今年の初めにガガマムさんを囲んでプチ野食会をやったのですが、その時に参加者のTさんがシュールストレミングを持ってきてくれました。
「世界一臭い食べ物」として知られるシュールストレミングはスウェーデンの伝統料理で、塩水でニシンを漬け込み嫌気発酵させたもの。缶を開けたときの臭気だけで人を殺せそうな恐ろしい臭いを発し、汁が付いた服は核廃棄物レベルの厳重な処理が必要となります。
直接的な風味としては真夏に1週間放置した三角コーナーの玉ねぎ、硫黄系のおならのような悪臭です。塩気が強いのでかろうじて食べ物と認識できますが(味はアンチョビみたいでむしろ悪くない)しょっぱくなかったら地獄です。
あ、これは業務連絡なんですが、シュールストレミングの卵巣は食べないのが正解らしいです。みんなごめんな。。
んで、その時に余ったシュールストレミングを一きれ、こっそり持ち帰っていました。
こやつはジップロックを5重にしないと臭いを防ぎきれないという怪物で、持ち帰ってしばらくの間は冷蔵庫の奥にないないしていたのですが、先日覚悟を決めて封印を解きました。これをつかってやってみたい料理があったのです。
「世界で一番臭い料理」を、「世界で二番目に臭い料理の材料」で作ったらどうなるか
先日、Youtubeのロケで釣り上げた横浜産のアカエイ。
この度こちらのアカエイの身を使って、シュールストレミングを作ってみようと思いたったのです。
もちろんシュールストレミングはニシンを使って作るもの、エイや軟骨魚類で作るものではないということは理解していますが、あえて使ってみたくなりました。それはなぜか。
シュールストレミングに次ぎ、世界で二番目に臭い食材として知られるホンオフェという料理があります。韓国南部の伝統料理で、エイを常温で保存し、細菌の力で筋肉中の尿素をアンモニアへと変えたという料理です。
風味はアンモニアが完全に卓越し、男子便所の壁式小便器のにほひがします。口の中に長時間含んでいると、アンモニアで皮がむけることがあるともいい、食べ物というより兵器です。
エイやサメなど軟骨魚類は体内に多くの尿素を含んでおり、放置するだけでこのようにアンモニア臭たっぷりの料理になります。一方でシュールストレミングは嫌気発酵の力で素材をおなら臭い食べ物に変えます。
ということは、もし軟骨魚類の身を嫌気発酵させたら、アンモニア臭さとおなら臭さを両立させたハイブリッドでパワフルかつインクレディブルでスーパーな料理ができてしまうのではないか。。
そんな妄想を広げつつやっていこうという試みになっております。
ストレミングは「ニシン」という意味らしいので、この場合は「シュールストロァエ」ということになるのでしょうか。
とはいえ尿素をアンモニアに変える菌は高塩環境下では活発に活動できないという話もあり、成功できるかどうかは五分五分といったところでしょう。どんな結果となるでしょうか。やっていきましょう。
シュールストロァエを作ってみた
シュールストロァエの作り方はとても簡単です。まず瓶になみなみの食塩水を作り、その中にエイの切り身と
発酵スターターとしてシュールストレミングを一切れ入れます。
匂いが漏れないよう蓋をして(しかし完全に密封すると破裂するので注意)常温で放置します。これだけ。
今回は1月半ほど置きました。シュールストレミングは3か月ほど漬けるそうですが、日本の夏はスウェーデンよりはるかに気温が高いので、たぶんそれなりに発酵はなされているでしょう。
取り出して、観察します。
……うーん、見た目はなんか、壮絶。赤いな……
スターターとして入れていたシュールストレミングは発酵しきったためか崩壊しており、固形物はほぼエイだけの様です。
そして瓶を開けていないのにかなり臭い。方向性としては三角コーナー(三日目)ですね。
それではご本尊を取り出してみましょう。
オウッ!!
これは強い。コクがあるのにキレが良く、あごを的確に射貫くジャブをくらわされたような気分になります。思わずのけぞってしまうような強烈な悪臭。マジで臭っせぇ……
でも、うれしいことにちゃんと「シュールストレミングとホンオフェの臭い」がどっちもある! 漬け汁の塩分濃度を5%くらいとやや薄めにしておいたおかげか、アンモニア発酵もちゃんと起こってくれたみたいです。
出来上がったシュールストロァエの臭いを具体的に表現すると「町の公園にある壁式小便器のトイレでおしっこしてるときに横におっさんが来て盛大に屁をこきやがった」というものですね。それが目の前の魚の切り身からしてるわけです。
今ぼくの目には涙がちょっとにじんでいまして、これは発酵が成功した喜びの涙だと思うんですけど、物理的なものもあるような気がします。ってかアンモニアで目がいてぇ。
薄く切り、シュールストレミングの本場に倣ってマッシュポテトとスライス玉ねぎを添えて、クラッカーに乗せて食べてみます。
実は今日8月4日はぼくの誕生日なのですが、記念日にこんなことをやっているあたり、茸本もお笑い芸人色が強くなってきましたね。
賛否両論ありますがしばらくはこの路線でやっていく所存です。
いただきまーす
……ぐっ
ぐはぁぁぁあああ臭ぇええええええ!!!
……けど、やっぱり直接嗅いだ時よりはだいぶマシだな……おなら系の臭いが生玉ねぎの香りで上書きされるから食べやすくなるんだな。北欧の食の知恵って感じがします。なぜそこまでしておなら臭のするニシンを食べるのかわからないけど……
そしてアンモニア臭のほうは全く打ち消されてくれないのもつらいよね。玉ねぎ破れたりって感じだよね。。
ただ、そもそも味が「塩漬けの魚とマッシュポテトの乗ったクラッカー」なので結構美味しく、驚きました。ここにアクアヴィット(北欧の蒸留酒)を―20℃くらいに冷やしたものをくいっとあおったらかなりキマりそう。くさうまですね。
あと3か月ぐらい寝かせたらより洗練された味になりそう。期待大です。
味:★★★☆☆
価格:★★★★☆
というわけで「世界一臭い料理を創作する」という野望については今のところうまくいっている感じです。今もし誰かから怒られたりけなされたりしても「お前そんなこと言っていいのか、今おれんちには世界一臭い料理があるんだぞ」という響きだけで強くなれそうな気がしてます。
腐った魚を食べて迎えた35歳ですが、今年も一年頑張っていきたいなと思います。よろしければ応援いただけると嬉しいです。
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コメント
ご無沙汰いたしております。野人丸船長でございます。
その後なんのネタ提供もできずに申し訳ありません。
いやー、今回のネタはこれまでで1,2を争う面白さでした。
声を出して笑ってしまいました。
ありがとうございましたっ笑
ありがとうございます! いえいえそんな(;´∀`)大変お世話になりましたので
またコロナ落ち着いたらかまってやっていただけると嬉しいです!