先日とある都市公園を歩いていると、見覚えのある木の実が落ちているのを見かけた。
表面はすべすべしていて、ちょっと油っぽいような質感だ。
これはムクロジの実に違いない。
昔実家の近くによく落ちていたものを拾っては友達とぶつけっこしたり、道路において車が引きつぶすのを見たりしていた。
なぜ投げつけていたのかと言うと、踏んづけたり車で踏まれたりして潰れると、中からネバネバした液体が出てくるので「気持ち悪いもの」という認識が僕たちの中にあったからである。
遊んで食べられるムクロジの実
しかし最近、ネットサーフィンをしていて、どうやらこのムクロジの実、というより種子は食べられるらしいということを知った。
もう一度見かけることがあったら持って帰りたいと思っていたところだったのだ。
これは良いチャンスだと思い、持ち帰ることにした。
ムクロジ自体は比較的ありふれた樹木で、街路樹やちょっとした公園などに植えられていることも多く、都心部でもよく見かけることができる。
あまりこれといった特徴のない街路樹なのだが、果実のシーズンになると大量に落下して道路を汚すので容易に見つかる。
臭わない銀杏のようなイメージだ。
トロピカルフルーツの中でも人気の高いライチと同じムクロジ科に所属し、確かに見た目は結構似ている。
タイなどで食べられるリュウガンという同科のフルーツにはよりよく似ている。
このリュウガンも街路樹として植えられ、シーズンになると路上にぼとぼと落ちて迷惑がられるらしいので、その点もよく似ている。
さてこのムクロジ、昔は食べる為というよりも、石鹸として利用されていたそうだ。
果皮をつぶして水の中で振ると泡立ち、石鹸のように利用できるということだ。
英名も「ソープベリー」というらしい。
全く関係ないが、音声入力で上の文を入力したら「今井ももソープベリーというらしい」いう風に変換された。
これはつまり、僕のあいまいな発音(屋外で入力していたので小声でぼそぼそとしゃべる形になる)をうまく聞き取れなかったスマホが「ソープ」という単語から文脈判断し「今井もも」というAV女優名をネットワークから引き出してきたということなのだろう。
この一例だけでも今の音声入力と人工知能の精度の高さを思い知らされる……
閑話休題。
食べる前に、せっかくなので「ムクロジ石鹸」を試してみることにする。
荒く砕いた果皮をペットボトルの中にいれ、水を入れて蓋をし、よく振る。
確かによく泡だった。
これをスポンジに染み込ませて、使ったばかりの包丁を軽く洗ってみる
ぬめりもとれて確かに綺麗になっているようだ。
果皮だけじゃなく果肉を使うことで、より粘り気のある泡が出るようで、こちらはシャボン玉遊びなどもできるようだ
いつか新鮮な実を拾ったらやってみたいものだ。
ムクロジの種子を食べてみた
取り出した写真は黒く黒光りしており、まるで茹でる前の黒豆にとてもよく似ている。
これをフライパンで煎るのだが、殻がとてもかたいという話を聞いたので、ちょっと長めに、15分ほど弱火で乾煎りにしてみた。
煎っても大きさや形は変わらなかったが、少し表面が煤けたようになっている。
これをペンチで割ろうとするが、固くて全く割れないので、ペーパータオルに包んでハンマーで砕く。
中身も少しくだけてしまったが、取り出すことができた。
香りは香ばしく、煎り大豆にかなり似ているように思う。
食べてみると
……(`・~・´)
これはかなり濃厚だ。
ネットで「大豆の風味にクルミの脂分を足したような味」という表現を見かけたが、まさにそのような感じだ。
個人的に煎り大豆は嫌いではないが、そのまま食べるには脂分が足りないという認識だったので、これはそういう意味ではより完璧なナッツの味わいに近づいているかもしれない。
惜しむらくは殻が固いこと、そして中身がやや小さいことだ。
品種改良をして種子が大きいものを作り出したら、ナッツとしての市場価値が出るのではないだろうか。
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
ライチの種って食べられるのかな?
ライチを食べていて種を齧ると、非常に渋くて苦くて勘弁してくれってなるけど、こんどライチを食べる機会があったら、種子も干してから煎って食べてみようと思う。
コメント
ムクロジが石鹸代わりとなるのは、サポニンという成分を含むためですが、
石鹸ということはすなわち界面活性作用があるって事で、
有機物を思いっきり分解ないし乳化していきます。
細胞膜がぶっ壊されますし、血球も潰されていきます。
まあ余程多量に摂取しない限りは人体にそれほど影響はないと思いますが。
確かに……果皮や果肉は食べるべきじゃないということですね。種子にも含まれているのかな?
初めまして、だと思いますが、いつも楽しく拝見しています。
今回のムクロジは”ライチの仲間”だそうですが、ライチの種についてこんな記事を思い出しました。
>インドの奇病、原因は果物のライチ?
http://www.afpbb.com/articles/-/3038238
【1月30日 AFP】インド北東部で子どもたちを苦しめ、時に死にも至らせている原因不明の脳疾患について、米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and Prevention、CDC)は29日、果物のライチに含まれる有害物質に関係がある可能性を指摘した。
特に種に多く含まれる成分だそうです。
この記事を読んでから、好きだったライチを食べなくなってしまいました。
ご参考までに。
60代女性です。子供の頃、実家の裏山に1本だけムクロジの木がありました。今は亡き父が、板切れで羽子板を作ってくれ、飼い鶏の羽根とムクロジの黒い実で羽根突きのシャトルもこしらえてくれたのが懐かしい思い出です。なので、ムクロジと言えば羽根突きで、実が食べられるとは知りませんでした。
先日、NHKラジオに出演されていたのを聴き、そのすぐ後に潮干狩りでオキシジミを採ったので食べ方を検索したら再び茸本様のお名前にめぐりあいました。(オキシジミは内臓の黒い泥?を取り除いてワケギと酢味噌あえにして美味しくいただきました。ありがとうございました。)
今後、ご著書やブログを拝見していきたいと思っております。(2020.2.24)