「江戸しぐさ」は知っていても「縄文クッキー」は知らないひとが多いかもしれない。
縄文クッキーとは、縄文時代に食べられていたのではないかと考えられていた食べもので、ドングリやクルミなどの堅果類を粉にし、こねて焼いたものである。
これそのものは実際に出土しており、間違いなく存在はしたと言えるのだが、問題はここに入っていたとされる食材である。
1990年代に、とある大学教授がこの縄文クッキーを「残存脂肪酸分析法」というメソッドを用いて分析した結果、イノシシやシカといった動物性食材が練り込まれていたことが分かった、と発表した。
これにより、縄文クッキーとは「肉を練り込んだまんじゅうやパンケーキ様の豪華な食材」だという認識が広がり、各地の博物館や小中学校において「体験学習」の一環でこれを作らせ、賞味させるというイベントが活発に行われた。
僕が子供時代を過ごした福岡には数多くの遺跡があるのだが、確かにそのようなイベントが行われていた記憶がある。
しかし、2000年の「旧石器ねつ造事件」に絡み、くだんの「残存脂肪酸分析法」そのものが全く科学的根拠がないということが明らかになった。
そして、縄文クッキーに肉が入っていたかどうかは全く不明となり、今のところは「トンデモ料理」なのではないかという結論が付けられている。
これについては「あったかわからないものをあったと想定して何が悪い」という主張がいくつかのウェブサイトで見受けられたが、歴史学や考古学においてそれは危険な考え方だ。
循環系数的な話だが、事実というのは事実から帰納的に導き出されなければならない。
さもなければ必ずどこかでウソが紛れ込む。
彼らは真実に成りすまして、そうと認められる日を虎視眈々と待つのだ。
厳に、体験学習を受けた児童や生徒が大人になり「縄文クッキーには肉が入ってたんだって」という“事実”を子どもたちに伝えている例が存在するし、ウェブで検索すれば「肉入りの縄文クッキーを作ってみた」というブログが多数ヒットする。
このままではやがてこれが“真実”となるだろう。
それが怖いと思えない人に、歴史を語る資格はないはずだ。
でも、味は気になるのよね
しかし一方で「縄文クッキーがあったかどうか」と「縄文クッキーなるものが美味しいのかどうか」はまた別の話でもある。
後者について語るにあたり、*付きにして注を付けたうえでやろうと思ったので、前文が非常に長くなった。
現在僕の手元には、
ドングリ(マテバシイ)
生のイノシシ肉
が揃っており、これを使えばある程度の“再現料理”を作ることが可能だ。
やっていくしかないではないか。
なお、レシピについては朝日新聞のコラム「科学的根拠に強い疑問 小・中学校で人気の縄文クッキー作り「誤り」の流布 今後に活かせ」内の記述を参考にすることにした。
(考えてみれば、朝日新聞が「偽史はNO!」という内容の記事を書いているっていうことそのものがブラックジョークである)
まずは先日のドングリ餅同様、ドングリの殻をとり、
粉に引く。
イノシシ肉は解凍し、刻み、叩いてミンチにして、
すり鉢ですり潰しながら混ぜ込む。
ここにアナグマの脂を入れて練る。
野鳥の卵……は無かったので鶏卵を入れる。
味付けは動物の血と食塩とのことだが、新鮮な血が無かったので
代わりに肉醤(肉を塩漬けにして発酵させたもの)を用いた。
発酵についてはベーキングパウダーで対応。
これをフライパンでじっくりと焼けば
完成!
食べてみよう。
……(`・~・´)
うん、なかなか美味いな。
ドングリ粉がベースなのでパサつくかと思いきや、アナグマ脂のおかげか比較的しっとりとしており、柔らかめのハンバーグくらいの食感になった。
イノシシ肉の適度な野性味がドングリの風味とあっていて、肉醤を使ったこともいい方向に転がってくれた。
ウィキペディアによると、これらの材料にプラスして、当時から栽培がおこなわれていたとされるシソを挙げていたので、追加してみた。
……さんが焼きやんけ!!
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
というわけで、味はなかなか良いものができた。
仮に縄文クッキーがトンデモ偽史料理だったとしても、「縄文時代をイメージした創作料理です (ゝω・)v-☆」って言って提供するならいいんじゃないだろうか。
その際はぜひ「肉さんが焼き alla Jomon」みたいな無害な名前を名乗っていただきたいものだ。
コメント
アクが少ないとの事なのでマテバシイ(と思われる実)を殻を取ってかじってみましたが渋かったっす。
なんだったんだろう
あ、マテバシイでも生は渋いですよ。加熱するとほぼ気にならなくなりますが。。
……。「肉入り」って追記するとなんかすごくグロ注意みたいな感じがして怖いですねw
やったね、たえちゃん!(肉入り) ポチの家(肉入り) 父からの手紙(肉入り)
しかし現物はすごく美味しそう…。野趣味あふれてても紫蘇がまとめてくれそうだし、ハァーなるほど、これは作ってみたくなるな。
マテバシイ神かよ…
おおっといきなりイエローカード! ウビスコ選手、開始5分でイエローカードを受けてしまいました!
マテバシイいいですよ……どんどん創作意欲が湧いてきますよ……
江戸しぐさも縄文クッキーもそれっぽくみえれば信じてしまうんですよねぇ。
せめて自分は科学的視点を持っていたいと思います。(水素水を飲みながら)
そうなんですよね~。それに「大学教授」だとか「研究家」だとか、それっぽい肩書の人がヘンな権威を与えてしまうからどうしようもないですよ。大事なのは、だまされないようにするためにしっかりとした見識を持つことですよね!(レメディ一気食い)