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1/25 12:00~ 福岡市 樋井川テラスにて開催
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先日釣れた深海ザメは、いずれも肝臓が大きくなるタイプでした。
通常サメ類は鰾の代わりに、筋肉中の尿素で浮力を調整する(死ぬと菌の働きで尿素がアンモニアに変化するので、鮮度の悪いサメはアンモニア臭くなる)のですが、深海性のサメはそれだけでなく、肝臓に脂を貯めてそれも浮力調整に用いると考えられています。
そのため多くの深海ザメは肝臓がとても大きく、そしてまるでフォアグラみたいに肥大しています。そこに溜め込まれる脂こそがいわゆる「肝油」です。
そして、それを用いたものが「肝油ドロップ」、各種脂溶性ビタミンが豊富で、栄養補助食品としてあまりにも有名なものですね。
ぼくらよりちょっと上の世代の皆さまは「肝油ドロップ」が学校で配られていたとうかがったことがあります。ぼくらの頃はもう児童の栄養状態が良くなっているからか、肝油ドロップを食べる機会は減ってしまいましたが、フワッと甘くてたまーに食べたくなるものでした。
ちなみに現在では天然肝油ではなく、各種ビタミンを組み合わせて合成した合成肝油(的なもの)を使っているそうです。いまは子どもたちよりもむしろ、貧しい食生活を送る大人たちに必要なものと言えるかもしれません。
話を戻しまして、今回釣れたフトツノザメ、エドアブラザメの肝臓はとても大きく大量の肝油が詰まっています。
フライパンで煎ってみると、ものの15分程度でこのように
溢れ出しました。
これで肝油ドロップ作れないかな……
肝油ドロップ自作にトライしてみた
食べたことがない人のために説明すると、肝油ドロップは「ドロップ」とついてはいるものの飴ではなく、ゼラチン的なもので固められたゲル状の粒です。
なので甘くした肝油をゼラチン、もしくは同様の性質をもつ物質で固めることができればオーケーだと思うのですが、ご存知の通りゼラチン、アガー、寒天などは親水性なので油を固めることはできません。
ゼラチンで作ったカプセルで肝油を包む……というのも考えてみましたが、肝油ドロップはそんなウィスキーボンボン的なものではないのです。
うーむ、どうしようか……
…
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_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ `´ \
(‘A`)
ノヽノヽ
くく
テッテレテッテッテーテテー! だいずれしちんー!
レシチンはたんぱく質の一種で、油にも水にも溶けやすいという界面活性作用を持ちます。これを使うと様々な脂を乳化することができるわけですが、その状態であればゼラチンで固められるかもしれません。
ということで温めた肝油にレシチンを溶かし、
お湯に粉ゼラチンを溶いたものを混和、よく撹拌します。
これを冷やして固めるのですが……本当に固まるか不安があるので、ウィスキーボンボンスタイルもやってみることにします。
グラニュー糖を薄く広げた皿の上に、先程の溶液を数滴たらし、
丸めて整形し、冷蔵庫で固めます。
それぞれを冷蔵庫にしまい、冷えた頃合いで確認します。
まずはそのまま冷やしたものから……
多少、油が上層に浮いてしまいましたが、固まっている部分もあるようです。
取り出して食べてみます。
……(´×益×`)くっさ
ダメですねこれは……味こそとくにしつこさのないゼリーですが、香りが完全に煮物にしたスルメイカの内臓で、砂糖味との相性は激悪です。
ボンボンスタイルのほうは……
……いやー、これもダメですねぇ。イカ内臓の香りがする糖衣ゼリー。
考えたら肝油ドロップ、バナナとかストロベリーとかの香りついてるもんね。香料で上書きしないと食べられないのかも……
味:★☆☆☆☆
価格:★★☆☆☆
ふつうに醤油とみりんで甘辛味にして煮こごりみたいに固めた方がよかった。
ってかそれならもう肝をそのまま甘辛く煮て食べる方がずっといいですね。『日本酒にぴったり、大人の肝油ドロップ!』とかいってね……うん……
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コメント
我々が肝油ドロップ配られた最後の世代になると思うのですが、さらにその前の世代は液状の肝油を飲まされたらしく、とんでもなく臭かったとのこと。ですから、あの肝油ドロップは子供に抵抗なく飲ませるために叡智を振り絞って作られたものらしいです。特許でも調べるとなんかヒントがあるかも(笑)
こんばんは。
自作してしまうなんて、素晴らしいですね。自分も、本物の肝油ならば、甘い肝油だけでなく、味噌や醤油は良いのではないかなーと思ったりします。
…とは言え、歯磨きのフレーバーでさえあまり進化していないので、冒険しすぎてもリピートされないので、商品としてみたら、ダメなのでしょうね。
楽しい記事を、ありがとうございました。