毎年調理に苦戦していながら、なぜか定期的にウツボを食したくなる。
食べ始めてもう4~5年になるはずだが、いっちょん料理の腕が上がっていかないのはさすがに問題だと思ったので、本腰を入れてウツボの調理について考察してみることにした。
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絶品!寒のウツボの釣り方
ウツボの正しいさばき方2014 ~寒のウツボを捌く~
寒ウツボの美味しい食べ方
ウツボに咬まれて大ケガを負いました
ウツボを捕獲する
生贄となったウツボは伊豆半島は網代港のテトラの際からぶっこ抜いてきたもので、最長104㎝という大物。先日化け物アメナマを釣った友人によって仕留められた、網代港のヌシである(たぶん)
ちなみに食べてしまった後で判明したのだが、この子たちは網代在住の両親が、朝の散歩のときに見かけて以来、名前を付けて可愛がっていた個体だったらしい。
ウツボって結構人に慣れるから、かわいいんだよね。
悪いことしたなー…
でもウツボ美味しいからね、仕方ないね。
…ペット兼食料ってなんかポクテみたいなやつだな。
ウツボの小骨を考察する
調理開始。
いつも通り塩もみをしてぬめりを取り去り、頭を落として内臓を抜き、肛門のところで切って上半身と下半身に分ける。
さて、ウツボについてネットで調べていると、時々「小骨が気になるので骨切りして」なんて記載しているレシピがある。
これはよほど小さな個体を使ったので気にならなかったか、あるいは処理できたつもりができておらず、食べる人に負担をかけているかのどちらかだ。
ウツボの皮下骨はその1本1本がタイの骨のごとく頑強で尖っており、口に入ると途端に凶器になるレベルで、とても小骨とは言いかねるものだ。
ウナギやアナゴを食べているときに舌に触る骨がすべてこのサイズになっていることを想像してもらえればいい。
あの骨がついているのを知りながら食卓に供するのは業務上過失致死罪に等しいと思う。喉に刺さったらシャレにならない。
ということで僕は絶対に骨を料理に残したくないわけです。というか骨切りはダメ・ゼッタイ。
といっても、ウツボの骨の処理方法についてはネットで探しても出てこない。
出るのは高知県の骨抜きウツボのたたきの情報のみで、そのどれもが「骨の抜き方は企業秘密」となっている。
確かに、骨さえ抜けりゃ最高の商材だもんなぁ…
らちがあかないので、自分で研究して見つけるしかないと腹をくくった。
その研究の成果が以下の通りだ。
骨を知る・上半身
まず、断面を触って、その個体の骨の入り方を確認する。
一般的に、爪楊枝が刺さっている3カ所に、皮下埋没骨(いわゆる小骨)が存在している。
骨の位置が分かったのでまずは開く。
大きさにもよるが、今回のウツボはドデカいので3枚おろしにした。
ウツボのおろし方
まずは背びれの両側から包丁を入れて、ヒレとその根っこの骨を切り去る。
こんな感じ。
ウナギやアナゴのように、開きにしてからヒレを切ろうとすると付け根の骨が大変なことになってしまうので先にとるのがおすすめ。
タチウオの捌き方と同じ。
それから中骨に沿って開いていくのだが、このとき気をつけたいのが中骨の形状だ。
上半身の中骨はこのように下向きのy字型に開いているので、
慎重に骨の形状を確認しながら、骨に沿って、出っ張りを迂回するように包丁を進めたい。
普通の魚では、腹骨を身に付けて3枚におろし、後から柳刃包丁でそぎ取るようにするが、ウツボの場合腹骨というよりは中骨の出っ張りに近いので、中骨から切り離さないようにしたほうが良い。
出っ張りの形状に沿って丁寧におろせば、上の写真のようなきれいなY字型の中骨が残るはずだ。
初心者はここで、サク取りをするように腹側と背側を切り分けたほうがいいだろう。
腹側は骨がないので刺身にできる。適度に脂も乗って旨い部分だ。
小骨を除去する
背側にはまだ小骨がある。これが意外と筋肉に埋もれているので、肉の表面を柳刃包丁で薄く削いで小骨を露出させ、切り出す必要がある。
うっすらと透けて見える中骨にめがけて包丁を入れ、まずは骨の上側の肉を薄くはぐように切り、小骨を露出させる。
そうすると、このように皮下骨が露わになる(一列に並んだ白い筋状の部分が小骨)
このように骨の上側をそぎ取り、それから骨を周辺の肉ごと薄くそぎ取れば、背側も小骨地獄から解放される。
よく砥いだ柳刃で、小骨の並びを崩さないように、できるだけ薄くそぎ取るのが大切だ。
10匹も捌けばきっと慣れるだろう…
2020.1 追記
ここまでの説明が非常に分かりにくいと不評なので、動画でもアップしました!
詳しくはこちらの記事内のリンクからどうぞ!
地鶏のタタキが食べたいけど東京じゃ食えないので、代わりにウツボ釣ってきてタタキにした
骨を避ける・下半身
下半身も同様に小骨が並んでいる。
しかもこの骨、下半身のほうが強靭だ。
上半身と比べて本数が増えるわけではないようだが、体自体が細くなっていくのに対して骨がより太くなっていくので、「下半身は骨だらけだから食べられない」といった風評が立つのだろう。
さらにはごらんのとおり、中骨自体もy字の先端がさらに二又に分かれており、より凶悪な形状をしている。
一度切り離せば最後、あらゆる料理で口の中を蹂躙するのだ。
しかし、ウナギやアナゴ、さらにはサワラといった細長い魚は、よく使う後半身の筋肉がよく締まっており、味が良い。
ウツボも同様で、下半身を捨ててしまうのは極めてもったいない話だといえる。
ではどうするか。
まずは3枚おろしにしたのち、皮を下にしてまな板に置く。
そしてまな板と包丁の角度を水平近く保ちながら包丁を入れ、皮下埋没骨に当たったら、それに沿って刃を水平にし、薄くへぎとるように刺身にしていくのだ。
皮のぬめりを事前によく落とし、まな板をよく洗って滑らないようにしておくのがコツ。
皮下の小骨が多いが、刺身にして絶品であるクロシビカマスの造り方を参考にした。
下半身の筋肉はよく締まり、フグのように極々薄く造っても歯ごたえと味が楽しめる。
天草のホテルでウツボフルコースを造る板前さんに教わった知識だ。
残った皮は革細工にするなりパリパリに干して焼くなり好きにするがいいでしょう。
ちなみに皮は包丁で引くのではなく、引っ張ってはがすのがオススメ。力はいるけどぺろりと剥けますよ。
ウツボ調理まとめ
以上、ウツボの骨を完全に採り去る方法でした。
高知の皆さんが正しい骨抜きを世に公開してくれるまでは、この捌き方を参考にしていただければいいかなと思います。まぁ力技だしもっと上手に捌ける人もいるんだとは思いますが、ネットに公開されてないんじゃどうしようもないのです。
このメソッドを叩き台に、至高の骨抜きウツボ料理に到達できた人が出れば幸いでございます。
そういえば「将太の寿司」の最後の戦いで、ハモをレントゲンで撮影して骨抜きに成功した奴がいたなぁ…たぶん高知の人も最初はそうやったんだろうな。。
コメント
はじめまして。
ウツボを検索していてこちらに辿り着きました。
実は明日、ウツボが和歌山より届くのですが、
こちらを拝見してなお私にはきれいに捌けそうもありません。
業務上過失致死罪を受け入れることにします。
追伸。
You Tubeでは捌き方がいくらかあるようですが、参考にはなりませんか?
duoさま
コメントありがとうございます。そしてお返事が遅くなって申し訳ありません。その後、無事に捌けましたでしょうか…
Youtubeのも見てみましたが、なかなか参考になるものもありそうです。判別基準は「骨切りの有無」だと思っています。「骨カタいけどうまいんだから気を付けて食え!」っていうのは不親切極まりないと思うんですよねー。
[…] また腹骨がないかわりに、ウツボ同様中骨の下がY字状に開いているので、それを切り離さないように気を付けたい。 […]
[…] これは皮を引いた後、肉の表面を埋もれている骨に沿って削いで行くと一気に取り去ることができる。 詳しくは別記事へ […]
うつぼ。自分もやってみましたが大変おいしく、素晴らしい味でした。
そのさいにはこちらのサイトの情報が非常にやくだち、感謝しております。
とくに埋没骨の部分はこちらを見ていなかったらぐちゃぐちゃになっていたことでしょう。
ありがとうございます。
お役にたてて何よりです(`・ω・´)
そういえば魚釣りのブロガーでウツボ大好きな人が居て小骨処理が面倒と圧力なべで1時間煮たら小骨が気にせず食えた、と書いてありました。
今日は、平塚市で小さなフランス料理店を経営しています
以前からウツボ料理を出したかったのですが、骨の処理の方法が判らず先送りになっていました
今年は挑戦する予定で、地元の漁師と相談し捕獲を検討、挑戦する運びになりました
このサイトを拝見し何とか先が見えてきました
有難うございます
よかったです。もしよろしければこちらのページもご参照ください。
https://www.outdoorfoodgathering.jp/fish/utsubotataki2019/