「食べられる草ハンドブック」を読んでみた!(書評記事)

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先日、自由国民社の編集者さまより「献本のご連絡」をいただきました。
献本というのは「新しい本作ったから読んでほしいんだけどいい? できれば感想も教えてね!」っていって出版社から本が送られてくることです。

自分も以前は出版社に勤めており、献本作業は何度かやりましたが、これが地味になかなか大変な作業です。正直ね、送ってもあんまり書評とか感想とかって書いてもらえないもんなんですよね。もちろんこっちの勝手で送ってるだけだし、書評書いてと強制することなんてできないんだけどさ、それでも面白かったの一言くらいよこしてくれたっていいじゃん……


まあそんなことはどうでもよいんですけど、今回はこの最近サボり気味の拙ブログにてご紹介していただけませんか? というご依頼もセットで頂きました。普通書評っていうのは業界のインフルエンサーに依頼するもの。野食界隈の端っこの方で陰キャやってる自分にこんな依頼が来るなんて光栄なことだし、こんなところでよいならぜひとお引き受けしたわけです。

まあ枕はこんくらいにしてね、早速紹介と読んでみての感想をば。

食べられる草ハンドブック

森昭彦著 自由国民社 1,540円 2020.8.2

様々なジャンルの「図鑑」が世にあふれる現代ですが、一番刊行が難しいのは「食べられるものの図鑑」ではないかと思います。これはひとえに「コンプライアンス」という横文字のせいで、「お前の本を読んで真似して食べたら腹壊した! 賠償しろ!!」といわれるとこの時代本当に厄介なんです。
自分もこれで現役時代何度も企画を弾かれました。「食べられるものの図鑑」なんて「読んで真似しろ」といってるようなもんですから、ちょっとでもリスクを怖がる出版社なら出さないという判断になるのもやむを得ません。

そんな中で「食べられる」をタイトルに冠している事自体がまず評価されるべきものと思います。これが出せるのも、過去に何冊も食用植物の著作を出されている森昭彦さんのネームバリューによるところが大きいのかなと思います。
ただそれだけではなく、冒頭部でいきなり「植物の毒とリスク」についてページを割き、安全な試食の呼びかけと注意の喚起をしています。「よく水洗い」「熱湯で茹でる」「家畜舎の近くでは採らない」など、基本的な注意をまとめているのは入門者にとってありがたいところでしょう。


続けてメインパートに移っていきましょう。
ハンドブックと銘打ってる本において、やはり求めたいのは「携帯性」と「実用性」。この2つは残念ながら背反するもので、どのあたりでバランスを採るかでその本のカラーが出ます。
本書についてはそのページ数からもやや前者重視なのかなと思いましたが、開いてみるとこれはなかなか「使いごたえ」のある本です。というのもこの本、掲載種数の割に「マニアック」なんです。
ページ数が遥かに多く、「これは『食用』というより『可食』ってだけだなぁ」みたいな植物まで載ってるような図鑑でも、イモカタバミやキランソウ(ジゴクノカマノフタ)、ツルドクダミあたりが掲載種となることはまずありません。そのような種が本書にはいくつも載っています。

どこにでもある外来雑草「イモカタバミ」は貴重な「野の炭水化物」
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もちろんマニアックなものだけではなく、セリやタンポポ、スベリヒユのような身近にあり美味しい野草もちゃんと網羅されています。実は本書は章立てがすべて「〇〇(季節)の道端」となっていて、掲載種を「身近な野草」だけにとどめているので、マニアックなものまで網羅することができているのだと思います。
まあ実際、特に初学者にとっては山野の食草(いわゆる山菜と呼ばれるもの)は見つけることから判別、調理に至るまで非常に難しく、まず手を出すことはできないものです。タラの芽やウド、コゴミなどは加えて競争も激しく、よほどの山中に住んでいない限りは簡単に手に入りません。

なので「都会に住んでいて、まだ知識はないけど野草を採って食べてみたい」という人は、とりあえず本書に掲載されている種から始めていき、より興味が出てきたら本格的な図鑑(できればハンドブックではないもの)を手にするのが良い流れではないかと思います。もちろん上記の通りマニアックな種もいっぱい載っているので、逆にガッツリな図鑑で勉強してきた野草知識つよつよな皆さんも「へぇーこれも食べられるんだ」と楽しめるのではないかと思います。


あ、褒めてばかりだとなんかわざとらしいかもしれないので、ちょっとご意見も。

これはサイズの関係上難しい部分だったかと思いますが、「判別にあたり重要なポイント」と「可食部位」はそれぞれ最低1枚ずつ写真を載せてもらえるとありがたかったですね。載っている種とそうでない種があるんですけど、できるだけどっちも載ってるとよりありがたいかな……まあ、判別ポイントで同定した上で、説明文中に記載されている「可食部位」を採取すればよいだけなんですけどね。

あと「シソ」の写真はあまり典型的なものではないです。これはかなりエゴマやレモンエゴマ寄りですね。この仲間と、近縁ではないですがイラクサ科の葉は互いに似ているものが多いので、採取の際は「香りのチェック」も一緒に行うようにしてください。


まあそんなこんなで、個人的にはなかなか楽しめる本だなと思いました。とりあえずこの本を持って近所の河川敷にでも向かい、採取して、不安なら種名ググって他の写真も見比べてから調理するのはよいと思いますね! ちなみに食べ方もちゃんと載っているのでありがたいです。
ご献本いただきありがとうございました。

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野食ハンマープライス

コメント

  1. れお より:

    この本買います、、、!

  2. 通りすがり より:

     「食べられる」と題することにそんな難しさがあったとは……驚き半分、実にあり得そうなクレームの例えに苦笑い半分でした。
     最後のシソとイラクサのくだりで、学生時代、山で野生化した青シソ(…)があったので葉を摘んで香りを嗅ごうとした途端、鼻にプスッ!ときたことを思い出して鼻を擦ってしまいました 笑
     隣に野生化した赤シソが生えており、非常に殺意の高いトラップだったな、と今でもよく思い出します 笑

     動画の方も拝見しております! お身体にお気をつけてお過ごしください。応援しております。

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