先日、徹夜でたこあつめに興じ、磯のうえで朝を迎えたことがあった。
眠い目をこすりながら、このあと会社に行くことを考えてアンニュイになっていると、横の磯に入っていたオジサンから声を掛けられた。
「ニイチャンこいつ持ってかない?」
見てみるとそれはなかなかのサイズのボラ。
投げサビキに食ってきたようで、特徴的なへの字の口にがっちりとフッキングしていた。
釣るより貰うことの多い魚、ボラ
釣り人の中にはかなりの割合で自分の要らない魚をくれようとする人がいて、それが釣れ過ぎた本命魚だったりするとうれしいのだけど、自分では絶対に持ち帰ることのない魚を押し付けてくるくれる人も多い。
僕のような全方位物欲し顔をしているとなおさらである。
そういう時に押し付けられる頻度では、ボラは断トツの首位だと思う。
これが東京湾内の釣り場だったりすると固く固く辞退させていただくのだが、今回は外海向きの潮通しの良い磯場だったのでせっかくだからと押し頂き、中骨を切ってタイドプールで血抜きを施した。
ボラの「塩水洗い」と「へその刺身」を作る
持ち帰ってきたボラの内臓を出し、3枚に下ろすのだが、実はボラは生きている状態でも脂の乗りの具合がわかる。
眼の周りに「脂瞼(しけん)」とよばれるレンズ状の組織があり、冬になって脂がのるとここにも脂が回り、白く濁ってしまうほどになる。
しかし、夏のボラは残念ながら脂ののりはよくないので、写真のようなパッチリおめめになるのだ。
3枚におろし、サク取りする。
このとき、皮を引いてから一度まな板をきれいに洗わないと、皮の匂いが身に移って台無しになってしまうので気を付けられたい。
血合いの色がやや赤黒いのが残念だが、それでもきれいな身の色をしている。
読み通り脂はのっていない。
薄めに造り、一切れ味見してみる。
(・~・)…
うーん、ちょっと臭いな…
どんなに新鮮でも、やはりボラには特有のにおいがある。
ましてや夏の大型個体ならなおさら。
ということで、洗いにしてみることに。
と思ったが氷を切らしていて氷水が作れない。
仕方がないので「塩水洗い」にしてみることにした。
コイなど、川魚の洗いはかつては氷水ではなく塩水で締めていたと聞いたことがある。
洗いが有名なコイやスズキでやるにはちょっと勇気がいるが、ボラならば実験的にトライして失敗してもあまり悔しくない(もちろんダメでも加熱して食べるけど)
薄く削ぎ切りにしたボラの身を、海水よりやや濃くした食塩水に1枚ずつ放っていく。
すべて切り終わったら塩水の中の身をさっくりと混ぜ、ザルでよく水を切る。
皿に盛り、ラップをかけずに冷蔵庫で軽く冷やす。
これでOK。
ついでへその下ごしらえに入る。
ボラの「へそ」は胃の入り口出口(幽門部)にあたり、泥の中の有機物を泥ごと掬い取って食べる性質から、この部分が鳥の砂肝のように発達している。
取りだしてみるとそろばん玉のようだ。
今回のボラが50㎝位でへその大きさが直径4cmほど。内臓の中では非常に目立つ部位である。
普通は焼いたり揚げたりして食べることが多いのだが、今回は前から試してみたいと思っていた刺身にしてみることにした。
縦に半分に割り、
内側の消化管に面した側を薄く削ぎ取る。
外側の変色した部分も気分が悪いのでカット。
できあがりっと。
夏のボラを食べてみた
さっそく食べてみる。
(・~・)…
うん、悪くない。
塩水で締めてから冷やすことで、身の表面にもっちりとしたゼラチンの層ができるようで舌触りが良い。
塩味がすでについているので、醤油よりもポン酢の方が良かった。
レモン汁をかけてカルパッチョにしてもよいかもしれない。
ただ、時間がたって室温に近づくとやや匂いが気になってしまった。
レモン汁かビネガーでしっかりと締めてマリネにするほうが良かったかな?
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
続いてへその刺身。
こちらはとりあえず醤油で…
(・~・)……(゜~゜;)!!!
苦っ!!
歯触りはしゃきしゃきして砂肝やミノにそっくりで素晴らしいのだが、いかんせん苦すぎる。
おかしいな、いつも塩焼きにして食べてるときはこんなに苦みを感じないんだが…
もしやあの表面の変色、胆汁かなんかが漏れ出たのか?
味:★☆☆☆☆
価格:★☆☆☆☆
へその刺身はそのうちリベンジします
というわけで洗いは悪くなかったが、へそは今のところ「加熱して食え」という結論を出さざるを得ない。
歯触りは非常に良かったので残念だ。
もしまた獲れたての大型ボラが手に入って、へそ部分に変色が無かったらもう一度やってみたいと思います。
でもあくまで内臓なので、真似する人がいてお腹を壊したりしても自己責任でお願いしますよ。(自己責任ってわざわざ言及するの好きになれないなぁ…)
コメント
おいしいボラが食える場所でうらやましいです。
鹿児島湾内のボラは、沖のやつでも臭くて食えたもんじゃないです。
奄美で友達が刺してきたボラは、臭みゼロで丸かじりして貪り食いましたけど・・・・。
鹿児島湾は何となく水がきれいそうな印象がありましたが、ダメですか…
まあでも、ボラってのは夏はどうしても臭くなると思いますよ。南伊豆で突いたやつも刺身ではキビシかったですから…
匂いを個性ととらえたうえで、上手いこと消して食べるか、逆に香りとして楽しむか…いずれにしても上級者の魚ですよね。
ちなみにインド人はボラ好きなようです。カレーに入れたらあの程度の匂いなんかわかりませんからねw