴが掛かったことがある。
船頭に笑われるかと思いきや、丁寧にタモで掬ってくれたうえ「うめぇ魚だ、ハモよりうめえら、持って帰れ」と言ってくれた。
口が肥えた漁師も褒める魚、まずいなんて捨ててしまうのは本当にもったいない。ぜひ、持って帰ってアナゴ三昧の食卓を楽しんでみてほしい。
コメント
大変勉強になります。