先日の「野食のハナシ」にてご提供した「野食闇鍋」では、当たりクジと称してオオヘビガイ(4等相当)やオニヤドカリ(3等相当)、ショウジンガニ(2等相当)などを入れていました。
そしてその中で、栄えある1等は何だったかというと
うつぼのやつ、すごくおいしかった、旨味がすごくて遺伝子に直接語りかけてくるような味。さすが海のものの味は強いですな。タカラガイも入っててやったぁ! pic.twitter.com/45E2t8emlS
— さかもツインねね (@sakamotwin) January 6, 2018
タカラガイ。
ハナマルユキ(ダカラ)とメダカラガイの2種類がひとつずつ入っており、幸運にも当たった方からご連絡をいただきました。
おふたりに今年一年、格別の幸運が訪れることを祈ってやみません。
このハナマルユキですが、実は2個獲れていました。
図鑑によると棲息域は房総半島以南となっているこの貝、関東地方で生きたものが採れることは結構レアな出来事です。
そのまま2つとも闇鍋に入れるつもりだったのですが、誘惑に負けてひとつは自分で食べてみることにしました。
タカラガイのジレンマ
さて、タカラガイはいずれも美しく、この美しさから世界各地で貨幣として用いられてきたという歴史があります。
なので「宝貝」なわけですが(パオペェではない)、その一方で身も非常に美味しいという特長を持っています。
とくにこのハナマルユキは南日本に行くとそれなりに数が採れるということもあり、食用としても比較的ポピュラーな種。
ただし、タカラガイの構造を見ていただくとお分かりのとおり、殻の入り口がスリット状になっていて極めて小さいために、身を取り出すのが難しい。
というか、割らないときれいに取り出すことができません。
彼らはこう見えて巻貝なので、この中もしっかりとらせん構造になっていて、引っ張ってもうまく抜けてくれないのです。
ハナマルユキの殻の模様は、青みがかった黒の地に星がちりばめられ、まるでプラネタリウムのような……いや先般の流行りで申し上げればまるで曜変天目がごとき美しさ。
数あるタカラガイの殻の中でもトップクラスの美しさではないでしょうか。
さらに、生きているタカラガイの殻はビーチコーミングで拾えるそれとは、光沢も透明感も比べ物になりません。
こんなにきれいな貝なのに、割らないと取り出せないなんて……
理解はしていても、実際に手に取ると逡巡してしまうもの。
それでも、ワイは、食うんだ……野食クラスタだから……(泣)
ちなみに殻のコレクターはどうしているのかというと、地面に埋めるなり放置するなりして中身を腐らせ、殻を割らずに取り出しているそう。
このあたり、ホラガイと共通するところがありますね。
ハナマルユキを酒蒸しにして食べてみた
ハナマルユキは産地では醤油で煮られるのが一般的とのこと。
でも今回は、本来の味を見てみたいので
酒蒸しにしてみました。
10分ほど蒸しても見た目には何も変わらないけど、さすがに火は通ったでしょう。
食べるにあたり、以前メダカラガイを食べたときはハンマーでガツンと行きましたが、調べてみるともっとスマートな割り方があるとのこと。
やってみましょう。
まず、スリットに平べったいものを差し込みます。
一般的にはマイナスドライバーでやるらしいけど、手元になかったのでバターナイフを刺してみました。
そのまま、上か下にグイッと力を入れてあげると
パキッと2つに割れます。
おお、これは簡単……
そしてここで気づいたのが、殻内面の美しさ。
成層圏の空のような、あるいはよく晴れた日の太平洋のような力強い紺青色。
これが見られるなら、食べるために割るのもまた乙なものという気がしてきます。
身はこちら。
巻貝の中では歩留まりは悪くないほうに思えますね。
いただきマース
……(≧〰≦*)
うはっ、これは……!
筋肉部分はさほど大きくないですが、サザエのような硬く締まる系ではなく、メガイアワビやトコブシのような柔らかさがあります。
その分肝が大きく、ここに強いコクとアワビの肝を彷彿とさせる旨味があり、非常に美味しい。
やや強めの磯の香りがありますが、臭みは皆無です。
肝・身ともに味の良さは貝類トップクラスといってもいいかもしれません。
一番近いのはマガキガイだけど、採ってすぐ食べても砂をかんでいないのがとてもありがたい。
味:★4.5
価格:★★★★☆
夜行性なのか、夜に見つかることが多いタカラガイですが、本来深いところに棲む貝なのか潮が大きく引くときしか見ることができません。
つまり関東における採取適期は今! 夜間に潮が大きく引くこの時期です。
こっちで購入するのは非常に難しいと思うので(伊豆諸島に行けば買えるらしいけど)気になる人はぜひ探してみてね。
ぼくも新たなポイント開拓してみようかな……
コメント
先週末に沖縄に行った時、潮間帯で見つけたハナマルユキを記載の方法で割って食べようとするも、中途半端に割れた挙句身を取り出せず泣く泣く放棄orz
和歌山以南では、ヤクシマダカラというそこそこ大型のタカラガイが多産します。こちらはより食べ応えがありそうですね!
タカラガイコレクターとして、いつか野食会にタカラガイの生をたくさん持ち込んでみたいです…!