さて、イルカを無事ヒンナヒンナできたところで、本命のオシツケに行ってみよう。
オシツケとはアブラボウズの小田原周辺での呼び名で、「毒見」の意味を持つ隠語らしい。
なぜ毒見なのかというと、この魚が驚異的な量の脂質を筋肉に蓄えているからだ。
時に筋肉量の50%にも達することがあるらしい。
深海の巨大魚で脂質たっぷりというと、間髪を入れずにあのワックス魚どもが連想されるが、アブラボウズの脂質は人体にも消化可能なトリグリセリド(いわゆる中性脂肪)のため、食べても即ち危ない目に遭うということはなく、また市場にも普通に出回ることができる。
というか、ぶっちゃけギンダラと同じ仲間なので、みんなこの脂を摂取したことはあるはず。
アブラボウズと偽装
かつてこの魚は、泣く子も黙る最高級白身魚「クエ」の偽装に使われたことがある。
2008年に大阪と福岡の業者が検挙されて以降は下火になったとも聞くが、場末の赤提灯で「クエあります」って言ってるところがあれば要注意かもしれない。(タマカイを偽装に使っているところも見たことあり)
我が家でも、僕が中学生のころ「クエ鍋」が晩の食卓に登場したことがあったが、あの脂のノリとポン酢のはじきっぷりはおそらくアブラボウズだったのではないか。
これはひとえに「クエ」が高級すぎて多くの人が食べたことが無いというのが理由だろう。
かくいう僕も長らく「クエはとてつもなく脂ノリノリなもの」というイメージを持ち続けていたのだが、数年前に143㎝42㎏という巨大天然クエを食べる機会があり、その間違いに気づいた。
クエも脂はのっているが、あくまで濃厚な身の味を楽しむのが主体。
一方でアブラボウズは甘みたっぷりの脂とジューシーさという全く別ベクトルの楽しみがある。
クエ程ではないもののかなりの高級魚と言って良く、かつ味の方向が違うアブラボウズを、クエと偽ってより高い金を払わせて食べさせるのはあまり賢い行為とは思えない。
そんなことをするよりも、なぜか最近「食べてみたい!」という人が増えまくりのアブラソコムツ(とバラムツ)の代用魚として触れ回ったほうがいいような気がする。
これらの魚と違ってアブラボウズはお金を出せば買えるし、高級魚ったって清水まで深海魚を釣りに行くよりはお手軽だ。
さらには
ケツから
出ない
しかしあくまで脂は脂、二郎のアブラマシマシを食べてお腹を壊す人がいるように、アブラボウズも食べ過ぎると下痢を引き起こしたりすることはあるだろう。
そのため厚生省の「自然毒のリスクプロファイル」にも「異常脂質」という名目で掲載されている。
まあ、メタボ検査に引っかかってる人でなければ全く問題ないことは確かだ。
アブラボウズのルイベと刺身を食べてみた
大きめのステーキ肉くらいのサイズで1,000円となかなかの価格だが、かつて偽装対象となった超高級魚クエと比べれば十分にお手頃価格である。
今回は絶対に刺身で食べたかったので、買ってきてすぐに冷凍庫にしまっていた。
脂の多い魚は一度冷凍しても解凍が容易で、水分が抜けて味が大きく変わってしまうこともないのでありがたい。
また、半解凍状態で薄く切り、ルイベとして楽しむこともできる。
せっかくなので今回は半分をルイベに、そしてもう半分を小田原の古老オススメのサイコロカットにしてみた。
凍っていても醤油の上に脂がパッと広がり、融点が低いので舌に乗せると一気に溶けて脂の甘味がひろがる。
サイコロカットの方は…
…(≧~≦*)!
これも美味い!
噛み締めると肉の内側から大量の脂がじゅわっと溢れ出して口のなかが大変なことに。
元々の身の味は割と控えめの方なので、こうやって開き直って脂そのものを楽しむ食べ方は大いにありだ。
脂が強いのでわさびが効かず、ゆず胡椒にご登場願った。
大変美味しゅうござんした!
味:★★★★☆
価格:★★★★☆
★あぶらぼうず(アブラボウズ、油坊主、おしつけ)◆約240グラム◆鍋用切り身◆1.5〜2人前★【RCP】【P20Feb16】 | ||||
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