週末、西湘の某港に根魚釣りに行った。
最近カサゴとの相性がよいので、今回もそのつもりで行ったのだが、肝心のブラクリを忘れてしまった。
ブラクリとはカサゴなどの根魚を釣るために作られた、錘と針が一緒になった釣りの仕掛けで、こいつがないと、浅瀬の高活性なカサゴをピンポイントで釣る冬の必勝パターンができない。
仕方がないのでメバル釣りにシフトしようと思い、港内をさまよっていると、堤防の少し沖に群れになって泳ぐイワシを発見した。 だった。
メバルの餌に最適なのは小魚などの生餌なので、これ幸いと友人にサビキ仕掛けを借りて挑戦してみると、釣れたのはイワシではなくトウゴロウイワシ
あやかりイワシの藤五郎
トウゴロウイワシはイワシの名を冠するものの、実際はイワシが属するニシン目ではなく、ボラやトビウオに近縁といわれるトウゴロウイワシ目の頭領となっている。
藤五郎とは人名ではなく、西日本の方言で服を着たまま眠るずぼらのことを「トンコロ」と呼ぶらしく、鱗を纏ったままの死体をそれになぞらえたのだと考えられている。(ぼうずコンニャクさんのサイトなど、いくつかの文献を参照)
面白いのは、普通の魚は死んでも鱗がはがれないのになぜトンコロ、藤五郎と呼ばれないのか、ということである。
これについてはどこにも文献はないが、イワシの仲間の魚はどれも非常に鱗がはがれやすく、その中で鱗がはがれにくいトウゴロウイワシを見て「こいつ、イワシの癖にトンコロなんやなぁ」と思った人がいたのだろう。
習性や生態、食性についてはイワシ類とほとんど変わらない。
ただ、個人的な感覚としては、回遊魚であるイワシ類と比べると港内や湾内に留まりやすく、群れがいなくなると釣れなくなるイワシと異なり、仕掛けを入れているとどこからともなくやってきて針に掛かってくれるように思う。
サビキ仕掛けは冬には釣れないと思われがちだが、彼らは真冬にもつれる貴重な存在だ。
トウゴロウイワシはキビナゴの代わりになるか
○○は○○の代わりになるか、というパターンの記事は当サイトの常套手段であるが、今回は見た目や大きさが近い、イワシの仲間であるキビナゴと比較してみることにする。
キビナゴはもともとは西日本の方でよく食べられる魚で、鹿児島では手開きの刺身を大皿にきれいに並べたものがよく知られている。
最近は関東でもしばしば見るが、小さく鮮度の落ちが早いので他のイワシ類の魚と比べるとあまり人気がない。
捌く手間のせいで価格が高いのも不人気の原因か?
対してトウゴロウイワシは、釣りのメインターゲットになることはほとんどなく、一部で美味しいことが知られてきたが、持って帰ろうとする人は多くない。
鱗が固く、はがれにくいのも厄介なところだ。
持って帰ってきたトウゴロウイワシ。
まず鱗を取る。
トウゴロウイワシはボラに近いとあって鱗がしっかりしており、体表を鎧のように覆っているのがわかる。
鱗に対して身が柔らかいので、包丁などでこそいでしまうと肉がつぶれてしまうことがある。
親指の爪で、尾鰭から頭に向かってこそぐようにすると、一度にごっそりと取れるのでオススメだ。
鱗を取り去り、頭と内臓を落としたもの。
身と筋肉はきれいに透き通り、精密なガラス細工のようで、サヨリに近いものを感じる。
ここから手開きにしようと思ったが、ふと思い立ってそのまま食べてみたところ、骨が柔らかく味がある。
急遽このまま完成とした。
トウゴロウイワシの背越しは美味い
トウゴロウイワシの刺身あらため背越しが完成。
醤油をつけて食べてみると
…(`~´*)
非常においしいね。
生臭みは無く、味が清涼で、歯応えも風味も小魚とは思えないほどの主張がある。
味はやはりキビナゴ、または釣りたてのカタクチイワシに近い。
ただ鮮度の持ちはイワシよりもずっといい。
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
30匹もあれば酒のあてには十分すぎる。
サビキでちまちま釣るのも悪くないけど、タモ網で一網打尽にできれば最高だなぁ。
コメント
背越しにはできなくなるけど、刺身にするなら鱗をとらず首根っこを切って頭と内臓を一度に抜き取り、そのまま3枚におろしてから皮ごと捲ると一瞬で鱗もとれて身も傷みませんよ。
鱗つきのほうが3枚おろしも楽で、身はまさにサヨリみたいな感じになります。
皮の外れ方はトクビレみたいな感じになり、鱗の強靭な
魚にある程度共通に使える方法です。
お試しを〜
なるほど、確かに鱗と皮と同時に引けそうですね!今回は小っちゃかったんで三枚おろしにしなかったですが、もっと大きいのが釣れたらやってみます。
とはいえ最大でも12、3㎝位のしか見たことないですけど…どこまで大きくなるんでしょうね。。