先日、久々にリクエストメールをいただきました。Hさんありがとうございます。(←ラジオパーソナリティー気取り)
えーと、なになに「茸本さんはイシクラゲを食べられたことはありますか?」ですか。あーはいはいはい、あーね。。
そういやこのブログでまだイシクラゲやってなかったですもんね。
イシクラゲとは
みなさまは、砂利が敷き詰められた駐車場や、放置された原っぱなんかに、アオサノリやワカメみたいな緑色のものがもしゃもしゃ生えているのを見たことがありますか? ありますよね? ないとは言わせねぇ。
こんな感じの駐車場には大体生えてます。
こんな感じでね。
見た目は完全に海藻ですが、海ではないので「海」藻ではなく、藻類とも言い難い細菌類の「藍藻」の一種です。極限環境にも棲める種が多い藍藻類ですが、同じ仲間には川海苔の一種として珍重されるアシツキや、中国で珍味として知られる「髪菜(はっさい)」などがあり、意外と食材としても用いられるものたちなのです。
実はイシクラゲもこれらの藍藻と同様、昔から食用にされてきたと言います。確かに川や海に行く必要もなく、身近な場所の地面に海藻みたいなやつがいくらでも生えていて、しかも食べられるとなればそれを使わない手はないでしょう。
とはいえ、駐車場や道路、建物の隙間の日陰のコンクリートの上などに生えている彼らを見ると、どうにも食べる気が起こらない……というのもまた自然な感情だと思います。なんかぐちゃぐちゃーってしてるしね。
ぼく自身、たぶん今回リクエストをいただかなかったら、こうやってブログで取り上げることはなかったと思います。実は一度食べたことはあるのですが、当時はまだブログを真剣にやっていなかったのでネタになることもありませんでした。
これも何かのご縁ということで、今回改めて取り上げてみたいと思います。
イシクラゲで板海苔を作ってみた
こちらが採取したイシクラゲ。うちから最も近くで採取可能な野食材ですね。これで美味しけりゃいいんだけど……
ウェブを調べると「お吸い物」「ワカメご飯風」などで食べている例はあるようです。ぼくも前食べたときはご飯に混ぜて食べました。
どうせ食べられることは解っているのですから、同じ風に食べてもつまらない。ということでひと手間くわえてみることにしました。
使うのはこちら。
紙漉きセットです。もちろん漉くのはイシクラゲ。
よく洗ったイシクラゲを細かく刻み
漉いて紙状にします。
ザルに乗せて日に当て、しっかりと乾燥させます。
できた、イシクラゲ板海苔! 予想以上に海苔っぽい見た目になりましたね。
これをコンロの火であぶって焼き海苔にし、
おにぎりに巻きます。
できた! イシクラゲおにぎり、完成!
見た目はまさに海苔巻きおにぎりです。まさかこれが川崎の駐車場に生えてたとは思われまい。
イシクラゲは海苔の代用になるか
さっそくいただきまーす
……(´・〰・`)
うん、まあ分かってた。干しあがった時から気づいてた。
イシクラゲ板海苔、見た目は完全に海苔なのですが、香りが皆無なのです。あの海苔独特の潮の香りがないのはもちろんですが、炙った時も香ばしさが全く出なかったのです。
口に入れても全く無味無臭。噛みしめていると時々落ち葉のような香りが口に広がりますが、これはおそらくイシクラゲに混ざったコケのにほひかと思います。
これまで食べてきたあまたの食材の中でも、このイシクラゲは一番、味がありません。
からっからに乾燥させてこれかよ……これは美味いとかマズいとか、そういう評価以前の問題です。
味:評価なし
価格:評価なし
これ、栄養価的にはどうなんだろ? クロレラみたいな感じで、味はないけどタンパク質やビタミンが含まれていたりしないのかしら。まあそういう副次的なメリットがない限り、このイシクラゲを食べる価値はないと思います。少なくとも味の面で何かを得られることはないでしょう。
身近にあるから使いたいんだけどねぇ……残念。
2020.9.4追記
当件、記事公開後に情報をいただいたのですが、イシクラゲの生理作用についてはすでにいくつかの機関で研究が行われており、人間にとって有益な栄養素を含むことが分かっているそうです。
とある論文では、乾燥イシクラゲには30%の粗タンパク質、0.5%の脂質、60%の炭水化物などが含まれており、また炭水化物の大多数を占める細胞外多糖は新しい食物繊維になりうる存在である、とされています。(“Chemical composition,in vitro protein digestibility andin vitro available iron of blue green alga,Nostoc commune yori”,Plant Foods for Human Nutrition volume 40, pages223–229)これ、結構栄養価高いってことだよね……?
沖縄県では「藻のアオサ」という意味の「モーアーサー」、滋賀県では地名にちなみ「姉川クラゲ」と呼ばれ、古くから食用にする文化があるそうなのですが、いずれももしかするとこの栄養価を期待して食べられてきた側面があるかもしれないですね。
とくに沖縄とか本物の海藻がめちゃくちゃ獲れるわけで、そんな中でどこの地面にも映えるイシクラゲをわざわざ採って食べようなんて思うのは「採りやすさ」「味」以外の理由があるとしか思えない。
今回ぼくはあくまで味から判断したので「イシクラゲ食べる必要あるのかなー」と思ったのですが、そういうわけで栄養価も豊富らしいので「ぜひ食べて……とは言わないけど、どんどん食べてもいいじゃないの」というように結論を変えたいと思います。
教えてくださった皆様、ありがとうございます!!
追記終わり
コメント
いつも楽しく拝見しております。
この記事を観て、高校の校舎でも採取できるソウルイの一種、ネンジュモを思い出しました。
グミのようで海藻要素もあり楽しい食材だと思います。
もう試されているかもですが、まだでしたら是非
見た目は完全に海苔で美味しそうなのに、味も香りもないんですね( ゚Д゚)
食感は板海苔と同じくパリパリしているのでしょうか?
それならば、味付け次第で美味しく頂ける?
こんにちは。
沖縄のモーアーサですが、藻ではなくて、原っぱや広場を意味する毛(モー)から来ています。