前回に続き、宮城県は塩竃市場で見つけた面白いものの紹介です。
②宮城の大“はも”
宮城・塩竃の卸売市場は半分観光地化されているが、扱っている魚の種類は多く、鮮度も悪くない。
宮城で一番の知名度を誇るのはやはり閖上の朝市だと思うが、こちらの塩竃市場は卸売市場だけあってプロしか買わないような変わった魚が多く楽しい。
またこのような市場では、併設の食事処で新鮮な魚介類が食べられるのが魅力だ。
期待を胸にご飯処に向かってみると、手書きの壁貼りPOPに大きく「あなご(はも)刺丼」の文字が。
店主に聞いてみたところ、宮城をはじめ東北地方の太平洋側では、アナゴをハモと呼ぶらしい。
つまり、関西では薄造りで食べることもあるハモではない、正真正銘のアナゴの刺身丼ということだ。
ぜひ食べたい、と思ったがあいにくの売り切れ、仕方ないので自分で購入して作ってみることにした。
アナゴ刺しはご当地の味わい
アナゴを商っている店は何店舗かあったが、その中でも最も大きなアナゴを購入した。
ここで素晴らしいのは(どのお店もそうだったが)しっかりと活け締め・血抜きをしたうえで、購入者を信じて丸のまま販売しているところだ。
江戸前アナゴの本場・築地でも、ちゃんと活け締めされているアナゴを見ることは減っているような気がする。
これはやはり、刺身で食べるという文化がないことによるのだろう。
また都心の鮮魚店では既に開かれてしまっているので、刺身にすることはできない。
アナゴに限らず長物を刺身で食べるためには、基本的には自分で釣るか、面倒くさがらずに店をまわって、自分で目利きをするしかないのだ。
アナゴを造る
ということで手に入ったのがこちら。
関東以西ではまず手に入らないと思われるメーターオーバーのマアナゴだ。
なるほどコレだけ大きくなれば面構えも厳つくて「咬魚」の名にふさわしい。
価格はなんと1本1500円!
ウナギやアナゴなどは大きければ大きいほど「骨が固い」とか「大味だ」とかいう理由で安くなるのだけど、実際は長物は大きいほど美味しいのでお得感がすさまじい。
東京湾や瀬戸内などでは乱獲のため50㎝を超えるものは少ないマアナゴだが、東北ではこのくらいのものはざらだというのでうらやましい。
ここまで大きくなっても骨は柔らかく骨切りの必要はなかった。
刺身と白焼き、煮物で食してみた。
脂がのって弾力があり、口の中いっぱいにアナゴそのものの風味が広がる。
何も知らない人に目隠しで食べさせても間違い無くアナゴだと当てられるだろう。
これはめちゃめちゃうまい!
日頃食べているウツボとくらべても自己主張の度合いが段違いだ。
味:★★★★★
価格:★★★☆☆
アナゴ刺しを造るときの注意
なお、もし自分でアナゴの刺身を作ってみようという人がいたら一つだけ忠告したいのだが、ウナギ目の魚は粘液と血液に毒成分を含んでいる。
ウナギを刺身で食べることはほとんどないかもしれないが、ウナギの粘液毒は一説によると1個体200MU(200頭のマウスを殺せる強さ)あるという。
そのため造るときは、まな板や包丁、捌いた身についた粘液と血液を神経質なまでにしっかりとふき取って調理するようにしてほしい。
また傷口や粘膜に入るととてもしみるので、そのあたりも十分気を付けてほしい。
積極的に勧めておいてアレなのだが、何度も繰り返すが自己責任というやつでお願いします。マジで。
でも美味いんだよなぁ…
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