そろそろトンビマイタケの季節だ! と思い、友人を誘ってブナの森に突入するも丸ボウズを食らった。
本家マイタケは子実体を作るのに相当なパワーを要するので、個体のパワーによって2年ごと、3年ごと、5年ごとなどの周期を持って発生するとされているが、トンビマイタケもどうやらそうなのだろう。
昨年発生した立ち枯れには全く気配が見られず、また新しいポイントの開拓もかなわなかった。
というかそもそもこの時期にしてはキノコが少なすぎる。
元気だったのはツキヨタケくらいで、地上から生えるキノコは皆無と言っても良い状況だった。
それ以外のテロワールはこちら pic.twitter.com/sSsRnG2Ima
— 茸本 朗(たけもとあきら) 「野食ハンターの七転八倒日記」好評発売中! (@tetsuto_w) August 13, 2016
このままいくとこの秋のキノコ狩りはやや苦戦するかもしれない。
エゾハリタケが採れたぞ万歳
悲壮感すら漂い始めたタイミングで、目の前のブナの立枯に丸くて白いものがへばりついているのを発見。
あ、あれは……
今日のテロワール pic.twitter.com/AvlgKlvgJt
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キター!!
エゾハリタケだ!
ブナの巨木の立枯に発生する、レアモノ食用キノコで、個人的に憧れていたキノコだ。
同じ木の裏側にはより大きな子実体も!
【悲報】ワイ将、顔がデカ過ぎてキノコのサイズが伝わらないボーンヘッド pic.twitter.com/pfRmv4M4V8
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最大40㎝近い半円状のかさを重層状につけ、周囲に何とも言えない甘ったるいようなキノコ香を振りまいていた。
かつて某キノコ屋のオヤジに「マイタケは金になるのでありがたいが、一番嬉しいのはヌケオチだ」という話を聞いたことがある。
ヌケオチとはエゾハリタケのことで、冬になるとこの巨大なかさの上に雪が積もり、重みで落下する。
それを冬のハンターや春の山菜狩りの人たちが拾って食べていたので「抜けて落ちる」という意味の呼び名が生まれたのだ。
同様の語源で「カケオチ」と呼ばれることもある。
つまり「駆け落ち」ではなく「掛け落ち」なのだが……
まあ、キャッチーなタイトルの方がいいだろう。キノコの記事不人気だし(フテ腐れ)
なお現代ではエゾハリタケもいい金になるようで、そこそこいい値段で売られている。
http://www.smegumi.co.jp/ezoharitake.html
キロ8000円とは高く感じるが、天然キノコは定まった評価が無く、採った人の言い値で売られる場合が多いので得てしてこうなる。
特にマイタケやマツタケのような「シロを知っていればいつでも採れる」タイプのキノコとは異なり、このエゾハリタケは一期一会的な側面があるので、市場に出回る量が少ないのだ。
またこのキノコは多くの場合、立ち枯れのかなり高いところに出るので、見つけても採取できないことが多い。
それこそ抜け落ちてくれるのを待つしかないパターンも多く、今回は実に運がよかったと言える。
2つの子実体でおそらく5㎏ほどはありそうだ。
水を吸いやすいキノコのようで、持つとまるでスポンジのように水が滴る。
網に入れて肩にからい、背中をびしょびしょにしながら帰路についた。
エゾハリタケはシンプルな調理法が吉
さてこのエゾハリタケ、通常はどのように食べられているのか。
先述のオヤジに聞いてみると「木の上で腐って落ちてくるのを待って、表面をきれいに削って、塩漬けしてから水とみりんで漬けるんだ。サキイカみてぇでうめえ。」と言っていた。
腐っていないのがとれたら、土に埋めて腐らせたりすることもあるらしい。
なかなか穏やかな食べ方ではない。
腐らせるとまではいかずとも、上記のリンク先によれば
“エゾハリタケは、すぐには食べることができないので、まず塩漬けにします。塩に漬け終わったら、塩だしをして、味噌漬けにするか、油で炒めて食べます。
エゾハリタケを塩漬けしないで採取後に食べたいときは、細切りにしてバターで炒めます。この場合、一度冷凍してから使うと冬を越したような状態になることから、少し柔らかくなります。”
とのこと。
ともかく食べるために手間を要されているのがわかる。
調べてみてもあまりレシピが出てこない。
少ない情報を引きずり出してみると、生で食べると中毒することもあるようで、一度茹でこぼしてから調理することが多いらしい。
まずは先人にならい、一度茹でこぼしてみることにした。



かさの裏面がブラシ様になっているのが和名の由来
1枚ずつの傘に分け、硬くて食べられなさそうなところを切除して、10分ほど茹でる。
アク様の泡とともに石鹸のような甘ったるい匂いが出て、茹で汁に軽く色がついた。
取りだして流水でさっと洗い、繊維に直交するように薄く刻む。
ここで軽く味見すると……
……味しねぇ!
これ、トンビマイタケと同じ、茹で汁内に出汁を放出するスポンジ系キノコなんじゃないか?
嫌な予感がしつつも、とりあえず、醤油と砂糖、みりんで炒め、味噌を入れて炒めながら絡め、完成とする。
そしてこれとは別に、新たなかさをひとつ、生のままで薄く刻み、多めの油と醤油とみりん、砂糖でじっくり炒める。
茹でこぼさないとどうなるか試してみたかったのだ。



左が味噌炒め、右が醤油炒め
いただきマース
まずは茹でこぼした方から。
……(・~・`)
やっぱり味しないなぁ。
香りは薄まって食べやすくなってるけど、肝心の旨味がちっともないし、歯ごたえもキシキシしてあまり美味しくない。
食べられないことは無いけれど……
続けて生のまま炒めた方を。
……(≧~≦)
これは美味い!
旨味がしっかりあるし、歯ごたえもコリコリ感が出て美味しい。
かさの中心に軟骨様の部分があり、ここがこのキノコの魅力のようだ。
懸念の香りは調理によって適当な強さに収まり、キノコ料理らしい魅力にあふれている。
山椒の葉との相性が抜群に良い。
味:★★★★☆
価格:★★★★☆
生のまま料理したほうが良いということが分かったので、これをもとに明日はいろいろな料理を試してみよう。
コメント
自分で採ったキノコを食べられるのは羨ましいですね。
せっかく群馬に住んでいるのでいつかキノコ採取を…!と思うものの、全くの素人なのでなかなか手が出せませんf^_^;