先週末のキノコ狩りでまたも初見のキノコに出会ってしまった。
いや、厳密に言えば初見ではないな。ほとんどの人が一度は見たことあるものだと思う。
トリュフキター! pic.twitter.com/70AQc9Wv65
— 茸本 朗(たけもとあきら) 「野食ハンターの七転八倒日記」好評発売中! (@tetsuto_w) October 1, 2016
黒いダイヤと名高い黒トリュフこと、セイヨウショウロの一種。
おそらくイボセイヨウショウロだと思われる。
色々な「まさか」が重なりあっていて、採って数日たった今でもいまいち信じがたいところがあるのだが、せっかくなので情報を整理しておこうと思う。
黒トリュフ、その意外性
その①:日本に有ったの!?
トリュフの写真をTwitterにアップした際に「日本にあるのかよ!」という突っ込みをいくつも頂いたのだが、そう、あるんです。
胞子によって殖えるキノコは、世界の広い範囲に同一の種が存在していることがよくある。
そのため「○○って日本にも発生するのか」という驚きは専門家の中でも毎年のように繰り返されている。
イボセイヨウショウロも別段帰化種だとか新種だとかいうわけではなく、少なくとも10年以上前から存在が確認されてきた。
地中性菌なので見つかりづらく、採取報告が少なかったことが知名度の拡大を遅らせたのだろう。
とはいえ、日本のイボセイヨウショウロは、いわゆるフランス産の最高級黒トリュフ・ペリゴールとは種類が異なるとされている。
中国には同様に産しており、ときに築地などで見かける「中国産トリュフ」はイボセイヨウショウロだと思われる。
その②:なんでわかるの? ブタなの?
地中性菌であるトリュフは、フランスではブタに探させることがよく知られている。
ブタの大好物だとか、あるいはブタが好む匂いを発しているとか言うが、実際のところは分からない。
では、ブタみたいな嗅覚を持たない我々がなぜ見つけられるか。
地上に出てるからだYO!!
そもそもトリュフが、なぜキノコのくせに地中に埋もれているのかというと、胞子の媒介に風ではなく地表の動物たちを活用する様に進化したからだという。
これらの菌は、ごく幼菌の時は地中浅いところに埋もれているが、成熟に伴って地表に露出してくる。
その際に特異な匂いを発し、動物たちを寄せて子実体を食べさせることで胞子を媒介させるのだ。
地中に埋もれていると、媒介者に見つけてもらいにくくなるため、基本的には地表に出てくることになる。
そこを目ざとく見つけて拾い集めていけばいいのだ。
地表に現れていない子実体を見つけるのは困難であるし、地表をほじくりかえすのは菌糸や菌糸束を傷つけて翌年以降の発生を失わせることになってしまうので厳に慎みたい。。
その③:どこで採れるの?
先述の通りイボセイヨウショウロについては、確認されてから日が浅く、また分布や発生域については報告も少ないためはっきりしたことは分かっていない。
一つ言えるのは、徐々に注目されるようになり、それに伴って全国各地からの報告例が相次いでいるということだ。
本気になって探したら、意外と近くに転がっていた、なんてことも十分すぎるほどありうる。
Wikipediaの「セイヨウショウロ」の項によると、
“少なくともTuber 属に含まれる種はすべてが外生菌根を形成し、ナラ属(Quercus)や、ブナ属(Fagus)・カバノキ属(Betula)・ ハシバミ属(Corylus)・クマシデ属(Carpinus)・ヤマナラシ属(Populus)あるいはマツ属(Pinus)などの樹木の細根と共生している。また、ハンニチバナ科(Cistaceae)に属するハンニチバナ属(Helianthemum)やゴジアオイ属(Cistus)などの植物の多くもまた、Tuber 属の菌との間で外生菌根を形成する。”
とのこと。
イボセイヨウショウロがこれのどこまで共通するのかはわからないが、今回我々が見つけた場所にも上記の樹木が生えていた。
ポイント探しのコツとして「攪乱地を探せ」というのがある。
自然そのままの土地よりも、造成地や林を切り開いたところなど、人の手が入ったところに発生しやすいというが、これはどうやらその通りのようだ。
今回見つけた場所も、森を切り開いて均したようなところで、若い上記の樹木がまばらに植えられており、下草は少なかった。
これらの要素を満たしたようなところがいいポイントになるようなので、近所にめぼしいところがあるなら今日にでも見に行ってみることをオススメしたい。
その④:それ、美味いの? ってかトリュフの魅力ってなに?
以前、某高級デパートの催事場でペリゴールトリュフの実物を展示しており、匂いをかがせてもらったことがあるが、正直に言うとほぼわからなかった。
当時すでにワインエキスパートの資格を持っており、テイスティングの際にドヤ顔で「トリュフの要素もあるね……」なんて言ってたのにトリュフの香りが分からないとか笑い話だと思ったが、周囲のほとんどの人が分かっていなかったので少し安心した。
スタッフさんを鋭く問いただすと、やや慌てたように「熟成させて、スライスしないと香りは出ません」と説明してくれた。
イボセイヨウショウロに関していえば、採取してすぐに匂いを嗅いでも、ほとんどピンと来ない。
スライスすることで強く香るが、かなりの短時間で香りは飛んでしまう。
そのためやはり熟成が必要になるようだ。
近々で食べる予定がある場合は、土をきれいに落として(熟成前なら流水で洗っても大丈夫)密閉容器に生米とともに入れて常温放置が良いとのこと。
生米は湿度を安定させるために入れる。
長期保存の場合は、この状態で冷凍庫に入れるのが一般的のようだ。
ワイは真空パッキングして冷凍するけどな!(ドヤ顔)
熟成、というのは人間側からの用語で、トリュフにとっては胞子の成熟であり、香りが強くなるのは媒介者へのアピールである。
この匂いに釣られてよってきたのが、媒介者足り得ないヒトだったというのはトリュフさんサイドとしては大いなるミスだったと言えるだろう。
(もしかしたらその間にも胞子飛ばしたりしてるかもしれないケド)
さて、成熟して地表に出てきたイボセイヨウショウロは、どうやら完品はあまり多くないようだ。
多くの場合、スライスするとその特徴的な大理石模様の中に、まだら模様や黒くなった部分が混在している。
これらの部分はやや柔らかくてぐちゅぐちゅになっており、一見すると食欲がわかないが、香りはとてつもなく強い。
食べていいのかよくわからないが、捨てるのが惜しすぎてバクバク食べている。
かつてフランスの美食家が「トリュフは媚薬である」と言ったが、実際とても艶めかしく、表現を選ばずに言えば「エロい」香りがある。
甘さ、コショウのようなスパイシーさ、ミルクのような香り、生臭さ、土臭さ、青臭さ、様々な要素がないまぜになって…… なんていうんだろう、性的魅力にあふれた女性の体臭のような、大脳旧皮質にクる感じなのだ。
フランス人が好きそうな香りなのは間違いない。(ワイも大好きやで)
食感はコリコリして心地よいが味はあまり大したものではない。
やはりその魅力は香りということになるのだろう。
その⑤:やった! 採りまくって大金持ちだ!!
中国産のイボセイヨウショウロは一山たったの500円で売られています。
まあこういうのは輸送されているうちに味も香りもほとんどなくなってしまった、見た目だけの商品だけど。
国産に関しても、前述の通り、国内各地から採集報告が上がり続けており、実は発生量がかなり多かった…… なんて可能性もある。
現在は国産のイボセイヨウショウロは市場にほとんど出ていないと思うけど、流通し出したら意外に量が多く、そこまで高い価格にならなかった…… なんてことも起こりうる。
まあそれでも天然キノコだし、菌根菌で栽培はできないからある程度の値段はつくはずだから、見つかると嬉しいよね。。
中国産のイボセイヨウショウロも、廉価版トリュフとして本場ヨーロッパに輸出されてるらしいしね!
せっかくなのでヤンチャに食べてみたい
今回、それなりの数が採れたので、オーソドックスな料理から市販品ではできないようなヤンチャな食べ方まで、いろいろトライしてみたいと思う。
なにか新しい知見が生まれたら嬉しいなぁ。。
フロンティア食材ってワクワクするね!
コメント
最後の画像だけみたら完全に金持ちの道楽っすねw
皆さんもトリュフさがしのコツを覚えたらこのくらい朝飯前ですぜ(~ー~)
すげー!w
雄山が激怒するようなのやっちゃってください!(期待)
あいつフレンチレストランにわさび醤油持ち込むような厚顔無恥だからこっちが何やっても大丈夫ですよ。
むかーし、少量を一度だけ食べましたが、
香りだけで味がなく、薬味みたいな印象でした。
これだけの量があれば、味もするのかも?
いや、一杯食べましたが味らしい味はあまりないですねぇ。。やっぱり香りだけのキノコなんでしょうね。。
トリュフって移植できないんですか?
近所のドングリの木の根元に埋めれば移植できるなら増やしていきたいですね