昨年秋、栗に寄生するクリシギゾウムシを食べる記事を書いたところそこそこのアクセスがあった。食材に寄生している害虫の場合、目につくと不快なだけでなく、誤食の可能性も高いので注目度も高いのかもしれない。
そういった害虫たちに恐れを抱いている人たちに伝えたい真理がひとつある。
それはずばり「虫は、食べている物の味がする」というものである。
特にクリシギゾウムシのような、生まれたときからひたすらその食材だけを食べてきている虫は、かなりその風味が強くなっている。(アゲハチョウの幼虫はカンキツそのものの香りがするらしい)
毒さえなければ、食材につく害虫は食べてしまってもそれほど問題ではない。さらに言うと味が良いものも多い。人と同じものを食べているのだからさもありなんといえる。
トウモロコシの害虫として悪名高いアワノメイガという虫がいる。
茎の髄に侵入し枯らしてしまうほか、食べごろのスイートコーンの先端に食入し商品価値を失わせてしまう。
無農薬のトウモロコシにはかなりの確率で寄生しており、皮をむくと這い出してきて不快なことこの上ない。加熱後に見つかると気分も最悪だ。
ある日、富士山麓で購入したスイートコーンを剥いていると、例によってアワノメイガの幼虫が何匹も這い出してきた。
寄生しているのは大体トウモロコシの先端部なので、食害された部分だけを切り落とせば残りの部分は美味しくいただけるのだが、それはそれとして、生でも食べられる高価なスイートコーンを好き放題齧り尽しておいて無罪放免というわけにはいくまい。
釜茹での刑に処したうえでにおいをかぐと…案の定、コーンの香りしかしてこない。
口に放り込んで齧ると、幼虫特有のぶちゅっと出てくるエキスの中にふわっと広がるコーンの香りが心地よい。
しかし、クリシギゾウムシと比べるとちょっと脂っぽさが強く感じられる。これには個体差があり、上質なものはジューシーで癖もなくおいしいのだが、はずれのものにあたると少しばかり生臭い。
クリシギゾウムシとは異なり、これを食べる地方は存在していないようだが、このあたりにその理由があるのかも知れない。
それでも、正直な感想を言えば、信州を中心に常食されているカイコの蛹よりははるかに食べやすいと感じる。香りというのは食べ物にとってはかなり重大な要素なのだと実感する。
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採集の困難さや個体の小ささから、今後も商品として見出されることはまずないとは思うが、購入したスイートコーンから這い出してきたときや、間違って一緒に茹でてしまったとき(この事例が多いと思う)は、嫌がらずにパクリといってみてほしい。
トウモロコシ風味の虫、珍味としての価値は無きにしも非ずである。
コメント
トウモロコシを水に浸けると大量に集められます。
一昨日、40匹ほど浮いていたので試食してみました。
トウモロコシと一緒にゆでてから油炒めにしたのですが、なかなかおいしかったです。
なるほど、まとまって採れるという点では食品として有望そうですね!
トウモロコシの味がするから、一緒に食べても違和感はなさそうですね!
やってみようかな