ヒカゲウラベニタケとフェニックスの実で野食のリスクを再確認した件:野食ハンマープライス的 自然毒のリスクプロファイル⑥

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予告通り、野食会2016秋のお申し込み受け付けを今晩19時から開始いたします。


今回、未成年の方からの参加希望を何件か頂き、スタッフ間でも話し合いがあったのですが、最終的にはお断りさせていただくことになりました。

理由の一つとして「バーで、アルコール飲み放題での開催」ということが当然あります。
ただそれ以上に大事だと思われるのが
「ある食材を食べる・食べないの判断は参加者自身にゆだねられる」
という“野食の原則”です。


これは決して「提供側が責任を放棄する」と言うことではなく、主催者側として利用する食材のリスクの審査と判定、あるいは調理時の安全性の確保や提供時の注意などは確実にやっていきます。(そのため今回からは厨房の無断使用は厳禁です、必ず茸本に許可をとって下さい)

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そのうえで、例えばアレルギーの有無や放射性物質に対する考え方など、各個人によって判断が変わってくる部分というのはどうしても存在します。
この点を認識いただき、提供された食材を食べる・食べないという点について責任を持っていただくにあたって、どうしても未成年の方では責任の所在が変わってくる部分があります。

そのため、当会では当面の間、未成年の方の参加をお断りさせていただきます。


今回参加できなかった皆様が、条件を満たして参加できるようになったとき、まだこの会が開催できていることを目指しています。
どうか皆様ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

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どんなに気を付けてても、冒険している限りアタる日は来るのさ

とまあこんなことを言った後で恐縮なのだが、自己責任で野食をしていてもやらかすことはある。
それはたいがい未知の食材にトライしたときにおこる。


先日、天草の国道沿いで、歩道に大量の果実が落下しているのを見つけた。
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見上げてみると、九州ではおなじみの街路樹フェニックス
どうやらこれはフェニックスの果実のようだ。
一帯には、とろけるような甘ったるさのトロピカルな匂いが漂っている。


小学生のころ、糸島方面に釣りに行く途中に立ち寄った今宿駅(当時は筑肥線+昭和バスで釣り場まで通っていたのだ)の駅前広場にも、時期になるとこの実が大量に落ちていた。
その頃はヘンなものを食べようとすると両親に怒られていたので、口にすることはできなかったが、そのことを今に至るまで覚えているということは、当時非常に悔しかったのだろう。
20年越しで願いがかなったのはありがたい。


調べたところ、フェニックスと呼ばれるヤシにはいくつかの種類があり、その一種であるヤタイヤシとカナリーヤシが日本でも実をつけるのだそうだ。
ヤタイヤシの実は近縁のナツメヤシ同様、甘く熟し美味しく食べることができるらしいのだが、カナリーヤシは渋くて食べられないようだ。
2種の区別方法を探してみたが見つからなかったので、とりあえず持ち帰って試食してみることにした。


また別の日、今度はキノコ狩りの際に見たことないキノコを見つけた。
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かさの表面はのっぺりとしてニンギョウタケモドキ科のような印象を与えるが、裏側を見るとひだが強く垂生している。
これまでに見たことも採取したこともないキノコだったが、偶然2日前に、ヤマケイ図鑑で確認したばかりだったのですぐにわかった。
これはヒカゲウラベニタケだろう。

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ヤマケイ図鑑によると「欧米ではとても人気のキノコだが、日本ではまず利用されないキノコ」とのこと。
面白い、ブログネタにちょうどいいじゃない。
採取し、持ち帰ってみることにした。


——————–
そして先週末、試食してみることにした。

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まずはフェニックスの実を食べてみる。

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半分に割ると、やや繊維質で極めてジューシーな果肉が裂け、ウメのような種子が現れた。
台所中がトロピカルな香りで包まれる。

その香りに引き込まれるように、思い切りかぶりついてみると

∑(×Ⅹ×)
すっぺええええええ!!!

この甘い香りからこの酸味、サギだろそれ……!!
念のためいくつかの果実を齧ってみたが、どれも梅干しレベルの強烈な酸味を感じた。


これはつまり、ヤタイヤシではなくカナリーヤシだったということなのだろうか。
しかし、カナリーヤシの特徴とされる渋みは一切なく、酸味が強烈過ぎて本来あるはずの甘味が隠れてしまっているような印象を感じさせた。
なんなんだろう、よく分からない。

味:★☆☆☆☆
価格:☆☆☆☆☆



口をよーくゆすぎ、今度はキノコの試食へ。

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石突きをとり水洗いしたヒカゲウラベニガサを、洋風にバターでじっくりとソテーしてみた。
生の時はとても脆いキノコだが、火を通すと少し弾力が出るようだ。

いただきマース
……(´・~・`)
香りだけはものすごくいいんだけど、食感は頼りないし、後味が苦いし、そして粉臭さのような臭いが強い。
イッポンシメジ科の食用キノコはどれも粉臭いカンジはあるが、それを補て余りある食感の良さが魅力だ。
それが感じられないのであれば、食べる価値が見いだせない。

味:★☆☆☆☆
価格:☆☆☆☆☆

どちらも残念な結果に終わり、ブログ記事にしようと思ってたのにどうしようかな…… と思っていると、にわかに胸焼けが。
僕は胃炎の持病があり、ここ数日の無茶なアウトドア活動(10日で30時間睡眠くらい)もあって久々に症状が出てしまったのかと思ったが、翌早朝に強烈な便意で目覚めると、便なんだか水なんだかわからないものがものすごい大量に出た。

以降本日に至るまで酷い下痢が続き、コンビニおでんの餅巾着くらいしか食べられるものが無く(おかゆ作るのもめんどい)疲弊した日々が続いている。

最近ダニに刺されまくっているからそれが原因か? とか、また睡眠不足すぎて外因性の腸炎にかかってしまったのか? などといろいろな可能性を考えたが、発熱や吐き気などは無くひたすらお腹だけを下していること、また発症したのが体力が底だったタイミングではなかったことなどから、やはり何らかの中毒ではないかと考えられた。
そうなると、上記2点のほかにはとりたてて怪しいものは食べていない以上、どちらかが原因であると考えざるを得ない。


ネットでしか「食べられる」という記述を見かけていないフェニックス(ヤタイヤシ)はまだしも、図鑑に可食だと描かれているヒカゲウラベニガサで中毒するようなことがありうるのかはわからないが、毒を持つものが多いイッポンシメジ科のキノコであることを考えればさもありなんという気もする。

「食べられない」ことが大前提と思うべし

そもそも、これだけ食い意地が発達している日本で、そこまで珍しいわけではないのに食されてこなかったということはそれなりの理由があるはずなのだ。
たいていの場合は「1つ1つが小さい」「まとまって手に入らない」などがその理由なのだが、「人によっては中毒する」ということもそのひとつだったかもしれない。


最近キノコ狩りのガイドや採取したキノコの鑑定のアドバイスをすることが増えてきたが、とくに初心者に

「これ不食ってなってるけど、茹でこぼしたりしたら美味しく食べられないだろうか」
とか
「こちらの(食)キノコの方が見た目似ているから、食べられるんじゃないか」
はたまた
「とてもいい香りがするので食べてみてもいいか」
といった乱暴な発言が散見される。

僕は自分が食べるものの可食・不食判断基準はガバガバだが、鑑定を求められたときは「それもダメ、これもダメ。全部ダメ。失格。全部ボッシュート」と大変厳しく判定することで厄介がられている。
でも、ひとりは面倒くさい存在がいないと、どこかのタイミングで僕が経験したような事故が起こる可能性が高いのだ。


野食はアブナイ行為である旨、改めてしかと心に刻んでおいていただきたい。
そのうえで「やっぱり野外の食材を食べてみたいなぁ」と思ったあなたは、ねこ文壇バーで僕と握手!

お申し込みは今晩19時からとなります。
心よりお待ちしております。

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毒・食中毒
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野食ハンマープライス

コメント

  1. ayo より:

    う、、わあ。
    では私が青海島で拾って食べたそっくりな実は、運良くヤタイヤシだったということですかね…。パッションフルーツと枇杷と混ぜたような、お金を出してでも食べたい!と思う甘くて美味しい味でした。

  2. ほうずき より:

    初めまして、こんにちは。
    毎回ブログ更新楽しみにしております。

    1ヶ月に1回、夫と二人で近場の低山に登ります。
    体力作りの為なので、毎回毎回ザクザクとタイム短縮を目標に一生懸命登っていました。
    今月は先週の土曜日に行ったのですが、夏バテでいまいち元気が出ず、ゆっくり登ろうかといつもの半分の歩幅で、のんびりと歩き始めました。

    すぐに夫がキノコを見つけました。
    赤い帽子に白いオムツをはいたアイツです。
    初めて見ました。
    野食ハンマープライス読者の私は、初めて見たにもかかわらず「これ、タマゴタケって言うんだよ!」と知ったかぶりを発揮しました。
    夫「へー!」
    私「美味しいらしいよ!」

    ・・らしいよ、と言えばとりあえずオッケーです。

    それからもうキノコラッシュです。
    あっちにも、こっちにもいろんな種類のキノコが鎮座しており、いままで何度も登った山なのに、わたしは一体どこを見て登っていたんだろうと・・不思議な気持になりました。

    山頂でおにぎりをほおばりながら、持参のキノコ図鑑(図鑑好きでたまたま持って来ていた)をめくりつつ、野食ハンマープライスを思いだしながら、これが・・これで、あの記事のキノコがこれかー!

    夫婦でキノコにハマった瞬間でした。

    下山中、やっぱりキノコを眺めていると、足音がしないのでふと私達二人の気配が消えたのでしょう。
    目の前を一匹の野生のリスが、食料を咥えて横切って行きました。
    野生のリスを初めて見ました。

    感動の一日でした。

    ちなみにキノコを食すのはイメージトレーニング中で、エア食いのみです。
    だって・・まだまだこわいもんね!
    この先、もっと沢山のキノコと出会い、いつかおまえらを食っちゃる!と目標をたてています。まぁのんびりですが。

    いつもたのしく興味深い記事をありがとうございます。

  3. からす より:

    いつも楽しく拝見しております。
    先週、タマゴタケでキノコ狩りデビューしました。
    他のキノコとの見分け方は調べたから大丈夫…と思いつつも、拭えぬ不安感……これが大事なのですね。
    無事生存した喜びを伝えるべく、コメントしました。

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