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茸本朗の真・野食堂Zチャンネル更新中!
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多彩なゲストと変なものを捕まえたり、ヘンなものを食べたり食べさせたりしながら楽しくやっていく予定です。
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先日金魚を食べた記事をアップした際、ぼくは「フナが美味しいことは知られているのだから、その改良種である金魚が美味くないわけがない」という論法で美味しさを説明しようとしたのですが、皆様のリアクションを拝見する限り、これは全くのミスだった様です。
読者の皆様曰く「ありゃあペットだ」「池にいるのを見たことがある」「食べられるとは聞いたことあるけど、臭いゲテモノなんでしょ?(鮒ずしからの連想っぽい)」etc…
ちなみに先日お世話になった釣りビジョンのディレクターさん(専門はヘラブナ釣り)も「フナって食べられるんですか!?」という反応をされていました。
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ここでいったんCM。
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コイですら「食べたことあります、美味しいですよね」「うちの地域では食べてましたよ」という反応もあったのに、フナに関してはほとんどない! 日本の淡水魚釣り2大ターゲットであるフナとコイですが、食材としての知名度には天と地ほどの差があるといってもいいでしょう。
しかしね、味としては申し訳ないけど、それこそフナとコイには天地の差がある。別にコイがまずいというわけではないですよ、そうじゃなくて、フナが美味しすぎるんです。
フナの美味しさは全魚の中でもトップクラスのものと思っておりまして、よいフナが手に入るなら遠征をする価値は十二分にあります。
「うまいったってどうせ珍味としてでしょ、つくだ煮とか」ですって!? ノンノン、最高のフナはね、そんな食べ方したらもったいない。
最高のフナの美味しい料理法は、お刺身なんですよ。
刺身用のフナは「汽水域」で採れる
フナを刺身になんて! と驚く人も多いと思いますが、その話をする前に「美味しいフナの条件」という話をさせてください。
最高のフナとはなんぞや、という話は人により無限の定義があると思いますが、ここでいうそれは「臭みがなく、脂がのっていて美味しい寒のギンブナ」を指します。
ギンブナはマブナとも呼ばれ、フナ類のもっともオーソドックスな種です。日本中の河川や湖、池沼に生息していますが、他の淡水魚の例にもれず、フナも生息地によってその味の良さが大きく変わります。
しかし、例えばアユやコイであれば、水質の良い場所で採れたものが美味しいのですが、ギンブナの場合は面白いことに川の河口や海につながる湖といった「汽水域」で採れたものが美味しいという特徴があります。もとよりあまりきれいな水ではなく多少濁りがある富栄養な水域を好む魚であるフナですが、汽水域はエサとなるプランクトンが豊富なので彼らにはよい環境なのでしょう。なおかつ多少の塩分を含んでいる汽水には、淡水に生息するゲオスミン生成菌が棲息しづらいために「泥臭さ」が発生しないというメリットもあります。
過去に三重県松阪、千葉県市川などの汽水域で釣ったものを食べたことがありますが、いずれも大きくてよく太り美味でした。特に後者は江戸川なんですが、臭みもほとんどなく美味しかった記憶があります。
こういうところのフナを刺身にすると、海の魚をもしのぐほどの美味しさがあります。独特のぷりぷりしこしこした食感の肉を噛み締めると、脂の甘みがぶわっと広がるあの味は、他に似たものがほとんどありません。冬のアイゴやニザダイから磯臭さを取り去ったらちょっと近くなるかな……
コイ目の魚って実は脂がめちゃくちゃ旨くて、しかも生じゃないとその真価があまりわかりません。だからコイも一番人気があるのは洗いだし、ハクレンなんかも千葉の水郷地区では洗いにします。
フナを刺身に、と聞くと「寄生虫やばそうじゃん」と思う方もいると思いますが、汽水域のフナやコイは純淡水域の寄生虫である顎口虫等の感染率が低いという仮説があります。実際に、フナを生食する地域でも、これらの寄生虫による感染症の発症率が優位に高いといったようなデータはないようです。
まあアニサキスよりは危険性が低いと考えてもよいのではないでしょうか。
しかし、そんな「汽水域のフナ」の中にも、さらに細かい味の格差が存在する、とのこと。フナが美味しいということすら初耳という人には「マジでどうでもいい」情報かもしれないですが、ここでこだわるのが我々のアイデンティティなのでお付き合いください。
「最も美味しいギンブナ」が採れるのはどこか。
先日金魚を分けてくださったふな先生によると「山陰地方の汽水域で採れるもの」が別格の美味しさを持っているのだそうです。その味のよさゆえに「もしかしたら普通のギンブナとは別の、地域性の亜種の一つかもしれない」ともささやかれるほどで、当地では大変人気の高い魚となっているそう。
これらの条件を満たす産地の一つが、島根県にある日本有数の汽水湖、宍道湖。
「宍道湖七珍」と呼ばれる魚介類が有名ですが、フナも盛んに漁獲されています。
宍道湖のフナは特に出雲平野で高い人気があり、旬の時期の刺身は取り合いになるほど人気が高いのだそうです。
これらの場所で採れたものを活けのまま刺身にすれば、それこそタイやヒラメもかすむほどの美味しさが味わえるといいます。なにそれ絶対食べたいやん……
ということでそれを味わうべく山陰に足を運ぶ計画を立てていたのですが、コロナのこともあり断念。
しかしそんなタイミングで、おなじみひろいぐい太郎さんから「宍道湖産の活けのフナを三枚おろしにして真空パックして送りました、よろしければ」とのありがたいご連絡がありました。いつもいつも本当にありがとうございます。
というわけで、柳刃包丁を片手に到着を待ったというわけです。
宍道湖のフナ刺身&子まぶりを食べてみた
翌日、届いたのがこちら。
美味しそうな半身ですね! 血合いがややボラのような色合いをしているものの、全体的にはタイみたいな見た目です。
皮下脂肪がべっとりと貼りついていてとても美味しそう。
フナの背身にはコイ目に共通する細かい骨がたくさん入っており、これが舌に触らないように薄く切るのが決まりとのこと。
捌いて即真空パッキングしてくれたようで、鮮度はバッチバチによさそうです。スライスしても角がぴんと立っています。
別枠でメスのフナのアラも入れてくれていました。
これには当然卵も入っているので
濃い目の塩水で茹でて水を切ってほぐしておきます。
切り身を半分ずつに分けて、半分はそのまま
もう半分は茹でた卵を絡めて
完成!
宍道湖産寒ブナの刺身&子まぶりです。
「子まぶり」とは刺身に火を通した卵をまぶすというもので、フナの子まぶりは岡山などでよく作られています。
出雲地方名産? の甘い醤油をつけて、いただきまーす
……(≧∀≦)うまーい!!
身がぶりんぶりんで、かむとジャキジャキ言うほど。これはもちろん活きが良いということもありますが、それ以上に「ゼラチン質が豊富で弾力がある」というのが大きいと思います。
当地ではフナ刺しを作るとき、活けであることを何よりも尊重するといいますが、この弾力を全力で楽しむためでしょう。
一方で、あまりに活きの良すぎる状態の刺身はうま味があまり感じられないものですが、宍道湖のフナに関してはもともとうま味が強いためかこの時点でもかなり美味です。もちろん寝かせればより強くなるのでしょうが、そうするとこのブリンブリン食感が失われてしまうというジレンマ。。
甘い醤油にはアミノ酸がいっぱい添加されており、これも足りないうまみを補うという考え方に即したものでしょう(西日本は熟成していない刺身にうまみの強い醤油をつけて食べるのを好む傾向がある)。
卵には強いコクとうまみがあり、めちゃめちゃ美味しいですが、子まぶりとなるとちょっと味がくどいというか、せっかくのフナの身の美味しさがカバーされてしまっているような気がします。
卵だけ甘辛く煮てご飯に乗せて食べたほうがずっといいでしょう。質がいまいちなフナならこの食べ方もよいですが、宍道湖のフナでやるともったいないよなー。
淡水魚のにおいが何よりも苦手なうちの連れも、このフナ刺しは旨い旨いと食べていました。確かにこの刺身を食べてまずいという人はいないと思うし、なんならフナと当てられる人もほとんどいないと思います。山陰でも「あらゆる魚の中で一番美味しいのはフナ」という人も少なくないといい、これを食べずして淡水魚好きだの嫌いだのという権利はないような気がしました。
食べられてよかった、でもいつか自分で捕獲してその場でさばいて食ってみたいな。
味:★★★★★
入手難易度:★★★★☆ 山陰、遠い……
太郎さんありがとうございました!
コメント
昭和10年生まれの親父が新米の医師だった大昔の話ですが、エライ先生のお供で行った高級料亭でフナの刺身を供されたそうで、何も知らない親父は美味い美味いとバクバク食いまくったそうですが寄生虫リスクが怖いエライ先生は手も付けなかったとかw
私も食べた事はありますが、ウチの前のドブ川産だったせいか知識が邪魔したせいかw、特に美味かった印象はないです。汽水産ですか…ウナギの外道で釣れたら試してみまつw
*釣れた事ないけどw
そんなに美味しい魚が養殖されないとは勿体ない(´・ω・`)
いつも楽しく拝見させて頂いております。麻婆茄子が本来は魚香茄子と言われるのはご存知かと思います。この魚香の語源、幾つかの説があるのですが、魚香茄子の辛味付けに使う泡辣醤という調味料がありまして、唐辛子と各種スパイスを塩水に漬けて乳酸発酵させたものです。この塩水に鮒を一緒に漬け込んだのが由来という説があります。今までは何故鮒なのか疑問がありましたが、鮒が旨味が強い魚である、というこの記事で疑問が氷解しました。尚、近年は発酵の管理が大変なので、泡辣醤に鮒を入れないのが殆どだそうです。また、代わりに豆板醤で旨味を補う、或いは豆板醤のみで味付けするのが現在では主流です。