アメ横で大きな活けのアワビが叩き売られていたのでつい購入してしまった。
こんなに安いのは間違いなく裏事情があるのだろうが、まあどこ産だろうがアワビはアワビ。
値段交渉の末購入した。
「乾し」マツバガイはアワビの代用足り得るか
さて、以前より大きなアワビが手に入ったら作ってみたいものがあった。
「干し鮑」と「熨斗鮑」である。
中華の超高級食材で“乾いた金貨”とも呼ばれる干し鮑と、かつて贈答品に添えられた和の高級干物である熨斗鮑。
せっかくなのでどちらも作ってみたい。
のだがその前に…
再び、磯へ。
もちろんアワビを追加するわけではなく、
もう一度、彼らを採りに行ったのである。
マツバガイとベッコウガサだ。
しばしば「アワビのような味わい」などと形容されるこれらの貝であるが、正直なところ歯応え以外にアワビらしさを感じたことはなかった。
大きさもさることながら、身の香りや甘さなど、アワビにはとてもかなわない。
比べることすら、おこがましいと言えるかもしれない。
それでも単体で考えれば非常に味はいいもので、酒蒸しや炊き込みご飯など非常に美味しくなることから、旨味をたっぷりと含んでいることが考えられる。
一度干すことでそのポテンシャルを最大限に発揮するかもしれない。
別にアワビに匹敵する必要なんてない。
身近な食材がもっとずっと美味しくなるならば、野食ニスト冥利に尽きるというものだ。
アワビとマツバガイ、高級化への道
大きさこそ異なれど、下処理の流れはアワビもマツバガイも共通である。
1.殻から身を取り出す
裏返して足の裏に大量の塩をかけ、身が固く締まったら水洗いしながら汚れを掻き出す。
殻と身の隙間に金べら(的な何か)を差し込み、貝柱と殻の接着面をはがすようにへらを起こして身を取り出す。
2.内臓を取る
身から剥がすようにしながら、内臓(中腸腺)とひもを取り外す。
また口の付け根にある唾液腺を扱き出して取り去る。
3.塩水に漬けこむ
本来はここで塩漬けにするらしい。
ただ、1㎏以上の大型のマダカアワビならいざ知らず、今回の400g程度(これもデカいんだけど)のアワビを直に塩漬けにするのはちょっと怖いので、海水よりちょっと濃い程度の食塩水に漬け込むことにした。
5%ほどの食塩水を作り、ジップロックに入れて冷蔵庫で3日間漬けこんだ。
アワビはこの時点でもともとの8割程度の大きさになっている。
マツバガイはあまり縮んではいないようだ。
4.ヌメリ、汚れをよく洗い流す
ヌメリのほか、黒い表皮が浮き上がっているので、手でこすりながらきれいに洗う。
全体が白くなればOKだが、洗い過ぎは風味を損ねるかもしれない。
ここから、干し鮑と熨斗鮑で工程が分かれる。
干し鮑
5.塩水で茹でる
漬け込むのに使ったものと同じくらいの濃度の食塩水で、緩やかに茹でる。
だいたい80℃くらいで、30~40分も茹でれば十分と思われる。
茹で上がりはこの通り、ぷっくりとして身が締まっており、このままかぶりつきたいような衝動に駆られる。
この時点で、長さで言うと6割程度まで縮んでいる。
干したらもっと小さくなるわけだから、高価になるのも止むを得ないだろう。
丁寧に茹でたが、「えんがわ」の部分が少し裂けてしまった。
最初の水洗いの時に乱暴にしすぎたかもしれない。
対してマツバガイとベッコウガサ
こちらはやはりそれほど縮んではいない。
どちらもアワビ同様に身が締まってパンパンになっているが、もとの身の厚さがある分、ベッコウガサの方がよりぷっくりしているように思える。
顔のようすも少し異なっているようだ。
6.干す
干し網に入れて風通しの良いところに置き、日光がより当たるように気を付けながら干す。
熨斗鮑
5.包丁で薄く削いで紐状にする
かつら剥きにするように包丁を入れ、テープ状に切り出していく。
身が非常に硬いので包丁が進まない。
手を切らないように、細心の注意を持って切り進める。
伊勢神宮で奉納用の熨斗鮑を作るときは鎌のようなものでスライスするらしいが、かなりの苦労だろう。。
マツバガイとベッコウガサは円柱の中心に包丁を入れて、薄くなるようにスライスする。
6.軽く干す
7.棒で熨す
本来は青竹で伸ばすようだが、うちにはすりこ木しかないのでそれで代用した。
非常に硬く、なかなか伸びてくれない。
麺棒があるご家庭はそれを使ったほうが良さそうだ。
8.本干しする
干し網に入れて、しっかりと干しあげる。
マツバガイは高級乾物の夢を見るか
アワビが塩漬けや茹での段階ですでにかなり縮んでしまったのに対して、マツバガイやベッコウガサはそれほど縮まなかったのは評価できる。
身の密度が高いということなのだろう。
干しあがりにも期待できそうだ。
アワビは、この大きさだとからっからになるまで1週間ほどかかるかもしれない。
塩気はやや強めにしたが、カビや腐敗がちょっと心配だ。
上手くいくと良いのだが…
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