先日、新たなるゴンズイスポットを探してとある港をうろついていると、石積み堤防の途中に変わった模様の石があるのが目に入った。
不思議に思って近づいてみると…
ははぁ、これは。。
ノリと言う海藻の中には、実はいくつかの種類があるということはそれほど知られていない。
一般的な焼き海苔・味付け海苔の材料についても、多くの人は「浅草のり」なる海藻がその材料だと思っているようだ。
実際はアサクサノリはいまや幻と言ってもいいほどに減っており、市販されている海苔は、ほぼ全国的にスサビノリという種類の海藻を材料に作られている。
ここに生えていたのも、そのスサビノリであった。
一般的に、ノリやヒジキ、ワカメといった海藻類は漁業権が認められている海産物であり、我々一般人が採ると密漁になってしまうのだが、幸いにもこの港は漁業権が放棄されている。
ありがたく頂戴し、天然岩ノリの味を楽しむこととした。
ノリ採取のコツ
海藻類というのは、よほど詳しい人でないと同定するのはとても難しい。
だから自信がなければ採取を控えてほしいのだが、スサビノリに関しては特徴的な部分が多いので意外とかんたんに見分けることができる。
1.かなり乾燥に強い
釣り人ならだれでも、ノリが生えた岩やテトラポッドの恐怖を知っていると思うが(めっちゃ滑る)、波しぶきがかかるような陸の上の岩に、びっしりと固まって発生するのがノリの性質だ。
採取する時は、潮が大きく引くような日を選び、波打ち際から少し上の岩の上を注意深く見ていればすぐに見つけることができる。
2.髪の毛のような根がある
その生活環から、ほとんどの場合葉の付け根に髪の毛状の糸状体が見られる。
3.海苔の風味がする
どうしても確信が持てなければ、少し手に取って食べてみると良い。
はっきりとした海苔の香りがあるのですぐにわかる。
採取にあたっては、小さな海藻であるため手で摘むのはかなり疲れる。
かといって刃物やナイフを使うと岩ごと削ってしまい、発生が少なくなるだけでなく砂や砂利を噛んでしまい下処理が大変になる。
潮が引いて半乾きになった岩の上に生えているものを見つけ、指でぺりぺりと剥がしてあげると、労力少なく採取することができる。
スサビノリの下ごしらえ
採取してきた半乾きのノリは、水洗いをすると大きく膨らむ。
しかしこの時点では石突きに大量の砂を噛んでしまっている。
このまま調理すると料理がじゃりじゃりになって本当に台無しになるので、丁寧に繰り返し何度も洗って、砂を完全に落とす必要がある。
目の細かいざるの中にノリを入れ、ボウルに水を入れた中で揺すり、砂を落とす。
流水でやろうとしても砂が落ち切らずに残ってしまうので、必ず溜めた水の中で洗う。
繰り返し水を替え、砂が落ちて来なくなったら下ごしらえは完了。
好みで細かく刻むもよし、そのままで歯ごたえを楽しむもよし。。
スサビノリで「ラヴァーブレッド」を作る
さて、せっかくの天然スサビノリ、板海苔にしても佃煮にしてもとても美味しくなるのは目に見えているのだが、ここは敢えて変化球に挑戦してみることにする。
作るのは、コウタケの記事でも参考にしたマイナー料理マンガ「ダシマスター」に掲載された、連合王国・ウェールズ地方の特産料理「ラヴァーブレッド(Laverbread)」。
laverとは英語でノリという意味なのだが、この語はlava(溶岩)という言葉と関連があるという。
つまり「溶岩パン」ということになるのだろうか。
作り方は簡単だが、それぞれの工程がなかなかに面倒くさい。
まず、チキンとビーフのストックを取る。
チキンは鶏がらスープのもとでいいとして、ビーフはちょうどよく家に転がっていた
メキシコ産牛アキレス腱を圧力鍋で1時間ほど煮込み、出汁とすることにした。
この合わせスープに、下ごしらえを終えたスサビノリを入れ、小さじ1程度の砂糖を入れて中火~弱火で焦げ付かないようにぐつぐつ煮込む。
この工程で、せっかく増えたノリがどんどんどんどん縮んでいき、元の体積の5分の1程度までに減ってしまう。
当然ながらその程度まで濃縮されることを前提にスープの塩気を調節したい。
さて、一方で6枚切り食パンを用意し、トースターで焼いてバターを塗っておく。
この上に煮詰めたノリを乗せて
完成!
見た目、風味ともに「ごはんですよ」だが、果たしてパンに合うのか…
…(^~^)
…
アラ美味しい。
洋風の出汁で煮ているので、パンやバターの風味ともとてもよくマッチしている。
ノリの磯の香りも意外と違和感がない。まあ明太パンとか美味しいもんね。
味:★★★★☆
価格:★★★★☆ ジャム程度の手間を想定したい
ときどき2chあたりで「海苔のwwwwジャムwwwww」などと煽られることがあるが、パンに塗るとはいえジャムというよりペーストである。
確かに甘く味付けするとゲロマズではないかと思うのだが、洋風出汁でしょっぱく味付けしているので日本人の舌にも合うのである。
摘むのも、洗うのも、調理もなかなかに苦労するスサビノリだが、味の良さは大昔からのお墨付き。
今が旬のスサビノリ、もし漁業権のない場所で見つけたら、面倒くさがらずに試してみるのはいかがでしょう?
コメント
なんと‼イギリス人もごはんですよトーストを食べてるとは‼
そして茸本様がごはんですよトーストをご存知ないとは!!何かの間違いに決まっ(ry
基本的に醤油ベースですから、バターとは問題なく合いますよ。好みはあるかもですが。