ニホンザルを食べてみた②:制約のなかで美味しく調理しよう

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こちらの記事の続き。

ニホンザルを食べてみた①:知識と前提と味見
知り合いの猟師さん(諸事情により名前は伏せます・過去にこのブログでご紹介したことはないです)から「茸本さんサル食べます?」という連絡が来たのは、先々週のこと。 サルか……いつか口に入れる日が来ようとは思っていましたが、どうやら今日がその日...

というわけで、ニホンザルの肉を美味しく食べるためにいろいろやっていきたいと思います。

なんですけど、昨日の記事↑でもまとめた通り、サル肉を調理する際は以下の二点に留意する必要があると考えています。

・できるだけ高温でしっかり火を通す
・骨からエキスが出るような調理法を避ける



これは結構大きな制約で、つまりいわゆる低温調理で柔らかくすることもできないし、液体で煮込むのも不適、出汁をとるような料理もダメということになります。

それでいて肉質は硬く締まっており、無闇に高温加熱したところでガチガチになって美味しく食べることはできないでしょう。

更に部位によっては気になる臭みもあり、シンプルな料理で美味しくなりそうな気はしません。どうしたって、いくつかの工程を組合せ、臭いを消しつつ柔らかくなるよう調理してあげる必要があります。

いろいろ考えて、2つのメニューを作ってみました。

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サルスペアリブの揚煮


昨日の味見で、スペアリブ部分は硬いもののあまり臭みがないということがわかりました。
なので、一度揚げてしっかり火を通し、さらに柔らかく煮てあげれば美味しく食べられるんじゃないかと思いました。



まず、スペアリブを低温でしっかり揚げます。長く揚げるので焦げすぎないよう気を付けましょう。


揚がったもの。
これを骨から外し(骨髄のプリオンリスクをなくすため)、お酒とみりん、砂糖、醤油、五香粉を入れて煮ます。


できた! いただきまーす
…(`・ω・´)おっいいんでない

一度揚げてから煮たことで柔らかくほぐれるようになるかと思いきや、ゼラチン質豊富で強靭なまま。でもよく噛めば美味しく食べられるくらいの質感には落ち着きました。噛めば噛むほど味が出て、今風に言えば「生ジャーキー」みたいな感じ?


一度揚げ、さらに五香粉で煮ることで臭みを完全にシャットアウトです。アメ横で謎の肉料理を購入するとだいたいこの味付けになってるような気がしますが、やはりそれだけ五香粉の消臭パワーが素晴らしいということなのでしょう。


なかなかうまくいったなーと思い、連れにも試食してもらったのですが

「ここまでいくとサル肉らしさが全く無くなるね」

と厳しい評価。
まあ確かにそうだ。ぼくみたいに獣臭が苦手という人でなければ、ジビエの香りを消しきるなんてのは食材への冒涜に思えるのも当然のこと。。

サル肩肉とハラミの浜納豆炒め

五香粉はやり過ぎ、ということで別の消臭食材&調理法を考えなくてはいけません。もう少し香りが穏やかで素材を立ててくれるもの。

いろいろ考えましたが、今回はこれにしました。

浜納豆
これは納豆とついていますが、製法としては味噌に近いものです。糀をつけた大豆を発酵させており、強い発酵香と塩気があります。

以下「シカのふん」発言は禁止


そのまま酒の肴にすることが多いみたいですが、ぼくは刻んで調味料として用いることが多いです。中華調味料の豆チと製法がよく似ており、風味もとても近いのですが、浜納豆のほうが香りが強いように思います。



これを細かく刻み、


中華鍋で、おろしにんにく、生姜と共にたっぷりの油でじっくり炒めてよく香りを出します。



使用するサルの部位は肩肉、ハラミ。
いずれも綺麗な赤身で肉質がよく、食感を残す調理法をしたいと思いました。
とはいえ臭みのある部位もあり、それに対処しながらしっかりと火を通さないといけません。

これを一口サイズに切って


まず高温の油でさっと油通しします。これによって臭みを飛ばしつつ、このあとの炒め行程で硬くなってしまわないようにします。


野菜はこちらも風味の強いナス、ピーマンを使います。ナスが必要以上に油を吸ってしまわないよう、切ったあとで水に浸しておくのをお忘れなく。



中華鍋にサル肉を入れて高温で炒め、


野菜を入れて手早く炒めます。ここで日本酒を入れて更なる臭み消し。

鍋肌に醤油を垂らし、焦がし風味を加えながら味をつけたら

サルの浜納豆炒め、完成!
いただきまーす

……(`・ω・´)あ、イケんじゃん
懸念の脂身の臭みが浜納豆とニンニクショウガの友情パワーで無事上書きされてくれました。肉は相変わらず硬いですが、噛み締めると旨味が出てきて悪くないです。オージービーフの肩肉食べてるみたいな…☺️

(;´д`)あ、でもやっぱりちょっと臭い
どうやらハラミ肉がちょっと臭い強いみたいです。次回からこちらは五香粉で調味しよう。。

味:★★★☆☆
価格:オンリーワン

サル肉、ジビエとしてのポテンシャルは十分

ということで、一手間一工夫加えるだけでサル肉は十分美味しくすることができるということがわかりました。
そもそももっとも美味しいと思われるモモ肉はまだ試食していませんし、時期を選べば脂身だってもう少し臭いも薄くなる気がします。


今回お裾分けしてくれたハンターさんが「いいサル肉は高級牛肉みたいな味だし、もっとジビエとして認知されてほしい」とおっしゃっていましたがその通りだと思います。
狩猟鳥獣でないことや感染症のリスクはありますが、年に一万頭も駆除されている動物をただ殺処分廃棄するのはやっぱりどうかなと思うのです。かつては日本でもサル肉は食用にされていたわけですしね。


ハンターさん、本当にありがとうございました! 素晴らしい経験になりました。

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肉・シビエ
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野食ハンマープライス

コメント

  1. しょうきち より:

    猿肉よりもむしろ、浜納豆のビジュアルが驚愕でした@広島県民

  2. うぼあ より:

    初めまして。いつも楽しく拝読させて頂いています。

    HIVについては100℃で2分以上加熱すれば大丈夫なので、今回の調理法で問題ないと思います。最も、野生のニホンザルがHIVに感染している可能性はほとんどないですが。
    サルが高温に強い未知のウィルスに感染しており、それが人間に感染しやすいものであるという可能性もないではないですが、無視できると思います。

    ヤコブ病のプリオン失活に関しては134℃以上にしなければならないという事ですが、これは表面温度ではなく内部、しかも全体がむらなく過熱されている必要があります。
    焼く・揚げるなどの調理法では内部に水分が残っていますと気化熱により温度が下がってしまい、常圧下では食材全体を水の沸点である100℃を大きく上回る温度にすることが難しいです。油の温度やオーブンの温度=食品内部の温度ではないという事ですね。

    パサパサにさせずに134℃まで加熱するには3気圧以上の圧力鍋を購入する必要があり、これは市販ではほぼ売っていません…。差し出がましいですが茸本朗様のご健康を考えますと、やはりサル食はお勧めできません。このブログは毎日楽しみにしていますのでご自愛くださると有難いです(笑)

    • 茸本 朗 より:

      ご指摘ありがとうございます! すみません言葉足らずで、文章中に追記しました。
      個人的には、異常プリオンを100%失活化させられなくとも神経系を取り除いて肉だけしっかり加熱すれば食べられるものと考えます。かつて食べられてきたこと、、今も食用にする人がいることなどが理由です。

  3. 田舎バンザイ より:

    いつも楽しく読ませて頂いております。

    当然ですが、基本的にプリオン病でない個体を食べるのであれば何の心配も有りません。
    現在、野生動物の間で蔓延している事が確認されているプリオン病は北米の鹿を中心に拡大しているChronic wasting diseaseだけで、野生のサルのプリオン病と言うものが確認された事は無いと記憶しています。
    プリオンは基本的に異種間の感染は成立しにくく、前述の鹿のプリオン病蔓延地域でもハンターや肉食動物に感染した例は無いとされています。
    サルと人間といっても、チンパンジーとヒトのプリオン蛋白は似てますが、ニホンザルの様なマカク属のプリオン蛋白は結構違うので、万が一プリオン病のニホンザルを摂食したとしてもヒトへの感染は成立しにくい可能性が高いとお思います。
     
    一言で言えば、あまり心配する必要は無いのではないかと。

    • 茸本 朗 より:

      なるほど、ニホンザルはヒトとはかなり遠い存在なのですね……勉強になります、ありがとうございます。

  4. てれさ より:

    キウイとか使って事前に柔らかくするというのはどうでしょうか?やっぱ漬け込みになっちゃってエキス出て不可でしょうか?

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