野食材というのはときに予想以上に手に入ることがあり、帰りの道中に知人各位に適宜おすそ分けすることがしばし行われます。
このとき、近代的な価値交換方法(金銭の授受)を使用すると「こいつ、プロの漁師(猟師)でもないのに……」という遺恨が当然発生するので、基本的には「あげる」か「物々交換」が理想的です。
(親族間であれば法律にもたぶん触れないし、アリかと思います。茸本は中学時代、玄海島へのフェリー代を、島で釣ったカワハギを親に売りつけることで賄っていました)
で、先日の焼津・長兼丸での漁のお手伝いの際には予想以上の外道が手に入りまして、いくつかを我らがななしカフェさまに押し付けおすそ分けしていきました。
ななしカフェに立ち寄り、深海魚を烏骨鶏の卵にロンダリングした pic.twitter.com/aEH4boG8xq
— 茸本朗(野食ハンマープライス) (@tetsuto_w) 2018年2月10日
その結果、オーナーMさんよりウコッケイの卵を物々交換でいただくことができ、さらに「ここにある干物、好きなだけ持って行ってください」と自家製干物バイキングまでやらせていただきました。本当に助かります。
冬のボラをなめてはいけない
で、その時いただいたものにこの
ボラがあります。
Mさんいわく「半身は刺身で食べたけど、あまりに美味しかったのでもう半身を干した」とのことで、確かに
ちょっと見たことないレベルで内臓脂肪がこびりついてました。
人間だったら一発アウト、メタボ検診再検査確実です。
これが美味しくないわけがない。
ボラは今でも東南アジアでは重要食用魚ですが、日本ではあまり顧みられない魚になってしまっています。
でも近代まではわが国でも養殖がされるほど人気があり、いまでも出世魚の代表格として認識されています。(いなせなやつ とか とどのつまり みたいに言葉として残っているほど)
いまでも美味しいものは本当に美味しいです。
とくに、真冬に獲れるボラ「寒ボラ」はとても美味しく、これを食べればかつて日本でも人気の養殖魚であった事実が認識できると思います。
魚の中には、目のところに脂瞼(しけん)と呼ばれる透明な膜を持っているものがあるのですが、寒ボラは脂がのりすぎた結果、この脂瞼まで脂が回り、白濁し、視力が落ちます。もはや意味が分からない。
まあ、大型のボラは天敵がサメ・クジラ類くらいしかいないし、餌も海底にいくらでもあるので、ちょっとくらい視界がぼんやりしていてもやっていけるんだろうけど……
ということで、冬に目のところが白く濁ってるボラを見つけたら絶対に買いです。
産地は気にするな、臭くても皮を引けば何とかなる。
ボラの炊き込みご飯をやってみた
今回いただいたボラは「尾かしらと鱗つきの丸干し」という漢気スタイルだったので、まず皮を引っぺがします。
脂が酸化しているところは残念ですが捨てましょう。こんだけ脂乗ってたらしょうがない。
見てくれこの皮下脂肪。
ボラの皮下脂肪は融点が低いのか、手の温度でトロットロの液状になります。
見てるだけで体重が増えそうだ……
ちなみにボラの脂肪におけるワックス分は卵巣(からすみ)以外はほとんど含まれないそうなので安心してください。ケツからは、出ない。
グリルで焼いて、味見。
……(`・~・´)フムフム
まるでサワラのごとく脂がのっていますが、青魚であるサワラと異なり、筋肉にサシ込むような脂肪はあまりないようです。
結果として、焼くと脂と筋肉が分離し、硬く焼き締まってジューシーさは失われてしまう。
でも、この締まった身を噛んでいると、非常に強い旨味があることに気づきます。
やや大きい血合いと合わさると、まるで旬の下りガツオや11月のとろマルソウダを彷彿とさせるような酸味とうまみのハーモニー。
この旨味を何とかして活かしたい。
考えた結果、炊き込みご飯にしてみることに。
炊飯器に米と昆布、焼いたボラを入れ、味付けは醤油のみ。
……(≧~≦)
めっちゃ美味いがなこれ……!
鯛めし的なものができるかなと思っていましたが、より野性的で、かつカツオ出汁的な旨味が感じられる、全く別の物ができました。
脂肪が米に絡んでコクを与えているのも高ポイント。
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
ボラ、こんなに旨味出るんだなぁ……驚き。
これ、カツオやサバ、アジみたいに「ボラ節」みたいなの作ったらすごい使えると思うんだけど、どうだろう。
でも、節に向くような脂の少ない夏ボラは臭みが出て難しいのかなぁ……
自作して試してみるしかないか。。
コメント
釣ったボラを食べてみて結構うまい事に気付きインターネットを徘徊してて辿り着きました。ボラ節いいですね。楽しみにしてます。