魚の刺毒は怖い。
それは命の危機があるからではない。
見た目や存在感に比べて「意外なほど」強い毒だからだ。
身近な毒魚であるゴンズイやハオコゼにしても、あんなに小さくて地味で、ふつうに暮らしていれば哺乳類に対する毒など持つ必要もなさそうな魚なのに、刺されると飛び上がるほど痛くなる。
アナフィラキシーショックで死ぬこともあるらしい。
こちらの油断を見抜き、その毒棘を以て戒めを与える刺毒魚に、昔から不思議なほどに惹かれてきた。
刺毒を味わってみたい
さて、刺毒魚の毒は大抵がタンパク質であり、加熱することで毒性を失うとされる。
しかし本当にそうなのか?
例えばフグのひれ酒は、鰭の表皮に含まれる僅かなテトロドトキシンが作用するため、普通の燗酒と比べてもポカポカ温まるという話を聞いたことがある。
もしかすると刺毒魚の鰭で作ったひれ酒でも、ふつうの魚の鰭で作ったひれ酒より温かくなれるのではないか?
酒が飲みたいだけなのでは?というツッコミは一笑に付します。
比較してみた
と言うことで、毒のないふつうの鰭と毒のある鰭でそれぞれひれ酒を作り、比べてみることにした。
ふつうの方は、フグのひれ酒と同じ味になると言われているカワハギ…が手に入らなかったので、
ウマズラハギで。
そして毒鰭は、先日僕の指を貫き、毒性については痛いほどに確認できた
ミノカサゴの鰭を利用。
パリッパリになるまで干しあげたこれらの鰭を、網で軽く焦げるまで焼き、熱燗にした日本酒に漬けてしばしば待つ。
毒、関係あるかなぁ…?
まずはウマズラハギから。
肉厚でしっかりしていて、出汁が出そうな雰囲気がぷんぷんしている。
色こそあまりでないが、香りはフグのひれ酒と比べてもなにも変わらない。
飲んでみると、旨み成分が濃く、ゼラチンのようなとろみも感じられて大変結構なお味に。
こんなに美味いなら、危ない思いしてフグの鰭を手に入れる必要はないなぁ…
飲んだ後はポカポカとしているが、ただの熱燗を飲んだときも同じようにポカポカしていたと思うので、特別なものではないと思われる。
味:★★★★☆
価格:★★☆☆☆
翌日はミノカサゴ。
ウマズラハギと比べると薄くて頼りない感じがするが…
意外にもしっかりとした風味が出て、香りも強い。
ただ、美味しいかと言われると…
ウマズラハギは焦げるまで焼いても焦げ臭さは出ず、ウイスキーの樽香のような上品な風味がプラスされたが、ミノカサゴではサンマの焦げた皮を食べた時のように、苦みの後に僅かな生臭みを感じた。
おそらく鰭が薄いので、しっかりと焦げ目をつけるまで焼くことができず、生臭みが残ってしまったのではないだろうか。
旨味は同様に出ているのだろうけど、全体としてはあまりできは良くない。
飲んだ後も、ポカポカするどころか逆に寒くなった(臭くてあまり飲めなかったので)ぐらいでこちらも期待外れ。
味:★☆☆☆☆
価格:★★☆☆☆
刺毒を持ってるフグとかカワハギとかいないかしら
というわけで刺毒の有無とは別のところで比較することになってしまい、あまり満足のいく結果にはならなかった。
肉厚でしっかりとした毒鰭を持つ魚がいればいいけど、それでもフグ目のひれ酒にかなうやつらは居るかなぁ…
そういえば、ハコフグが皮膚から分泌する毒「パフトキシン」って、人体に影響はないって聞いたけど、ひれ酒にしてもいいものか…
いや、それ以前に奴らの粘液、とんでもなく生臭いから駄目だな…
コメント
鰭酒に拘らず、ハオコゼなら骨酒にしてしまえば旨いんでないかな。
昔タモリ倶楽部で鰭酒選手権だかなんかやってましたよね。
ヒザラガイやアメフラシで当たるのはめんどくさいですね。
アメフラシはたいしてうまくもないからどうでもいいか。
でも機会あったらあの卵は楽しい食感だから是非食べてみてほしい。
自己責任ですがw
せつなさま
骨酒は絶対にうまいと思います。ハオコゼなんてサイズ的にもちょうどいいですよね。今回は鰭だけ何となく保存してたんでやってみました。
ウミソウメンは一度試してみたいですけど、ホントに怖いですw死んじゃうんじゃないかと思います。
隠岐のアメフラシは毒がないなんて言いますよね。ウミソウメンも大丈夫なのかな?