食べられないキノコで中毒した話、食べてはいけない魚で大変な目にあった話に続いて、食べられるはずなのにひどい目にあった話をひとつ。
3年ほど前の春、横浜・海の公園で潮干狩りを楽しんでいると、岩礁帯に張り付く生きものが目に入った。
ヒザラガイである。
どんな磯やテトラポットにも住んでいる彼らだが、どうやら美味しいらしいということをネットの記事で読んで以来気になる存在であった。
比較的なめらかな岩肌にくっついている個体を探し、熊手の刃を接着面に当ててみたところ、比較的容易に剥ぐことができた。
大小いくつか採取し、持ち帰ってみることにした。
ヒザラガイの下処理は大変
ヒザラガイは貝界のダンゴ虫とも言われるように、8枚の殻で背中を覆うようにして身を守っている。
その上から丈夫な膜で体を覆っているのだが、下処理の時にこれらのものをはがさなくてはならない。
まず、採取してきたヒザラガイを水洗いして汚れを落とし、熱湯にくぐらせる。
そして、親指の腹でこするようにしながら外皮をこそいで落とす。
さらに、肉に食い込むようにくっついている殻を、一枚ずつ丁寧に剥ぎ取っていく。
この工程がなかなか骨が折れる。
気を付けないと自分の爪がはがれてしまうのだ。
無事、外皮と殻を剥がし終えたら、裏側から包丁を入れて内臓をくりぬいて下ごしらえは完了。
あとは蒸すなり炊き込むなり、何でも美味しい、と聞いていたのだが…
まさかのアレルギー発症
刻んで酒蒸しにしたヒザラガイを食べてみると、アワビをしっかりとさせたような歯ごたえに磯の香りがあいまって、予想以上においしかった。
どこにでも生息しており、タダでいくらでも採れる食材としてハンティングリスト入りも確実、と思われた。
しかし、食べ続けているうちに、だんだんと顔が火照ってきた。
初めは酒のせいかとも思ったのだが、やがて顔全体が非常に熱くなってきたところで何かがおかしいと気付いた。
続けて耳の中がかゆくなり、我慢できないほどになったところでアレルギーを確信した。
自分はアレルギー体質で、普段はダニやハウスダストといったアレルゲンに反応するのだが、ときどき普段口にしない食材でアレルギーを発症することがあった。(セレベスとか)
これまで魚介類で発症したことはなかったので油断していたが、もともと貝類はアレルゲンとしてはかなり一般的なもの。
ヒザラガイで発症したとしても何の違和感もない。
慌てて食事をやめ、強めの抗ヒスタミン剤を飲んだのだが症状は強まる一方。
今度は視界が狭くなってきたと思ったら、上下のまぶたが水風船のように腫れあがり、文字通り目が開かなくなってしまった。
顔全体もアン○ンマンのようにパンパンになり、充血のあまり破裂しそうになっている。
しまいには喉がヒューヒュー鳴り出した。ぜんそくの症状だ。
ここでもう対処をあきらめ、布団にもぐって早々に寝てしまうことにした。
のちにこのときの話を、医者の友人にゲラゲラ笑いながらしたところ、
「もし自分の患者だったら、呼吸器に影響が出たところで生命に危険が迫っていると判断して強制入院させる。」
と半ギレ気味に言われた。
あの時二度と目が覚めない可能性もあったわけで、思い出しても背筋が凍る。
このときは幸いにして翌朝目を覚ますことができたが、顔の火照りとまぶたの腫れは一向に引いておらず、井岡戦の後の八重樫東のような顔のまま出勤する羽目になった。
アレルギーの症状が完全に収まるまでに1週間ほど要した。
野食は危険と隣り合わせ
後日、今度はアメフラシを食べたのだが、やはり同様の症状が発生した。
軟体動物のうち、特定の種類ではアレルギーが発生するようだ。
ただそのときは「アレルギーがあるかも?」と思って味見程度にとどめておいたので、あまり重篤な症状が出ずに済んだ。
アレルギーの発症の要因については、
1.食性
2.生息海域の問題
のどちらかだと思われるが、個人的には食べている海藻または藻類にアレルゲンがあるのではないかと思っている。
今のところ巻貝と二枚貝ではアレルギーは出ていないが、サザエやアワビ、トコブシといったメジャーな食用貝でも、今後症状が出ないとは限らない。
大事なのは彼らが何を食べているかで、それが分かっていない場合はどんな生きものも食べて安全だと断言することはできない。
何でもかんでも採って食べてやろう、というのがこのサイトのコンセプトだが、身体が資本の体当たりレポート、今後も細心の注意を払って活動を続けていきたいと思っている。
告知
pixivFANBOXというのをやっております。
要は有料ファンクラブみたいなやつです。各種プランにご登録いただくと、限定公開の記事が読めたりします。
こちらでの収益をもとにブログやYouTube動画のネタの取材を行っております。もし、茸本朗の活動にご賛同いただけるなら、こちらご登録いただけると非常に非常に助かります。
コロナ禍が明けた暁には野食会・その他イベントの優先参加権なども特典として追加しようと思っております。
コメント
魚に対してアレルギーがあったが、幼稚園から小学まで食事を残すなと教師から居残りしてまでも無理やりすべて食べさせられ、好き嫌いだとなじられ続けた。最初は口の周りがチクチクしてから嘔吐、蕁麻疹、軌道閉塞して完全な喘息の症状を毎回起こしていた。それでも毎回食べさせられる苦痛を味わされた。小学校中学年になる頃には慣れてしまい、食べたら症状が出る前に直ぐにトイレで吐くという技が出来るようになり、口など直接触れた部分がチクチクするぐらいで終わらせることが出来るようになった。あの教師どもに全身蕁麻疹と吐き気と息も吸えない喘息になると分かっている薬を入れた食事を自分から全部食べるのをあの回数分味合わせてやりたいと思いだすこともある。
[…] >>1 >>25 はい これ読んで https://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/hizaragai/ […]
[…] >>1 >>25 はい これ読んで https://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/hizaragai/ […]
[…] >>1 >>25 はい これ読んで https://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/hizaragai/ […]
[…] 58: 名無しさん@涙目です。(茸) [NO] 2018/04/30(月) 11:23:13.64 ID:Qv6VypKz0 >>1 >>25 はい これ読んで https://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/hizaragai/ […]
[…] >>1 >>25 はい これ読んで https://www.outdoorfoodgathering.jp/outdoorfood/hizaragai/ […]
たぶん他の人も薦めてると思いますが「エピペン」必携ですよ。
これからも楽しい記事を拝見したいのでお願いします(心配です)。
ヒザラガイの食べられる部分は、ふつう「足」だけです。足っていうのは、下の柔らかい部分だけ。ここが、アワビの食べられる部分に相当します。表面に出ている部分は、軟体部も含めてふつう食べません。
外側の部分にアレルギーが出るのは、わりとあることなのかもしれません。私の連れ合いが、ホヤ好きで、あるときホヤの外側の殻も食べたところ、強烈なじんましんが出ました。外敵を守るための物質があるのかもしれません。系統的には遠い両者ですが。
この記事アレルギーにやたら触れまくってて危険な食べ物と誤解される記事になってるんだけどそういう意図なの?
魚介アレルギーなんて持ってる奴がぶっちゃけ悪いというかそんな連中の基準で書かれても困るしノイズだろうに
エピペン持っていただいて、病院の横に住むのが安全かもです。
本当にアナフィラキシーはこわいですから…
チューバーが出しゃばってブサイクな顔を見せつける動画なんかより断然面白いですが、アレルギー持ちなら食べるものには充分注意ですね。
特にキノコと海産物の毒なんて洒落になりません。
さすがに読む方も、主さんがお陀仏になったなんてのは聞きたくもありませんしねぇ…