鯉のアスファルト臭にフレンチの手法で対抗してみた

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先日、資料用にコイこくを作る必要性が生じ、アメ横でコイを購入してきました。

サイズのわりに体高のある見事なコイで、サイズ的にもちょうどよく、味に期待しながら捌いていきます。



鱗をつけたままぶつ切りにして胆嚢を除去し、


熱湯を回しかけて臭みとぬめりをとり、


水と日本酒でグツグツと煮込んでいきます。
日本酒の成分が魚の臭みを消し、アクと結合して浮き上がる脂を丁寧に掬いとることで臭み対策は万全。
あとは柔らかくなるまで煮込んでいけばいいのですが……
ふと違和感を感じ、煮汁を味見してみます。

すぐさま口中に広がる工事現場の香り。
あかん、これゲオスミン鯉や……!

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ゲオスミンをバーニングしたい

ゲオスミンとは野食家の最大の敵のひとつで、川魚の悪臭の原因物質となるものです。これに汚染されると、内臓や血合いを中心に強いアスファルト臭を帯びます。
変質しづらく、揮発もさせにくい成分で、揚げを含むあらゆる調理法をもってしても退治できない存在。

ぼくは以前、全身にゲオスミンの円を纏ったアメリカナマズと対峙し死闘を繰り広げたことがあります。世に言う「茸本野食迷勝負数え歌七番」のひとつですね。

霞ヶ浦大鯰奮闘記その2
アメリカナマズは霞ヶ浦ならどこでも釣れる、と聞いていたのだが、この時期はまだ寒く水深の浅いところではアタリすらなかった。(行方方面) 雨も降りだす中、いつまでも望みのないところで粘ったってしょうがないので、土浦の上州屋に寄って釣れるところ...

アメ横の水産物は基本的に国内で仕入れているはずですが、おそらくゲオスミンに汚染された水域で育った鯉を仕入れてしまったのでしょう。
商品のあたり外れも、この乱雑な市場の魅力と言えばそうなのですが、さすがにゲオスミンはしんどい。


やむを得ず、ゲオスミン以外の臭み物質だけでもできるだけ取り除こうと、日本酒をどぼどぼ加えて煮込んでいくことに。
すると次の瞬間、鍋の上に真っ赤な炎が立ち上りました!

一瞬、鯉の脂が炎上したのかと思いましたが、すぐに「あ、アルコールか」と思い当たりました。
揮発したアルコールに引火したのです。

調理中にアルコールを炎上させて食材に香りをつけるのは「フランベ」と呼ばれるフレンチの一般的な手法です。
通常、日本酒程度のアルコール度数ではすぐに揮発してしまい引火まで至らないことが多いのですが、今回は4合近い量の日本酒を用いたので揮発するアルコール量も多く、炎上まで至ったようです。


和食であるコイこくにおいてフランベの必要はなく、というか炎に火災報知器が反応すると厄介なのですぐに消化しようとふたを手に取ったのですが……
ふと「あ、もしかしてこれゲオスミンなんとかできるんじゃね?」と思ったので、そのままにしてみました。

というのが、ゲオスミンは200℃を越える高温であれば分解させることができるのです。通常の調理法では仮に揚げ物であろうと200℃を超えることはなく、したがってゲオスミンを除去することはできないのですが、フランベならばワンチャンいけるかもしれません。


ということで、報知器を袋で隠し、周囲に延焼しないよう十分に注意しながら、自然に鎮火するまで放置します。
徐々に火勢を弱めながら3分ほど燃え続けました。


味噌とみりんを加えて煮込み、汁気が半分になったところで完成とします。

さて、食べられるレベルになっているでしょうか……

いただきまーす

…(;´д`)あーうーん、ギリギリセーフ、かな…
筋肉内部や内臓のアスファルト臭までは消せていないけど、表面や煮汁のそれは明らかに消えています!

ゲオスミン臭さえしなければ、コイは本当に美味しい魚なんですよね……

味:★★☆☆☆
価格:★★☆☆☆


今後はゲオスミン鯉はミンチにして蒸留酒を練り込み、さんざんバーニングしてから食べようと思います。

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魚介その1(魚系)
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野食ハンマープライス

コメント

  1. flayer より:

    フライパンで浅く広く豪快にファイアーしたならともかく、目標200℃↑となると今回は見る限り全体の量に対して発火してる面積(フランベの熱量)が明らかに力不足だと思うので熱による分解では無いのではないかな~?と思います(元底辺理系並感)。
    ゲオスミンちゃん扱った事が無いので難ですが、奴もアルコールですし過去記事のある程度揮発しやすいという情報も鑑みるに、今回の条件で考えるならエタノールに溶出したゲオスミンがフランベによって効率的に揮発した という感じではないかと。

    その仮説で行くと
    ①ミンチをスピリッツにある程度漬け込んで十分ゲオを出させる
    ②アツアツのフライパンに流し込んで一気にファイアー
    で分解も含めてかなり退治できそうな気がします。
    ミンチにしてるというのもあり、そのまま炒り煮にしてふな飯風にしたら沼臭さも倒せてかなり戦えるんじゃないでしょうか。

  2. Quadra より:

    長野県民です。 鯉は…2ヶ月に1度くらい、地元の川魚屋で鯉の輪切りを購入して
    鯉こくにしたり甘露煮にしたりして食しておりますが「溝臭」がするものは知りません。
    まあ、飼育元(長野県佐久地方と思われ)から店に来て、数日~畜養されて(比較的冷水で。畜養と書きましたが・エサはあげません)
    で。店頭で輪切りにされたモノを貰ってきてやっつけるのですが。
        臭うのは鯉の出身地の問題でせうか?

    御存知とは思いますが長野県内のスーパーでは、ほとんどの店舗で
    鯉の輪切り(生)が通年販売されております
    生だと一切れ200円前後、甘露煮になっていると一切れ400円前後…くらいでしょうかね

    これからも鯉の話題をよろしくお願いいたします(笑

  3. ただの通りすがり より:

    世界最強の蒸留酒、スピリタスでも、難しいんだろうか。

  4. 食欲大学生 より:

    逆に酒に浸けたら消えるのか?
    ヤバそうなボラとかでやってみてほしいところ
    というかボラほしいな そこらへんのやつでも食えるのかな

  5.    より:

    スピリタスでフランベは、危ないからやめたほうがいいです。
    でも度数を上げるとか、
    ワインなど風味のある酒でフランベする、とかは漬け込むの次にやってみてもいいかも。

  6. Yulli より:

    酸性条件で鯉のゲオスミン臭は中和されるので、レモンやすだち汁やお酢をお試しください。
    イラクでは柑橘やハーブを身に刷り込んだ、マスグーフなる塩焼きも有るのだとか。

    • 茸本 朗 より:

      酢についてはかなり試してみたのですが、消しきるには至りませんでした。きっと程度の問題もあると思いますが……
      イラクでも鯉を食べるのですね! 調べてみたいと思います。

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