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cakesにて茸本朗の連載
「野食ハンターの七転八倒日記」
が始まりました!
野食失敗体験を中心に、ブログとはちょっと違った切り口の記事を公開していく予定です。
合わせてお楽しみいただけると嬉しいです。
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「僕は君を太らせたい」
昨日の干潟寿司に使った海苔ですが、先日浜名湖にロケハンに行ったときに購入したもので、「ぶち海苔」と呼ばれているものです。
一見すると普通の板海苔に見えますが、実はそうじゃないんですよ。
ぶち海苔との出会いは、浜松についた日の夜のことでした。
「遠州来るの初めてだし、それっぽいもの食べたい」と思い、それっぽい居酒屋に入ってみたところ、気になるメニューが。
「海苔の手巻き飯……ようはおにぎりってことかいな?」
そう思い注文してみたところ、出てきたのはざっくりと海苔の巻かれたご飯。
驚きつつもほおばってみたところ、あまりの香りの高さに思わず声が出てしまいました。
これは……ただの海苔巻きおにぎりじゃない!
ぶち海苔は「青黒ミックス」
気になって調べてみると、ぶち海苔とは「青海苔と黒海苔(たぶんスサビノリとかアサクサノリとか)を合わせて作った板海苔」のことで、浜名湖周辺の特産物とのこと。
確かに、ほかの地域ではこれらそれぞれは利用するものの、合わせて使うという例は聞いたことがありません。
浜名湖は1498年の地震によって太平洋とつながり汽水湖となったのですが、そのころから湖内に青海苔(ヒトエグサ、アオサなど)が生育するようになり、沿岸住民によって利用されるようになりました。
その後、江戸方面から黒海苔の養殖技術が伝わり、養殖がおこなわれるようになると、黒海苔も普通に利用されるようになります。
その後なぜぶち海苔が誕生したかは調べても分かりませんでしたが、おそらくはじめは「勝手に混ざっちゃった」んじゃないでしょうか。
というのも、海苔の養殖において青海苔(アオサ類)は基本的には邪魔者で、アオサが混ざってしまった海苔は「青が飛んだ」と言って不良品や2級品として扱われてしまうことが多いのです。
ぶち海苔という言葉も「青海苔がぶち模様に混ざり込んでる」ことから来たんじゃないでしょうか。
で、普通なら失敗作ともいえるこのぶち海苔、もったいないから食べてみたら「あれ、香り高くて旨いんじゃね?」となり、名産品となった、みたいな……
どうかしらね? 違ったらすみません。
浜名湖周辺の道の駅や鮮魚店ではどこでも売られていました。
価格もピンキリでありがたし。
海苔バタートーストにぶち海苔は最適
このぶち海苔、先ほどより申し上げている通り、ともかく香りが強い。
どれくらい香るかというと、湿気ないようにきっちりパックされた状態で車内に置いていたのに、車内に海苔香が充満して気分が悪くなってしまうくらい。
さっとあぶったりすれば、台所中が磯の香りで満たされます。
黒海苔と青海苔では、味そのものはやはり前者の方が美味しいと思うのですが、香りは青の方がよく立ちます。(だからタコ焼きに振るわけで)
このふたつのハイブリッドというのは、考えてみれば実によくできたものと言えるかもしれません。
で、これだけ香りが強ければ、ご飯以外にも合わせやすくなります。
例えばシンプルに、バターを塗りまくったトーストに乗せるなど。
ぶち海苔は必ずあぶってから乗せましょう(焼き海苔ではないので)
バターと磯の香りって合うよねぇ……!
今回はぶち海苔の2級品も買ったのですが、こちらは「小エビ交じり」ということで、もはや「粉もんトッピング用」といった趣すらあります。
いいねこういうの。工業製みたいな海苔よりもずっと好感が持てますよ。
味:★★★★☆
価格:★★★☆☆
コメント
いつも楽しみにご拝見しております。
今回のぶち海苔ですが、他県・他産地では「青混ぜ海苔」等の名称で流通しており、東京湾の産地である千葉県木更津等ではここ最近積極的に販売しているの板海苔です。
香りがよいため、近年では純粋な黒海苔よりも好まれるみたいですね。
これってひょっとして青混ぜ海苔のことかな?
浜松まで行かなくても船橋の市場で買えますので、お立ち寄りの際にはぜひ!