4月になると海中も徐々に春めいてきて、ウミタナゴやら乗っ込み(産卵のために接岸すること)のクロダイやらの話題が盛り上がってくる。
僕の住む川崎でも、戻りガレイの終焉とともに浅瀬での年無しクロダイの釣果が聞かれ出した。
川崎から横浜北部にかけては、海釣りができるところはそこまで多くはないが、一般的に考えられている以上に様々なものが釣れる。
もちろん人口がけた違いに多いので、一人あたりの分け前は少なくなってしまうが、その中でいかに周りを出し抜いて量を確保するか。
この楽しみにハマると、江戸前の釣りはとても奥深いものになる。
川崎の春、シリヤケの春
さて、川崎(と横浜北部)の海に春をもたらすのは魚だけではない。
春から初夏にかけて、この海には火星人が大挙して来襲する。
彼らを釣ってこそ釣春到来、となる地元民は多い。僕もその一人だ。
シリヤケイカは東京湾奥で釣れる貴重なイカ類の一つで、塩分濃度の低下に強く、水深があれば工業港のような場所でも乗っ込んでくる。
ごらんの通りコウイカの仲間なのだが、お尻(外套膜後縁部)にある分泌孔から茶色い液体を分泌するため「尻焼け烏賊」と呼ばれる。
この釣りは10年ほど前からかなり有名になっていて、今ではシーズンになると東京湾岸の釣具屋には「シリヤケイカ用」と銘打ったエギの特設売り場が設けられ、有名なポイントには人々が大挙して押し寄せる。
「初心者にも釣れるもっとも簡単なイカ」と言われることも多いが、湾奥で釣るためにはそれなりのコツがある。
去年までの経験を活かし、備忘録的に火星人狩りのコツをまとめていきたいと思う。
今年こそシリヤケを釣りたい!という人はぜひ参考にしてみてほしい。
湾奥シリヤケイカ 釣期
だいたい4月中旬の大潮ごろ(今年だと4/17頃か)から第1陣が押し寄せ、GWから2~3週間が湾奥シリヤケのハイシーズンとなるのだが、意外と6月頃にも小さな波が訪れる。
湾奥の中でも、大黒海釣り公園や東扇島西公園など外に面したところでは接岸が早く数も多い。
そこから2カ月ほどかけてより奥に奥にと群れが接岸してくる。
僕のホームグラウンドでは5月末ごろが最も釣りやすい。
湾奥シリヤケイカ ポイント選び
有名どころである東扇島西公園は、平日は5時、土日は前夜から場所取りをしていないと、釣れる場所に入ることができない。
また、ずうずうしくも壊れた竿を放置して半永久的に場所取りをしようとする輩や、竿を4本も5本も出すF●ckin’なおっさん、公園に住み込んで延々と釣りつづける御仁など、ともかく常連のタチの悪さが特徴だ。
公園を管轄する川崎市も「竿は2本まで」という看板こそ出しているが、釣り人同士のトラブルを解決する気はどうやらなさそうだ。
目力に自信のある人はともかく、家族連れや初心者など平和にイカを釣りたい人は、はじめのうちは西公園は避けたほうが良いだろう。
もう一つの有名ポイント大黒海釣り公園は、外海に突き出した堤防のため内側外側さほど差がなく釣れるのがいいところ。
特に混雑時ほどみな外海側に入りたがるため、内側の先端寄りが狙い目だ。
ただ、土日は混雑のため開園早々入場制限がかかり、さらにエギと投げウキ釣りが禁止されるため手詰まりになってしまう。実質イカ釣り禁止のようなものである。
ハイシーズンは1日の釣果が公園全体で3ケタになることも多いが、その内実は数杯釣る人と0の人にくっきりと分かれる。初心者は言わずもがなだ。
オススメなのはそれらの場所より湾奥寄りのポイントだ。
具体的なポイント名は挙げないが、湾奥で釣り禁止でないところは限られているので、空撮釣り場マップなどを見ればすぐに見当がつくだろう。
これらのポイントは接岸時期が遅く、接岸個体数も上記2ポイントと比べるとはるかに減るのだろうが、その分釣り人も少ないのでのんびりと釣ることができる。
浮き仕掛けとエギを用意し、夜明け頃から半日粘れば、誰でも1~2ハイは釣ることができるだろう。
更にどうしても釣りたいという人は、平日で中潮の、朝マヅメと満潮が重なる時に行けば確実だ。
去年はこのパターンでボウズを食らったことが無い。
入れ食いを楽しみたいなら外へ、数杯でもいいからのんびり釣りたい人は奥へ。シチュエーションによってポイントを決められるのが東京湾奥のいいところだ。
湾奥シリヤケイカ 釣り方
投げウキ仕掛け
混雑していない釣り場なら、ウキ仕掛けとエギタックルを一つづつ用意して、二段構えで釣ると釣果は固い。
ウキ仕掛けは長めの磯竿に安物のスピニングリール、道糸はナイロンの3号程度で十分。ウキは立ちウキで5号オモリ対応くらいが使いやすい。
ハリスはフロロカーボン3号くらいで、道糸との間にサルカンをつけ、その上に中通し丸オモリをセットするのがご当地風。
エギは餌をセットできるタイプを用意する。
餌はササミが有名だが、昨年最も釣果があったのは小アジを3枚におろしたものだった。それからモウカザメも効果があった。
身餌はエギからはみ出ない程度の大きさに切り、針金でしっかり巻きつける。
巻きつけた針金の先端はカンナの上部の細いところにしっかりと巻き付けて身の方にはみ出ないようにする。
イカはエギの出っ張りを嫌うと言われるが、確かにこうすると食いがよくなる気がする。
さて、ここからは個人的な工夫なのだが、僕はエギのシンカーに糸オモリを巻きつけ、エギ自体の重量を嵩増しするようにしている。
オモリの重量はウキがぎりぎり沈まないくらいに設定する。
中通しオモリをウキの表記より1~2段ほど号数の低いものにし、糸オモリで残りの負荷+αになるように調整する。
こうすることでシリヤケイカに多い食い上げのアタリをしっかりととらえることができる。
アタリの7割はウキがふらつく(食い上げ)だけで、浮きが寝てしまうのが2割ほど、海中に引き込むのは1割程度しかない。
このふらつくアタリをしっかりと取れるかどうかが、釣果を伸ばすための最大の関門になる。
慣れていないととかく遠投したくなってしまうが、岸壁の釣り場であれば岸から10m以内でも釣れる。
それよりも、ウキの変化を確実にとらえられる距離に投入し、ちょっとでも違和感を感じたらアワセを入れることを心がけたい。
うまくアワセが入ると、まるでビニール袋でも引っ掛けたかのような重量感が手元に伝わる。
アオリイカのように遊泳力があるイカではないので、引き味はさほどないが、この重量感が非常にうれしい。
取り込みはタモを使うのが安全だが、抜き上げでもイケる。
ただイカが大きいうえ、水を吸って非常に重くなっているので、抜き上げ時に竿に負荷が掛かった状態から、イカが空中を舞っているときにテンションが抜け、そのままカンナが外れてしまうこともしばしば起こる。
道糸を手繰ることでこれは防げるが、墨攻撃を食らってしまうことがあるのであまりオススメできない。
またタモ入れをすると、タモに入った状態で墨を吐かせることができるので釣り場を汚さないことにもつながる。
このあたりは実戦で慣れていくしかない。
エギ
シリヤケイカは底を取る釣りなので、シンカーをつけて遠投し幅広く誘う、と言うのが定説になりつつあるが、いくつかの点から僕はそれに違和感を感じている。
まず、東扇島にしろ大黒にしろ、底が非常に荒い。
そこにみんなしてシンカー付きのエギを投げ込むので、底荒れが恐ろしいことになっている。
大黒で1日釣りをすると、常に4、5個のエギの残骸を釣り上げることができる。
更に、多くの人がアオリイカの繊細なタックルを流用するので、高切れした道糸もひどいことになっている。
最近東京湾奥で根魚が釣りにくくなっているというが、この影響は間違いなくあるだろう。
シンカーを着けたエギを用いるなら、タックルは強めにして、根ガカリしてもカンナが伸びるようにしておけば高価なエギも無駄にならず、底荒れも防ぐことができる。
とはいえシリヤケ用に一つタックルを用意するのもどうかな…というエギンガ―の皆さんは、単純にシンカーをつけなければいい。
上記の通りシリヤケイカはかなり岸寄りまで接岸するので、中程度の重さのエギを10mほどキャストし、中層から底を丁寧に探れば十分釣れる。
アオリイカのようにシャープな誘いは必要なく、着底したら一呼吸おいて30㎝ほどしゃくり、また着底の繰り返しでネチネチと探ればいい。
エギの色に関しては、去年は白とオレンジで良く釣れた。僕のホームグラウンドは河口に近く、濁りがあるのでこの2つは鉄板と言ってよさそうだった。
アタリはしゃくりの瞬間に出る、というかそれ以外はよく分からない。
しっかりとカンナを掛けたら、ゆっくりと寄せてきてタモ入れを行う。
こうして釣れたシリヤケイカは、持ち帰る直前までスカリなどで活かしておき、持ち帰る直前に締めると良い。
その際、釣り場をできるだけ汚さないようにしたい。
どんな料理でも美味しく食べることができるのだが、長くなったのでそれについてはまた次回に。
コメント
2016年シーズンに川崎~大黒のシリヤケイカにチャレンジしてきます。
詳しい情報をありがとうございました。