このサイトでは、以下の3つのテーマを柱に日々ネタを考えている。
1.普段食べられない食材を採ったり狩ったりして食べてみる
2.身近な食材を普通では食べない方法で食べてみる
そして
3.食材に紛れ込んでしまう生き物を食べても大丈夫なのか確かめてみる
栗虫とかアワノメイガとかの記事が3にあたる。
混入生物が流通に載ってしまうことを100%防ぐことはできないため、食べたら危険なことはそれほどないと思うのだが、気づかずに食べてしまってから不安になる人が多いようで、上記の記事には年間を通じて読まれている。
特に栗虫の記事は、Yahoo知恵袋などで「栗虫は食べても安全です。食べている人がいました⇒」みたいなリンクのおかげで昨年の秋はかなりのアクセスがあった。
僕が変なものを食べることで安心できる人がいるなら、管理人冥利につきるとはこのことだろう(笑)
フクロムシって食べて大丈夫なの?
さて、このような食材に混入してくる生きもののうち最も多いのは「食材を宿主としているもの」である。
それは栗虫のような植物に取り付くもののみならず、魚類の口中に寄生するウオノエや、内臓につくアニサキスのような各種寄生虫なども含まれる。
そのなかの一つで、カニやエビなどの甲殻類に寄生するフクロムシという生き物をご存じだろうか。
このようにカニのふんどし部分やエビの腹部に寄生し、栄養を横取りする寄生動物である。
このような見かけをしているにも関わらず、フジツボの仲間に近い甲殻類で、寄生生活のために固い殻や足を捨て、生殖器+栄養を吸い取るための器官だけを残した究極のパラサイトなのだ。
雄に至ってはほぼ精巣しか残っていない。
フクロムシに寄生されたカニは生殖能力を失い、行動を乗っ取られてフクロムシを自分の卵のように手厚く保護してしまう。
卵巣を持たない雄のカニにまで保護行動を起こさせるという、カニにとっては悪夢のような存在なのである。
そんなフクロムシであるが、場所によってはかなりの確率で寄生されており、大型の甲殻類から超小型のカクレガニにまで観察することができる。
当然、食用に捕獲されるものにも大量に見られ、食卓にまで登ってくるものも少なくはない。
ふんどしは食べる前に剥いてしまうことが多いので大丈夫だとは思うが、もしかすると知らずに口に入れてしまうことがありうるかもしれない。
果たしてこれは食べても大丈夫なものなのか。
いや、逆に見た目はアレでも甲殻類、食べてみると意外とおいしいかもしれない。
今回ちょうど良くレアなフクロムシが手に入ったので、食べてみることにした。
アナジャコフクロムシを食べる
フクロムシ類は特定の種の甲殻類を宿主とするものが多く、アナジャコにつくフクロムシは他の甲殻類には寄生しないものだと思われる。
深い穴の中に生息しているアナジャコにどうやって寄生するのか、経路の想像がつきにくいが、それでも1割ほどの確率でフクロムシを見つけることができた。
フクロムシに寄生されたアナジャコは身の詰まりが弱く、殻が柔らかいものが多いようだ。
さらに、腹部の水かき脚の部分に大量の泥が付着して真っ黒に汚れており、洗ってもなかなか落とすことができない。
そのため、食用としての価値は非常に低いものとなる。
フクロムシはアナジャコ体内の寄生部分(インテルナ)と体外の生殖器部分(エクステルナ)で構成されているが、インテルナは見てもよくわからなかったので、エクステルナを食べてみることにした。
2匹採取したが、色の違いが大きい。
鮮やかな方は膜が薄く、敗れて中身が出てしまっている。
くすんでいる方は大きさ・形ともに大豆に酷似している。
知らずに出されたら間違えてしまいそうだ。
熱したフライパンに乗せ、はじけないように気を付けながら炒ってみた。
火が通るごとに固くなり、水分が抜けてやや縮んだ。
完成。
一粒ずつ食べてみる。
(・~・)
…
外子の味がする…
甲殻類の卵のうち、成熟前で親の体内にある状態を内子、孵化が近づき体外(カニだとふんどしの部分)にくっつけられている状態のものを外子と呼ぶ。
内子はねっとりとして味が濃く美味だが、外子はわさわさして口触りが悪く、味もないために敬遠されることが多い。
フクロムシの見た目の色や柔らかさは内子に近いが、味は外子の残念さをさらに凝縮したような味で、まずくはないが敢えて食べるほどのものでもない。
味:★★☆☆☆
価格:★☆☆☆☆
せっかく栄養を奪い取ってぬくぬくパラサイト生活してるんだから、もっと美味しくなってくれてもいいのになぁ…
たぶん捕食者が宿主ごとフクロムシを食べても「やっぱり外子はまずいな」くらいにしか認識しないと思う。
まあ、美味くなるメリットは何もないのだけど。
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