外房・勝浦の朝市新鮮広場で見かけたツムブリを購入した。
持ち帰って計測すると87㎝、4㎏ちょいだった。
ブリやヒラマサではこのあたりのサイズが一番おいしいらしいので、期待が持てる。
ツムブリはブリとついているがブリの仲間ではなく、単独でツムブリ属を構成する。
ツムとは機織りや糸撚りで使われる紡錘型の糸巻のこと。
ツムブリ考察
実物を見るのは初めてだが、確かにブリやヒラマサとはかなり印象が異なる。
一言で言うとカッコいい。
背鰭基部を軸に線対称な紡錘形、後方に長く伸びる尾鰭、そして縦に走る水色のライン。
生きているときは黄色のラインも加わって、海中を疾走する姿から英語圏ではRainbow runnerと呼ばれるそうだ。
故・新幹線500系ともイメージが重なる。
ちなみにアジ科大型魚の英語名はだいたいカッコいい。
ブリ⇒Japanese amberjack(日本にいる琥珀色のアイツ)
ヒラマサ⇒Yellowtail amberjack(黄色い尾をした琥珀のヤツ)
カンパチ⇒Greater amberjack(デカい琥珀のニクイヤツ)
外見の良さ、英名のカッコよさに比べて、日本での呼ばれ方はしょっぱいと言わざるを得ない。
伊豆半島周辺ではブリの若魚イナダに対して「メナダ」(ボラ科のメナダとは別種)
南紀・尾鷲ではダンゴブリ
外房ではオキブリ
愛媛ではイダ。これはウグイと同じ地方名なので、もしかすると婚姻色で派手な色合いのウグイと、同じくデーハー(死語)なツムブリをダブらせたのかもしれない。
このあたり、外見と釣り味で魚の価値が決まるアメリカと食味、浜値で魚の価値が決まる日本の差が現れているのではないだろうか。
色々な文献を見ると、「ぱさぱさして美味しくない」「脂が無くてまずい」「小さいものは食べられない」などと否定的な評価が並ぶ。
そのせいで浜値も非常に安い。今回のものはなんとキロ250円の計算になる。
これでもし美味しかったら儲けものにもほどがある。
さっそく捌いてみよう。
ツムブリを捌いてみる
ブリやヒラマサと一見して違うのは、その鱗の大きさだ。
縦に長い楕円という特徴的な形をした鱗は、大きいもので長径1㎝ほどもある。
頭部は細長く、下あごが付き出すキツネ顔だ。
死んでしまうときれいな色合いが失われてしまうが、それでも水色のストライプの名残が見える。
体の断面は円に近く、中骨は太いがさほど固くなく、頭を容易に落とすことができた。
内臓を出すとべったりと脂肪の塊が付き、脂の乗りの良さを期待できる。
他の魚ではあまり見られないはっきりとした舌があったので取りだしておいた。
3枚に下ろすと、果たして素晴らしい脂の乗りの上等な身肉が姿を現した。
ブリと比較するとやや柔らかく、より鮮やかな赤身肉で、上質な和牛のようにきれいなサシが入っている。
ツムブリを食べてみる
まずは、刺身で。
一口食べてみて感動を覚えた。
これは…っ!!
身質はブリよりもアジ、それも死後硬直が解けたあとのしっとりとした熟成アジの刺身に近い。
筋が見えるが固くなく、それに沿って脂がついているのか全体的にとろけるような印象だ。
皮下脂肪もしっかりとついていたが、冬のブリのようなギトギトの脂ではなく、身の味とのバランスが抜群に良い。
誰だ美味しくないとかほざいたのは!どうせ無知な釣り人だろう。
てめーらは海上釣堀で養殖ブリでも釣ってろやこの味オンチどもめ!
…失礼、筆が乱れました。
個人的にはアジ科で最も美味しい魚に認定してもいいくらいだった。
ただ美味しいというわけではなく、アジ、ブリ、カンパチ、アジ科のそれぞれの良いところを併せ持つバランスの取れた味わいはこの魚を置いて他にないものだ。
味:★MAX
価格:★MAX
腹側のサクは焼き物に。
焼いてもやはりブリよりはアジに近い身のほぐれ方をする。
ホクホクしっとりとして美味しい。
身に強い味わいがあるので塩だけでも十二分に美味しい。
身自体の脂を使って、フライパンで表面がカリッとクリスピーになるように焼き上げるのがオススメ。
ブリだとこの調理法では油まみれになってしまう。
味:★MAX
価格:★MAX
ツムブリ大根も作ってみた。
出汁がマジで美味い。
人生最高のあら大根ができた。
いまの僕の女子力は53万です。
味:★MAX
価格:★MAX
小さいツムブリも食べてみたい
ということで予想をはるかに上回る味わいだったツムブリ。
キロ250円という価格からは想像ができない美味しさ、有能さで完全にファンになってしまった。
いつも入荷するんなら定期的に勝浦に買いに行ってもいいくらいだ。
ただ今回は、ブリでもカンパチでも最もおいしいと言われる「80㎝、4~5㎏」というサイズにジャストだったので、この味わいだけで評価を確定してしまうと他のアジ科の魚からクレームがつくのは必至だ。
というわけで、1㎏無いような小さなものでも、売られていたら積極的に買って食べてみたいと思っている。
身の味がいいから、脂乗ってなくても十分美味しいんじゃないかと思うけどねぇ。。
コメント
おそらく、ですが。
同じブリでも日本海と太平洋で明確な差が現れ、また同じ太平洋産でも時期・エリア・その時の偏食するベイトによって凄まじく肉質が変わるやつらなのです。
ツムブリについて言えることは、出回っている中で買っての評価は少ないのではないかということ。
つまり釣人の評価が多い。しかも黙ってられない人種の言動が溢れているw
重ねて、どちらかというと南方系の魚にあたるので釣れるのは夏が多い。
釣れるのは何故かそのへんのサイズが多い印象がありますが、夏のは確かに全然脂なくてサッパリしてるんですよね。
単純にツムブリにも旬があるってだけの話なのではないかと。
しかしこれも単純な季節だけではなくて、どの水温の海域で何月に水揚げされたかを考えて初めて良い魚体を手にできるのではないかと予想。
仮に冬から春が旬として、南に行って釣ったって意味がないという感じの。
魚には結構そういうのありますよね。
なるほど…確かにそうですね、考慮する必要があります。
ブリっぽい見た目にだまされて、期待して食べたらパサパサしてたらみんなキレるかもしれないw
ただ、この魚の身質を見るに、脂乗ってなくても美味しいんじゃないかという気がするんですよ。
特に僕は味覚がオッサンで、もうブリとか養殖カンパチとか美味しいと思えないんですよね。ワラサよりもワカシが好きというw
「市場寿司たか」さんと「ぼうずコンニャク」さんのやり取りみたいなもので、脂ってのは要は好みであって、養殖ブリが好きでも全然かまわないんですけど。
でもツムブリをくさすのはどうやねんと思うわけですね。
結局、これもマイナーな魚が世間に浸透しない理由のひとつなんでしょうね。
対面で売る小売店ならどんな感じの魚なのか質問もしやすいんだろうけど、今主流の販売形態だとそれも難しいケースが多いだろうし、そもそもわかるスタッフがいないことのほうが多そうだし。
そして、たまたま売ってて、買って、口に合わなかったら普通はそれで2度目は買わない。
で、それが一生の評価になるんでしょうから、魚の場合は野菜よりも不当な低評価が多いのは仕方が無いような気がします。
たまたま仕入れても販売努力が足りない&保守的な消費者が多いことで、聞いたこと無い魚には多くはなかなか手が伸びない。
仕事帰りに「マジか!売ってる!」なんて驚くこともあるけど、どう見ても売れてなくて山積みのまま半額なんて光景もザラで、価格だけ安くなってたってこの鮮度じゃもう真価伝わらないから、単純に処分販売に終わりリピートには繋がらないとか想像の範疇ですよね。
だから結局、量販スーパーではほっといてもリピートに繋がるものしか置かない傾向になるのではないかと。
そして個人商店はいまだにミニマムな視点だけでアピールしてたら、そらすぐジリ貧でしょうよ。
頭柔らかい世代から変えていかないといけないんじゃないかと。
そうですねぇ…わがままを言えばそういう、味やら食べ方やらを細かく教えてくれるおせっかいな店員さんがいてほしいですけど、難しいでしょうねぇ。
でも、買う人間の方は、結構こういったマイナー魚を求めてる人多いみたいですよ!
先日書いた外房のお店リストの記事もアクセス良いですし、魚好きなら「変わった魚を調理してみたい」って欲求は常にあるものだと思いますね。
というわけで、頭を柔らかくしてほしいのは漁師と仲買、というのが僕の主張です。
初めまして
こちらのサイト?ブログ?は最近知ったので、過去ログから順に楽しく読ませて頂いています
ただ、時々気になるのが、このエントリーのように釣り人こそ本物の魚の味を知っとるんや~ スーパーのパックしか知らん奴は一生養殖の脂ギトギト有り難がっとれ~ グエッヘッヘッヘww みたいなノリ
これちょっと嫌な感じですね
スーパーのパックは言い過ぎにしても大部分の人間は魚を小売店で購入するしか術がないんですもの
初めまして! お越しいただいてありがとうございます!
ご意見痛み入ります。。恐縮ですが、今一度当記事をお読みいただければ、むしろ真逆のことしか言ってないとお分かりいただけると思うのですが……(´・ω・`)
とはいえそういう意識は僕の中にないわけではないです。むしろ「美味しい魚を食べたいと願う人がなぜ釣竿をお持ちにならないのか」というくらいに思っています。
日本にお住まいなら、海でも川でもごくごく近くにありませんか?
一方で僕は市場で魚を買うのも好きです。いい魚を釣ることといい市場・店を知ることは僕の中では全くの同列です。スーパーのパックでも買いたいなと思うときは買いますし、状態によってベストな調理法を考えるのは楽しいです。
脂ギトギトのブリは苦手ですけど、照り焼きにしたら最高に美味しいですよね。
山岡士郎なら「来週またこのコメント欄に来てください、最高の魚を食べさせてあげますよ」くらいなことは言えるかもしれませんが、僕には不可能なので、ぜひshari-ginさんが一歩踏み出して、美味しい魚をご自身で探してみてください。切にオススメします。
釣りがいちばん早いと思いますけど、市場や小売店でも大丈夫です。吉池みたいな「魚にこだわる」スーパーも各都市に1つくらいはあるはずです。デパ地下とかも、こだわっているお店なら築地より新鮮なこともありますよ。
> 釣り人こそ本物の魚の味を知っとるんや~ スーパーのパックしか知らん奴は一生養殖の脂ギトギト有り難がっとれ~ グエッヘッヘッヘww みたいなノリ
どこを読んだらそう読めるのか。
釣りの魅力も醍醐味も知らない人間のやっかみにしか思えませんが。
釣りをしたくないなら築地などの市場でもいいし、大原や勝浦でやってる朝市とか、それこそ楽天でもいいから普段見ることのない魚を買ってみりゃいいじゃん。
ちなみに僕は自分で釣った中では
真鯛
ムツ類(赤、黒、白)
アマダイ
などはもちろん普通にうまかったですが、スマガツオは抜群にうまかったです。
むしろスーパーでも選べば良い魚買えますよね。釣った魚でも微妙なのもいるし。うまいのもいる。
>主さん
>むしろ「美味しい魚を食べ たいと願う人がなぜ釣竿をお持ちにならな いのか」というくらいに思っています。
返信ありがとございます
でも、なんで、美味しい魚食べたかったら釣竿持たなならんの?
普通は美味しい魚食べたかったら買いにいきますわ
>三平某さん
やっかんでませんよ~
スマガツオ、たまに店頭で見かけるので買ってみますね
いや、だからそういわず、釣りにトライされてみればいかがですか? という話で……(-_-;)
すみませんがうちのブログは基本的に野食のブログなんで、そのあたりご理解いただく気がないならお読みにならないほうがよろしいかと。。お互いいいことないですよ。。
初めまして!
私は釣りや野食の経験はほぼゼロですが、とても楽しく読ませて頂いております。
色々拝見いたしましたが、このエントリーに限らずwackyさんに釣り人至上の変なプライドなんて感じませんよ。
むしろ逆で、自前で調達しても買っても譲ってもらってもいいからとにかく美味しい、面白いものを食べたい!という貪欲さを感じます。その飽くなき姿勢に驚かされますし羨ましくも思います。そんなwackyさんが美味いものに触れる機会が多いのは当然のことでしょう。
ですので
> 釣り人こそ本物の魚の味を知っとるんや~ スーパーのパックしか知らん奴は一生養殖の脂ギトギト有り難がっとれ~ グエッヘッヘッヘww みたいなノリこれちょっと嫌な感じですね
この意見は見当外れもいいとこですね。
余計な心配でしょうがこんな手合いに影響されることなく、これからもエキセントリックなトピックを上げ続けられることを願います。
長文失礼しました。
さて、久しぶりに隙あらば自分語りしてみようかな…。
私は寮生活してた中学生の時、美味しい魚が食べたくて釣り始めました。
…買った方が遥かに安くつく事に気が付いた時には既に後戻り出来なくなってましたw。
つーこって、
>釣り人こそ本物の魚の味を知っとるんや~ スーパーのパックしか知らん奴は一生養殖の脂ギトギト有り難がっとれ~ グエッヘッヘッヘww
金の事だけ考えるのであればそうとでも思い込まないとやりきれない面は正直否定出来ませんね。私は金で済む事では謝りませんけどwwww
ちょいアレだけど要するに
お店に並ばない美味しい魚はたくさん有るから釣りに行こう
って程度じゃない
伊豆七島近海で釣れるものは小型だったり痩せている個体が多く感じます。ワカシや夏の小サバくらいパサパサで評価が低い原因の気がします。浜値が安くておいしい魚は職漁者は自宅で消費しますが、ツムブリはもちかえらないそうです。深場のギンメダイなんかもすてちゃいますよね。漁師さんはおいしい魚をしってますよね。
いつも楽しく拝見しています&1巻発売おめでとうございます。ツムブリは佐渡でも獲れるらしく(当方は新潟市在住です)、「地元の魚図鑑」的なもので存在は知っていましたが、こちらを拝見して「いつか食べてみたい!」と思っていました。それが近所のスーパーで遂に出逢い、実食叶いましたヽ(・∀・)ノ40㎝程度と小振り(¥598)でしたが適度に脂もあり、イナダよりもあっさりしてて好きな味でした。半身ペロリ。残り半身とアラは熱を通してみますが楽しみです。新記事も楽しみにしています(*´∀`)
そうですか、ツムブリ旨いですか、良い情報を頂きました、釣ったことないですがよく南方系の釣れる魚としてのイメージがあります、機会があれば私も喰ってみます。