牛のレバ刺しが食べられなくなって丸3年が経った。
厳密に言えば「店舗での提供」が禁止されただけなので、自前で確保できる人なら今後も食べることはできるのだが、そんな人は極々一握りだろう。
禁止後、レバ刺しジャンキーの皆さんの一部は「豚のレバ刺し」への移行を試みたようだが、こちらも今年の6月で全面提供禁止に。
牛レバ刺しの禁止後、E型肝炎患者数が激増したということだが、この「豚レバ刺し」が一因だと言われていたので止むを得ないことなのだろう。
寄生虫も恐ろしいが、肝炎はもっと恐ろしい。
劇症にしろ慢性にしろ、今後同様の食生活が楽しめなくなるなんて死ぬよりつらいことだ。
レバ刺しの代わりになる!?意外なアイツの肝
とはいえあのぷりぷりトロっとした食感、口の中に広がる甘み、どうしても忘れられない!という方は少なくないのではないだろうか。
かくいう僕もレバ刺しは大の好物で、禁止直前には浅草橋の名店「寺」で名残のレバ刺しを貪り食べた。
豚レバ刺しも禁止された今、生で食べられるのは馬レバーと鶏レバーぐらいとなってしまったが、牛と比べると提供する店も少なく、手に入れる方法も少ない。
しかし、実は意外なものが牛のレバ刺しの代用として、昨今ひそかに注目を受けているという。
それはエイの肝臓である。
魚なのに、牛レバーの代わりになるの?
魚の肝と聞いて多くの人が思いつくのがアンコウ、次いでカワハギだろうか。
どちらもトロリとした脂たっぷりの舌ざわりと、濃厚な味わいが身上で、動物の肝臓でいうとフォアグラに近いものと言える。
色も白に近い黄土色で、フォアグラそっくりだ。
しかし、牛レバーのようなぷりぷり感、歯応えはないので、レバ刺しの代わりになるとは思えない。
アカエイはアンコウやカワハギとは違う「軟骨魚類」というグループに属しているが、魚類であることに違いはない。
果たしてレバ刺しの代わりになどなるのだろうか。
確かめてみる必要がある。
エイの肝は自分で手に入れろ
というわけでまずはエイを手に入れる必要があるのだが、まず関東の市場や魚屋でエイを手に入れること自体がかなりの難易度である。
僕が以前住んでいた福岡では、有明海沿岸を中心にエイを食べる文化があり、そのため町の魚屋やスーパーの魚売り場でもしばしば売られていた。
しかしこちらでは「アンモニア臭い」という理由で敬遠され、食材として考えられていないのだ。
確かに、エイ・サメなどの軟骨魚類は、死んで鮮度が落ちると体内の尿素がアンモニアに分解されるので臭くなってしまう。
水揚げから食卓に並ぶまでの時間が短い地域でないと、食用に利用するのは難しいのだ。
またそもそも、内臓は筋肉よりもさらに鮮度の落ちが早いため、流通させることすら困難だ。
というわけで自分で食べたければ…釣るしかないんだね。
某河口で長物を狙いつつぶっこんでおいた竿に掛かってきたのは、全長40㎝ほどの小さなアカエイ。
肝を食べるにはちょっと小さすぎるが、この1匹しか釣れなかったので持ち帰り対象と相成った。
尻尾の毒刺を慎重に切り落とし、氷締めにして丁寧に持ち帰ってきた。
アカエイの肝は小さいけど、美味しい
まな板に登るアカエイ。
捌きやすい大きさだ。
肛門から刃を入れ、内臓を傷つけないように丁寧に腹を開き、肝臓を取りだすと…
ちっちゃ!
エイの仲間はどうも、身体の大きさに比べて肝臓が小さいようだ。
メーターオーバーの巨大なサイズも釣れて来るので、そういったものであれば刺身に切れる程度の肝臓がとれるのだろうが、仕方がないので今回はこれを食べることに。
綺麗に水洗いして血を抜き、レバ刺し風にごま油と塩をかけて
(・~・)…
…うん、レバ刺し度80/100くらいかな。
まず食感であるが、確かに言われる通り、カワハギやアンコウと比べるとずっと牛レバーに近い。
小さくても歯応えがあって、ぷりぷりとしている。
味はというと、魚臭さが強いので牛レバ刺しとは明らかに違うが、このぷりぷり食感とごま油が合わさると、非常にレバ刺しっぽくなってしまう。
ただ、生の牛レバーの甘くとろける味わいには当然ながら欠けるので、その分を-20点とした。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
「レバ刺しコンニャク」よりはレバ刺しに近いと思うが、魚臭いのが苦手な人は卒倒すると思う。
また、ちょっとでも鮮度が落ちるととてもじゃないが刺身になどできないだろう。
もっともそれは牛レバーでも同様だったと思われるが…
まあ、レバ刺しジャンキーで、今も忘れられないでいるという人にはいいかもしれません。
ただ、アカエイは底生のスカベンジャーでかなりの悪食なのと、生態系の頂点に当たる魚なので、汚い海域で獲れた個体の肝臓は食べない方が良いかと思われます。
それから、ビタミンAを大量に含んでいるので食べすぎは厳禁!
顔の皮膚がはがれちゃうよ~
コメント
生では食べたことないなぁ。
レバ刺自体、そんなに好んで頻繁に食べもしなかったし。
アカエイの肝臓は10kg超えるとだいたい体重の1/10近いと思っていいです。
20~30kgを解体すると肝多すぎて副作用怖くてまともに食べる気になれないですよ。
今回のはエイ自体ちっちゃかったですけど、肝が予想の10分の1くらいだったんでびっくりしました。
サイズと肝は2次関数的に関係するのかもしれませんね。
副作用の前に、数10グラムも食べればもう十分、という人が多いと思いますw脳みそをだませるのはほんの一瞬なので。
アカエイを釣って見ようかしら・・・。
こっちはナルトビエイばっかですけど・・・。
たまにツバクロも
ナルトビエイもツバクロも不味くないと平坂さんが言っていましたね。どちらも一度食べてみたいです。
そういえば、エイレバ刺しを新宿の魚魚魚(うおみっつ)という居酒屋で出しているのを見たことがあります。
なんと!飲食店で提供するのはちょっと勇気がいるなぁ…鮮度保持に腐心されているでしょうね。