先日のキス釣りの外道でかかってきたドチザメ。
記事のコメント欄で「ブログでは取り上げない」と申し上げたが、スマン、ありゃウソだった。
実は釣った瞬間から試してみようと思っていたことがあったのだが、うまく行くかわからず、公表を控えていたのだ。
それは「熟成サメの刺身」だ。
サメはアンモニア臭がする方が美味い!?
広島県から山口県の山間部にかけて、サメが好んで食べられることはよく知られている。
当地では「わに」と呼ばれており、わに料理は名物のひとつだそうだ。
サメをはじめとした軟骨魚類は、体液の浸透圧の調整に体内の尿素を利用しており、死ぬとこれがアンモニアに代わるため、鮮度が落ちると食べられないとされている。
しかしアンモニアのおかげで細菌類の発生が抑えられ、腐敗のスピードは遅くなる。
このため、冷蔵技術の発達していない時代には、山間部で食べられる唯一の海の幸だったこともあり、その名残が「わに料理」なのだ。
そのほか、世界で2番目に臭いことで有名な料理「ホンオフェ」もエイのアンモニアを利用した料理であり、アイスランドにも「ハウカットル」という同様の料理があるなど、意外に軟骨魚類のアンモニアは有効活用されていることがわかる。
平林さんによると、山口県の一部では「サメはアンモニア臭が強いほど美味い」という価値観すらあるそうだ。
しかもそれを刺身でも食べるとのこと。
これまで僕は釣り人の特権、あるいは腕利きの仲買さんによりしっかりと締められたような鮮度抜群のものだけを食べ「軟骨魚類は美味い」と抜かしてきたが、アンモニア臭を味わわずして軟骨魚をマスターしたとは言えないのかもしれない。
反省し、トライしてみないといけないな、と思ったのだ。
冷蔵庫で2週間放置したサメを食べてみた
ドチザメは持ち帰ってすぐに背開きにして中骨を落とし、内臓をきれいに取り去って再び閉じ、ラップにくるんで冷蔵庫の野菜室に入れておいた。
ホンオフェやハウカットルは常温で熟成するのが基本らしいのだが、韓国やアイスランドの「常温」と日本の夏の常温は全く別のものと考え、熟考の末(ヒヨったともいう)野菜室での熟成にした。
その代わり、期間は2週間ほどと長めにとった。
熟成がすんだと思しきドチザメを冷蔵庫から取り出す。
身の質は変わっておらず、むしろ光沢が少し増しているような……
一方でラップを開いた途端に純粋なアンモニア臭が鼻を付き、ちょっと目にもキた。
半身ずつにして、皮を引き、刺身に。
まるで新鮮なミノカサゴのように透明感と光沢があり、ぷりぷりしている。
醤油をつけて
いただきマース
……∑(・~・)
えっなにこれフツーに美味いじゃん!
新鮮なサメの刺身は、クニュクニュとした歯ごたえがある一方で旨味は少なく、酢味噌やたれなどで味を補ってあげることが多い。
しかしこの熟成サメはぷりぷりとした食感にサクサクとした歯ごたえがあり、そして旨味のようなものが感じられる。
匂いは確かにかなり強いが、純粋なアンモニア臭というのは程度が過ぎない限りけっこう食べられるものだ。
ブルーチーズや熟成したウォッシュチーズが大丈夫な人なら全然気にならないだろう。
醤油をつけないで食べてみると、アンモニア塩に由来するのか、塩味のようなものが感じられる。
アンモニアの刺激が直撃するためあまりいい食べ方ではないが、腐敗してないんだなという謎の安心感がもたらされる。
この塩味があるので、普通の醤油よりは九州の甘い醤油の方がよくマッチするような気がする。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
今回は小さな個体だったのでアンモニアの生成量が少なく、食べやすかったのではないかという仮説も残った。
もしメーター近いような大きな個体が釣れたら、またトライしてみよう。
その時は真の「常温保存」も……
コメント
山口の中部(天神様の祀られてる所らへん)に住んでますが初めて聞きましたw
山間部の方に伝わっているんでしょうか?
そのように聞きましたが…… 一度実際に現地を訪れて確かめてみたいですね。。
熟成してない方のサメは大好物で積極的に食べていますが(茨城県出身)
時間が経つと食えたもんじゃない、というのが幼少時からの擦り込みでした。
美味しいというなら是非試してみたいです…(ドキドキ)
モロザメとかでもいけますかね!
基本的に軟骨魚類ならどれでも似たようなものになるかとは思います。とはいえ、アンモニアの匂いがダメなヒトだと本当に卒倒すると思いますし、熟成の過程でヘンな菌が付く可能性もないとは言えないので、くれぐれも気をつけて……
モウカザメでもやれますかね?
やれないことは無いと思いますけど、なんとなくアンモニア臭いサメの方がやりやすいんではないかという気がします。。
初コメント失礼します。先日ホシザメを釣り上げたのですがとても美味しかったのでドチザメも味が似通っているのかと興味が湧きました。
はじめまして、コメントありがとうございます。
個人的な経験では、ホシザメよりドチザメの方がアンモニア臭が強いかなという印象があります。
ホシザメはオカッパリで釣れるサメの中ではかなり美味しい部類だと思います。もちろん、もっとも大事なのは鮮度ですが。。
納豆も数週間放置してアンモニアが臭うくらいがうまいですね。
ドチザメけっこう釣りしてると見かけるのでやってみようかと思います。
アンモニア臭い納豆は苦手ですが、アンモニア臭いチーズは大好物です。熟成しちゃったウォッシュタイプとか最高
ぐぬぬ…。
残った外道ズの中にめぼしいブツがないかと思って見てみたところ、いかにもサメ科の体型した奴がいて、「次はこいつだな!」とかドヤ顔で指摘してみたところ、「はっ。今更ドチザメなんて面白みのない奴取り上げるわけないだろ。このド素人が!(意訳)」とか全力で否定され経験不足を痛感していたところに…。
確かにドチザメはかなりありふれたサメで、普通に食べれるみたいですが。
ところでホンオフェといえば全羅南道の名産。全羅南道といえば韓国でも最南端(島嶼部除く)。野菜室で再現するには温暖な気候だと思うのですが。ということで残りがありましたらもっとハードなのを。「もやしもん」で「キャンプ地によくある古くて汚い男子専用小用ゾーンに落ちてたトイレットペーパーを夏の日に口に含んだ気分」と極めて詩的に表現されてたブツのように…
うん……実はそれちょっと気になってまして。野菜室2週間より常温2日とかの方がよかったかなぁ……
でもちょっとね、勇気がね。。
ホンオですが、単体で食べると特に味がないというか(ただアンモニアを感じる)
でも洪魚三合(ゆで豚・キムチ・ホンオ)で食べると不思議な美味しさが出てきます!