山菜の魅力の半分は香りだと思っている。
食感は野菜とそこまで違いはないし、味はむしろ野菜の方がいい(味がいいから野菜になった訳だし)。
時に強烈で、人を選ぶほどの強烈な香りこそが、食べる人に季節の歓びを感じさせる最大の要素だ。
山菜図鑑を開けば、幅を利かせているのはユリ科、キク科、ウコギ科、そしてセリ科だ。
これらの植物に共通しているのは、どれも個性的な香りを持っていること。
そしてこの中でもセリ科は、すぐにそれとわかる爽快な香りがあるので、全国的に人気が高い。
セリやミツバなど、野菜としてポピュラーなものも多く含まれる。
さわやかで食欲を増進させてくれる香りは、ことに薄味の和食との相性が抜群だ。
シシウド属のオオハナウドを採取した
しかし、セリ科植物にはハーブとして扱われるほどに香りが強いものがあり、生食(そのまま調理に使う)用としてはやや不適と言わざるを得ないものがある。
僕が過去に数度にわたり悶絶させられたシシウドもそのひとつだ。
このシシウドは北日本に多い草本で、かつてアイヌたちが塩漬けにして保存し、利用したという由緒正しい山菜である。
……が、そのあまりに強いセリ香と、そして強烈な苦みに耐え兼ねて食べきることができなかった。
その後しばらくはセリすら食べられなくなったほどで、このブログにおける最初の強敵であったといえる。
そんなシシウドとごく近縁の山菜で、やはり北日本に多いオオハナウドを、今回佐渡で見つけたので採取してきた。
成長すると1mを超える大型草本で、花火のように咲く花が美しいたもこのような名前になったという。
なお、ウドとついているがウコギ科ではなくセリ科である。
この2つの科はかたや木本主体、かたや草本主体なのだが、芽出しの時は互いによく似ており、またどちらも青くさわやかな香りを持つので似ていると言えば似ている。
現にシシウドもウドと間違えて採取してしまったのだ。
オオハナウドも本来はごくごく若い芽を採取して食用に用いるらしいが、今回はやや時期を過ぎてしまっていたので、花芽の柔らかい部分だけを採取して持ち帰ってきた。
シシウド同様に強いセリ香があり、苦みやアクがあることが推測されたので、しっかり下処理する必要がありそうだ。
オオハナウドを食べてみた
まず、たっぷりの水に塩を1つまみ入れてさっと茹で、流水に30分ほどさらしてみた。
花茎の端っこを齧ると…
…にがっ
セリ香と苦みが強くて醤油と合わない…
香りの質から言っても、シンプルな塩気とはあまり相性がよくなさそうだ。
あとはこの苦みをコーティングするために、脂も用いたほうがいいかもしれない。
というわけで…
先日のタケノコ掘りのときににゃごにゃさんが持ってきてくれた「アナグマ脂の蜂蜜味噌漬け燻製」をフライパンで炒めて、
出てきた油と絡めるようにしながら刻んだオオハナウドを炒めてみた。
…(`・~・´)
うむ、いいカンジ。
予想通り、強すぎる香りと苦みがアナグマ脂でコーティングされてまろやかになり、塩気だけでなく甘みが加わることで全体の調和が取れた。
カモ鍋におけるセリやミツバのように、セリ科山菜とジビエ肉との相性は良いのかもしれない。
味:★★★☆☆
価格:★★★☆☆
アナグマだと再現性に欠けるが、イノシシ肉あたりの脂の多いジビエでも美味しいものができると思う。
ただ、強烈なセリ香と苦みに大量の脂が合わさっているので、食べ続けてると胸焼けがしてくる。。
酒のつまみ程度に少量にとどめるのがオススメ。
コメント
食べるのはサク(エゾニュウ)ですね(岩手です)。塩蔵して1年、アク抜きして伽羅蕗風にするとうまいです。熊と競争になりますが。
なるほど塩蔵ですか…シシウドは塩蔵してもダメでしたけど、エゾニュウの苦みくらいなら何とかなりそうですね!次回はそうしてみようかな。